薬ってそんなに必要ですか?理解して飲んでいますか?

日々診療を行っていて、いつも疑問に思うことがあります。それは高齢者の患者さんで本人やその家族の方が、何のために薬を飲んでいるのかわからない方が非常に多いことです。

こちらが患者さんの飲んでいる薬に疑問に思って、それについて尋ねてもわからないことが実に多いのです。よくあるのが胃薬関係です。何種類も飲んでいたり、症状は特にないのに飲んでいたりします。恐らくは痛み止めなど何か胃を悪くするような薬と一緒に出されたまま、胃薬だけ残ってしまったり、他の病院でもルーチン処方で何かの薬と胃薬が組み合わされていて、重複して出されてしまったのではないかと思います。しかし、患者さんは必要な薬だと思って飲んでいます。

また、ときどきあるのが血圧が低いのに、血圧を下げる薬を何種類も飲んでいることです。90歳過ぎの高齢者が、血圧100mmHg前後なのに、なぜ血圧を下げる薬が複数必要なのでしょうか?家族が頼んでようやく減らしてもらったと聞くこともありますし、本人も家族もそれが良い状態だと思っている人もいます。

食事がままならなくなった高齢者に、利尿薬も必要なのでしょうか?食事が少なくなれば、食べ物から摂取する水分も減りますし、水分もあまり摂らないような高齢者であれば、利尿薬は非常に危険性があるように思えてなりません。もちろん本人も家族も、医学的なことはわかりません。あまりにも漫然と処方がされていますし、あまりにも漫然と薬をもらいすぎです。

何種類もの薬を飲まなくてはならず、薬だけでお腹いっぱいです。

患者さんもその家族も何を求めて薬を飲んでいるのでしょうか?寿命が延びる?健康?

90歳を過ぎた高齢者の血圧を100程度に低下させて、寿命が延びる証拠はありますか?それが健康的だと言えますか?私はむしろ90歳過ぎたら150程度は全く問題ないと思っていますし、逆に120では低すぎだと思っています。年齢とともに動脈硬化は自然と進みます。ちょっとずつ高くなることは自然です。逆にそれぐらいの血圧がないと十分な血液を運べません。

また、最も気になって仕方がないのはスタチンです。以前の記事でもスタチンは高齢者には不要どころか害になると書きました。またアイルランドのSultan教授の言葉では、

「スタチンは、62歳を超える患者、女性およびすべての子供に禁忌である。」

と言っています。

スタチンを飲むと実際にはどれぐらいの効果を期待できるのでしょう。これまでの記事ではNNT(NNTは治療必要数とも言われているもので、ある症状や疾患を呈する患者を1人減らすために、何人の患者の治療を必要とするかを表したもの)を使って表してきましたが、予防的にスタチンを飲んでも命が助かる証拠はありません。心臓発作や脳卒中の発症が60人~200人に1人程度予防できるだけです。

実際の寿命を長くする効果はどれぐらいあるのかを計算した研究があります。机上での計算なので、空論であるかもしれませんが、データを分析してスタチンの寿命延長効果を調べました。

心血管疾患で死亡することに対する一次予防(まだ症状がない人の予防)、二次予防(すでに心血管疾患を発症している人の予防)のそれぞれの寿命延長効果は、中央値はそれぞれ3.2日および4.1日です。私の解釈が正しければ、フォローアップの期間は2年から6.1年であり、一次予防だけを見ると約5年なので、5年間スタチンを飲み続けてやっと3~4日寿命が延長するということです。30年飲めば、18~24日寿命が延びます。

つまり、30年スタチンを飲んでも、1か月も余分に生きられないのです。60歳や70歳を超えた人が飲むような薬でしょうか?薬を飲むのではなく、食事を変えて糖質制限にすべきです。そして、できる限り運動をするべきです。その方が健康的に寿命が延長できると思います。食事を改善すれば必要な薬はそんなに多くないはずです。

高齢になったら、最低限の薬にするべきでしょう。スタチンのような意味のない予防薬はやめましょう。副作用の方が心配です。

大事な自分の体のことは自分で考え、自分で決めましょう。高齢で決められない場合は、大事な家族の体です。ちゃんと知識を持ち、考えてあげてください。

 

「The effect of statins on average survival in randomised trials, an analysis of end point postponement」

「ランダム化試験における平均生存率に対するスタチンの効果、エンドポイント延期の分析」(原文はここ

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