LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その8 プラークの中にカイロミクロン

以前の記事「LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その6」では、実際の大動脈から得られたプラークを分析すると、そこには平均してVLDL+IDLが3分の1以上を占める、ということを書きました。ところが、さらに調べてみると、カイロミクロンさえプラークから見つかっているのです。

それぞれの大きさは、

カイロミクロン 粒子径80~1000nm、VLDL 粒子径30~80nm、IDL 粒子径25~30nm、LDL 粒子径18~25nm、HDL 粒子径7.5~10nm です。

カイロミクロンはLDLよりもかなり大きく最低でも4倍、最高で20倍もの大きさです。そんなものがアテローム性動脈硬化症のプラークから見つかっているのです。私は勉強不足で、これまで、まさかカイロミクロンは大きすぎてプラークには見つからないだろうと思っていました。やはり小さなLDLが犯人だと洗脳されてきた影響だと思います。

以前の記事で「恐らくどんなリポタンパクも、もしかしたらカイロミクロンでさえ容易に動脈壁には侵入が認められる可能性すらあります。」と自分で書いています。自分で書きながら、まさか、と思っていたのです。

ところが、ある研究によると、apoB-48タンパク質の量はapoB-100タンパク質の量と同程度だということです。apoB-48はカイロミクロンのアポリポタンパク質です。apoB-100はVLDLやLDLなどのアポリポタンパク質です。ということは、カイロミクロンやカイロミクロンのレムナントも他のレムナントと同じようにアテローム動脈硬化症に寄与しているのです。

カイロミクロンやそのレムナントがプラークが見つかっているので、どうしてそのような大きな粒子が動脈の壁を越えて内膜に到達するか様々な仮説を考えている研究もあります。しかし、私がこれまで書いてきたように、血管の内腔から侵入するのではなく、外膜からの新生血管を通って、内膜の深層に侵入するという仮説で考えれば、難なくカイロミクロンは内膜の中に到達できるはずなのです。

これまでは、

LDLコレステロール→sdLDL増加→小さいので血管壁を通過しやすくなる→マクロファージに取込まれる→泡沫細胞が増加→プラーク発生

というように考えられてきました。しかし、VLDLやIDLだけでなく、カイロミクロンでさえプラークから見つかるのであれば、上のような考え方は無理があると思います。外膜の新生血管からリポタンパクが侵入するのであれば、LDLが多いか少ないかは関係しないだけではなく、sdLDLの量さえ関係ないかもしれません。無理やり血管の壁を通り抜けるメカニズムを考える必要もなく、非常に単純な仕組みとして考えられるのです。

ただ、アテローム性動脈硬化症のできやすい状態ではsdLDLの量は増加するので、関連はあると思います。しかし、アテロームに含まれるコレステロールの運び屋のリポタンパクの大きさは実は関係がないということになります。LDLだけが悪いのでもないのです。だからいくらLDLを低下させても心血管疾患を起こす人がいると考えると矛盾はないです。

カイロミクロンは割合としては少なくても、その大きさにより非常にその中に含まれる脂質成分は多いのです。だから1個のカイロミクロンはLDLの何個分にもなります。非常に影響があるのではないでしょうか?

 

「Identification of lipoproteins of intestinal origin in human atherosclerotic plaque」

「ヒトアテローム硬化性プラークにおける腸起源のリポタンパク質の同定」(原文はここ

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