寝る直前に食べることはがんのリスクが高くなるかもしれない

健康のためには寝る時間の何時間前以降は食べない方が良いと言われています。そのほとんどの理由が体重の増加だと思いますが、それの真偽は今回はさておき、それ以外で寝る直前の食事があなたに何か悪さをするのでしょうか?

この研究の対象者は、乳がん患者は1205人、前立腺がん患者は621人、女性の対照群は1321人、男性の対照群は872人でした。

まずは、それぞれの1日に摂る食事割合と、1日の食事回数(おやつ、軽食を含む)です。(表は原文より改変、図は原文より)

乳がんの対照
乳がん患者
前立腺がんの対照
前立腺がん患者
1日に摂る食事の割合(%)
朝食96.695.694.993.4
昼食989897.297.9
午後のおやつ26.127.110.411.3
夕食95.896.696.697.1
夜食9.57.35.25.8
1日の食事回数(%)
2回以下2.62.24.73.5
3回34.532.858.259.1
4回4243.229.630.4
5回以上20.921.87.56.9

ほとんどの人は朝昼夕の3食の食事をしっかり摂っているようです。そして、女性の方が午後のおやつや夜の夜食を摂る割合が多いことがわかります。特に午後のおやつは女性では4人に1人以上になっています。

1日の食事回数で見てみると、男性では3回が最も多く4回以上の人は3分の1強です。しかし、女性は3回で終わる人が3分の1で、残りの3分の2近くは4回以上何かを食べているのです。面白いですね。

乳がんと前立腺がんのリスクにおける夕食と睡眠の間隔の関連
乳がんの対照(%)乳がん患者(%)OR前立腺がん対照(%)前立腺がん患者(%)OR乳癌と前立腺癌を合わせたOR
夕食と睡眠の間隔
1時間以内(ref)18.619.836.442.4
1時間以上2時間以下39.241.60.9938.436.10.790.89
2時間以上42.238.60.8425.121.50.740.80
夕食の時間
午後10時以降(ref)20.423.030.233.4
9:00〜10:0056.554.50.8655.253.90.880.86
午後9時前23.222.40.8514.612.60.750.82
夕食時間と夕食と睡眠の間隔の組み合わせ
遅い夕食/短時間8.49.216.920.3
その中間75.577.00.9475.873.20.790.86
早めの夕食/長時間16.113.80.777.36.50.740.76

上の表に示すように、がんリスクは、夕食と睡眠の間隔の時間の増加とともに減少しました。夕食を食べてすぐ(1時間以内)に就寝する人と比較して、2時間以上間隔があく場合には乳がんと前立腺がん合わせて、リスクが20%減少しました。男性(前立腺がん)の方がその減少率は大きくなりました。

有意差までは出ませんが、夜の10時以降に夕食を食べる人と比べると、9時前に食べる人の方ががんのリスクの減少傾向が認められました。

さらに、これも有意差は認めませんでしたが、夕食のタイミングと、夕食と睡眠の間隔の組み合わせで、遅い夕食と夕食後すぐに寝る人と比較して、早めの食事と寝るまでの間隔が長い方ががんのリスクが減少傾向にありました。

上の図は左が乳がん、右が前立腺がんにおける夕食と睡眠の間隔の時間に対する影響の推定値です。横軸が夕食と睡眠の間隔の時間を表しています。そうすると、間隔が長くなるほど、リスクが低下していると推測できます。

狩猟採集時代では太陽が昇れば起床し、活動を開始し、朝食など無かったと思われます。夜は太陽が沈むと共に就寝していたでしょう。食事は午後の日が沈む前で、その日の収穫に合わせた1日の中でたった1回の食事をしていたと想像されます。活動の途中で何か採集したものを摘まんでいたかもしれません。つまり、人類は本来1~2回程度の食事しか摂っておらず、現代のように5回も何かを食べるというのはまずは考えられなかったと思います。3食きっちりと食べることが人間にとって有益である証拠はなく、人間の進化ではこのような少ない回数の食事に適応していると思われます。

また、現代のように夜非常に遅い時間に食事を摂ることも以前では無かったことでしょう。それがどのように影響しているのかははっきりわかりませんが、恐らくはホルモンの日内変動に関連していると考えられます。人間の体はいくつものホルモンが産生されていて、1日の中で多くなったり少なくなったりという日内変動を起こします。それは当然進化の過程で適応したものであり、現代の生活に適応したものではありません。

様々な研究で睡眠のサイクルと食事のサイクルを強制的に変化させると、数日で様々なホルモンバランスが混乱することを示しています。夜間シフトの仕事をしている人が夜間食事をすると、高度の炎症と心臓の代謝のリスクマーカーの上昇を認めるという研究もあります。

体の多くの活動に様々なホルモンが関与しており、それによって人間は生きています。そうすると、人類が適応していないタイミングでの食事の摂取は、ホルモンを混乱させ、ホルモンが関与すると考えられている乳がんや前立腺がんのリスクを上げてしまう可能性は十分に考えられます。

できる限り早めの夕食と、できる限り少ない回数の食事の方が健康的なのかもしれませんね。

「Effect of mistimed eating patterns on breast and prostate cancer risk (MCC‐Spain Study)」

「誤った食事パターンが乳癌リスクと前立腺癌リスクに及ぼす影響(MCC-Spain Study)」(原文はここ

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コメント

  1. クマフィー より:

    寝る直前の食事が癌の発生と関係があるとすれば、私は、ケトン体の産生量の影響があると考えます。食事(糖質制限無し)を摂って時間が経てば、糖質不足で糖新生が始まり、さらに時間が経過するとケトン体値が上がります。このケトン体値が高くなることが、寝ている間の身体の回復に貢献しているのではないでしょうか。このケトン体を産生するには、インスリン値が高くては難しいと聞いています。食事直後の入眠は、ケトン産生量を少なくする可能性があると考えます。

    • Dr.Shimizu より:

      クマフィーさん、コメントありがとうございます。

      面白い仮説ですね。ケトン体が必要なのか、血糖値が上がらないことやインスリンが出ないことが重要なのかは
      わかりませんが、寝る直前の食事の「質」が関わってくるとも思えます。