脳には脂肪を燃やすスイッチがある

脂肪細胞にはいわゆる皮下脂肪などの白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞があります。これら2つの脂肪細胞は全く違う働きをしています。白色脂肪細胞は細胞内に栄養を脂肪としてため込みますが、褐色脂肪細胞は脂肪を分解して、熱を産生することで体温の調節をしています。褐色脂肪細胞にはミトコンドリアが非常に豊富で、褐色に見えるようです。

以前は褐色脂肪細胞は乳児期には豊富に存在して、成長するにつれ段々と減少すると考えられていましたが、今では成人であっても肩甲骨周囲や脊椎周囲に限局して存在していることが明らかになっています。

私の知識不足で、これまで褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞と全くの別物だと思っていました。同じ脂肪細胞という名前だけれど、全くの無関係な存在だと思っていました。つまり「山田さん」といってもすべての「山田さん」が家族や親せきではありません。赤の他人の「山田さん」はいっぱいいます。それと同じように脂肪細胞も親戚関係ではないと思っていました。それは、最初に書いたように機能として全く逆だからです。

しかし、新しい研究ではその全く違う脂肪細胞は、脳の「スイッチ」により切り替わるということがわかりました。つまり、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞になったり、褐色脂肪細胞が白色脂肪細胞になったりするというのです。これは私としては驚きです。食事をするとスイッチが切り替わるのです。

食事の後に血液のグルコースが上昇すると増加するインスリンに脳が応答し、脳はエネルギーを消費するために脂肪に「白色から褐色への変化」を促進するための信号を送るのです。それとは逆に、空腹時の脳は、これらの褐色になった脂肪細胞を白食脂肪細胞にもう一度変換し、エネルギーを貯蔵するよう指示するのです。このような仕組みにより、摂食と絶食に応答して過剰な体重増加や過剰な体重減少を防ぐのに役に立ち、体重は時間の経過とともに比較的安定しているのです。

しかし、肥満はこのメカニズムがうまく働いていない可能性があります。つまり、肥満はずっとスイッチが切り替わったままで、食事をしても「白色から褐色への変化」が起こらない可能性があるのです。そうすると、褐色脂肪細胞は常に消えた状態で、エネルギーの消費は常に減少してたままです。食事をしても、エネルギーの摂取量に応じたエネルギー消費の増加を認めず、体重の増加が促進されてしまうのです。

恐らく、インスリン抵抗性がこのことを意味している一つなんだと思います。

いずれにしても人間の体は非常に面白く、まだまだ分からないことだらけです。

「A Hypothalamic Phosphatase Switch Coordinates Energy Expenditure with Feeding」

「視床下部のホスファターゼスイッチが摂食に伴うエネルギー消費を調整する」

(原文はここ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする