ビタミンやミネラルのサプリメントは心血管疾患のリスクを低下させない?

以前の記事「フリースタイルリブレを使った人体実験 その24 ビタミンCサプリメントの影響」で、今回血液のデータを送っていただいた方の実に64%以上の方が、何らかのサプリを飲んでいることがわかりました。サプリメント大国のアメリカでは、あるデータによると52%がサプリメントを摂取していると推定され、マルチビタミンは31%、ビタミンDは19%、カルシウムは14%、ビタミンCは12%ということでした。ヨーロッパでは、国によって大きく異なるようです。デンマークでは男性の51%、女性の65.8%がサプリを摂取し、ギリシャでは男性の2.0%女性の6.7%がサプリメントを摂取しているというデータがあります。

様々なサプリを使用する理由はあると思いますが、最終的な目標は健康だと思います。サプリを使うことにより、心血管疾患や全原因死亡率にどのような影響があるのでしょうか?今回の研究は様々な研究を分析したものです。

その結果は下の図のようです。(図は原文より)

図のAは心血管疾患の発生率を表しています。左からマルチビタミン、ビタミンD、カルシウム、ビタミンCです。カルシウムが物凄く発生率が高いように見えますが、統計的に有意差はありません。しかし、カルシウムのサプリメントがいくつもの研究で心血管疾患のリスク増加との関連を指摘されているのは事実です。その他のマルチビタミンもビタミンDもビタミンCも心血管疾患の発生率を低下させることはできませんでした。

Bの図は全原因死亡率です。同様に左からマルチビタミン、ビタミンD、カルシウム、ビタミンCですが、どれも関連が認められませんでした。

Cは心血管疾患の発生率ですが、左から葉酸と脳卒中、葉酸と全ての心血管疾患、ビタミンB群と脳卒中の関連を示しています。葉酸とビタミンB群はどちらも脳卒中の発症を低下させました。葉酸はさらに全ての心血管疾患も低下させました。しかし、Cの図のそれぞれのバーの下を見てみるとNNTというものが書いてあります。これは以前の記事「心血管疾患のリスクの低い人にスタチンを投与する意味はない?」などでも取り上げたものです。(NNTは治療必要数とも言われているもので、ある症状や疾患を呈する患者を1人減らすために、何人の患者の治療を必要とするかを表したものです。100人治療して1人やっと症状が抑えられたとするとNNTは100です。)

葉酸と脳卒中のNNTは167、葉酸と全ての心血管疾患のNNTは111、ビタミンB群と脳卒中のNNTは250と、どれもスタチン並みの低さです。これらのサプリを摂取したとしてもその恩恵を被ることができるのは111~250人に1人だということです。

Dの図は全原因死亡率ですが、左から抗酸化物質(ビタミンA、C、E、β-カロチン、セレン、亜鉛の内、2つ以上の組み合わせ)、ナイアシンです。ただしこのナイアシンは単独ではなく、スタチンを使用している人です。どちらも統計的には有意差が認められました。しかも死亡率を増加させるというものです。抗酸化物質に関しては以前の記事「ビタミンのサプリメントは本当に有益か?抗酸化物質の暗黒面その2(人間の場合)」でも書きました。

ナイアシンはスタチンとの併用で死亡率が増加しています。ナイアシンはHDLコレステロール値を増加させるようですが、それが質の良いHDLかどうかはわかりません。

ただ、今回の研究での死亡率の増加はNNH(NNTと同様に、1人の人に害を及ぼすのに、何人の人に治療をしなければならないかという数です。)は、抗酸化物質で250、ナイアシンで200なので、全く気にするレベルではありません。

これらの研究でのサプリの使用量はほとんどが通常量です。つまり、非常に高容量を摂取するメガビタミンではありません。メガビタミンがどのような影響があるかは私にはわかりません。しかし、抗酸化物質の暗黒面は無視できないと思います。

人間の進化の中で、大量のビタミンやミネラルを単独で摂取する時代は現代を除いて、一度もありません。そのような大量の物質に人間の体が適応しているのかどうかはわかりません。

 

「Supplemental Vitamins and Minerals for CVD Prevention and Treatment」

「心血管疾患予防および治療のためのビタミンおよびミネラルのサプリメント」(原文はここ

4 thoughts on “ビタミンやミネラルのサプリメントは心血管疾患のリスクを低下させない?

  1. 私もそうですが、ビタミン、ミネラルの摂取に心疾患や脳血管疾患のリスク低下まで期待している方はそういないと思いますよ。 現代の日本人は飽食に見えて、かなりの割合で栄養不良やビタミン、ミネラル不足が原因で、病気まで至らなくても各種の軽い慢性疾患、不定愁訴を抱えているようにみえます。 若い人にB1不足由来の隠れ脚気が増えているなどその顕著な例だと思います。 なので、ほとんどの人はマルチビタミンくらいは摂取するのは、とてもいい選択だと思います。 明らかな副作用も報告されていませんね。 日本や米国で半数近い国民が摂取しているのですから、副作用があれば、早々に報告されているでしょう。

    先生のアンチビタミンがどこから来るのか?ですがいろいろ読んでも今一納得出来ません。 前にも書きましたが私自身は15年以上、糖質制限+ビタミン、ミネラルできました。 現在まったく健康で、かつ同世代より明らかな老化の遅れを実感しているので、これを止める理由にはなりそうもありませんね。

    先生は藤川先生のメガビタミンによる各種治療例については、どうお考えなのでしょう。 信用できませんか。

    1. 福岡利夫さん、コメントありがとうございます。

      おっしゃるように、「病気まで至らなくても各種の軽い慢性疾患、不定愁訴を抱えている」ようにみえます。
      その原因は「栄養不良やビタミン、ミネラル不足」ですか?なぜ「栄養不良やビタミン、ミネラル不足」が発生しているのですか?

      単に、健康に対する考え方の違いだと思います。
      ビタミンやミネラルが不足していたり、その時の体調の変化により、一時的にサプリを使うことは良いことだとは思います。
      私も今回、一時的にビタミンCサプリを摂っていました。(機会があれば記事にしますが)

      ビタミンやミネラルは必須のものですが、そんなにたくさん必要ですか?
      「治療のため」にビタミンCを大量に点滴するのは、私も効果を期待しますが、
      毎日毎日大量のサプリを飲まないと健康だと思えない状態は、健康ですか?
      メガビタミンは科学的でしょうか?

      単純に考え方の違いです。

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