5日間の高脂肪高エネルギー食負荷試験(人体実験) その1

久しぶりの人体実験です。以前「糖質制限とLDLコレステロール上昇3 脂質をもっと食べるべき?(人体実験)」で100g程度の脂質を負荷して、コレステロールなどの変動を見てみました。前回の量ではまだ足りないと思い、今回はさらに脂質量を増やして、日数も5日間続けてみました。

まず、ある日1日の食事を大雑把に計算してみました。(調味料などは入れてません。)

エネルギー 2029kcal(炭水化物ではなく糖質で計算しています)、タンパク質 123.09g (492.36kcal)、脂質 152.79g (1375.11kcal)、炭水化物 62.11g (248.44kcal)、食物繊維 17.24g、糖質44.87g (179.48kcal)

なので、PFCバランスは24.3%、67.8%、8.8%です。(四捨五入しているので100%になりません)もちろん日によって変動はあります。

今回、5日間連続で高脂肪食を食べる人体実験を行いました。通常の食事にプラスして下に挙げたものを食べました。目標は脂質をプラス200g前後、エネルギー量はいつもの2倍でした。

生クリーム タンパク質3.1g 脂質93.9g 炭水化物5.9g
クロテッドクリーム タンパク質1.9g 脂質63.0g 炭水化物2.7g
卵3個 タンパク質22.14g 脂質18.54g 炭水化物0.54g
ミックスナッツ タンパク質5.2g 脂質16.5g 糖質2.9g
バターコーヒー タンパク質0.96g 脂質16.32g 炭水化物1.68g
合計 エネルギー2062kcal タンパク質33.3g 脂質208.26g 炭水化物13.72g

通常食と合計して、エネルギー4091kcal タンパク質156.39g 脂質361.05g 炭水化物75.83g(糖質では58.59g)、PFCバランス15.3%、79.4%、5.7%という、非常に高エネルギー、高脂質の食事です。こんな食事をしたら医者に怒られそうです。

基本的に朝の9時から夜の9時までの12時間、可能な限り、1時間毎に何か口に入れて、脂質を負荷し続けるようにしていましたが、もちろん様々な制約があるので、時間が空いてしまうことも何度かありました。なぜ可能な限り頻繁に摂取したかというと、一度に多くの量摂取すると吸収が低下する恐れがあることと、できる限りカイロミクロンを血中に出動させて、VLDLの分泌を少なくできないか?と考えたからです。

結果は次のようになりました。

体重は1.3kg増加(笑、やっぱり!)。通常の食事を続けて体重が維持されていたことを考えると、2000kcalもの余分なエネルギーは使いきれず、例え糖質でなくても脂肪として蓄えられたのだと思います。この人体実験の5日間では一度も空腹感を感じた瞬間はありませんでした。

しかし、血中の脂質には面白い変化もありました。

まずは総コレステロール値とLDLコレステロール値です。変化量はそれほど多くはないですが、ベースラインから5日後には総コレステロールが24低下、LDLコレステロールが23低下です。毎日脂質を350g以上摂取したのに、コレステロール値は低下しました。実はもう少し大きく下がると思っていましたが残念でした。

HDLコレステロール値は12増加しました。中性脂肪は15の増加です。ただ、中性脂肪は1日目2日目はベースラインより低下しています。理由は不明ですが、私の推測では、「通常の糖質制限では各組織のエネルギー需要が高く、VLDLが分泌されても、すぐに中性脂肪を渡して、消失してしまう。今回、大量の脂肪を持続的に摂取したことにより、カイロミクロンの分泌が増加して、VLDLの分泌が減少。中性脂肪値はVLDLの中にある脂肪がほとんどなので、一時的に中性脂肪の低下を示した。しかし、毎日の脂肪分が大量すぎて各組織の貯蔵エネルギーは十分であるので、だんだんとVLDLから組織への中性脂肪の送達が滞り始め、VLDLの消失が遅くなった。それにより中性脂肪値が増加した。」です。上のLDLコレステロールの減少もVLDLの減少を物語っていると思います。VLDLは減少したけれども、消失する時間が延長し、結果的にLDLは減少、中性脂肪は増加になったんだという解釈です。

中性脂肪/HDL比はベースラインで0.31、実験5日後で0.41なので非常に低値であることには変わりありません。

アポタンパク質も調べています。HDLのアポタンパク質のApoA-1は22の増加、LDLのアポタンパク質のApoBは16の低下です。実際にLDLの粒子数が低下したことを物語っています。

RLP(レムナント様)コレステロールも測定していますが、上がったり下がったりで、大きな変化は認めませんでした。

糖質制限でLDLコレステロールが上昇する理由は次のようです。各組織の脂質に対するエネルギー需要が非常に高く、それを届けるのはカイロミクロンかVLDLです。カイロミクロンが多いときにはそれに応じてVLDLの分泌は減少し、カイロミクロンが消失するとVLDLの分泌が増えると考えられます。VLDLから中性脂肪が送達されると、LDLに変化します。通常私は1日2食程度なので、カイロミクロンの出番の時間は非常に短く、ほとんどの時間でエネルギーの運び屋はVLDLです。しかも、エネルギー需要が非常に高いのでVLDLは大量に必要であり、すぐにLDLに変わってしまいます。そうすることでLDLコレステロールが高値を示すのだと考えています。

今回の実験で、できる限りカイロミクロンの出動を増やしました。そうするとVLDLは減少し、相当な量のエネルギーが各組織に溜め込まれているので、各組織のエネルギー需要は低下し、VLDLがLDLに変化するスピードも低下します。そうすることでLDLコレステロールが低下したと思われるのです。今回の様に大量の脂肪を摂取しない通常の糖質制限でも、1時間おきとまでは行かなくても食事の回数を増やせば、VLDLの分泌が減り、LDLコレステロール値が低下する可能性があります。別に下げる必要はないと思いますが。

ただ、今回の実験ではタンパク質も糖質も少しいつもよりも多くなってしまい、インスリン分泌もいつもよりは多いかもしれません。それの影響がある可能性もあります。

今回の脂肪摂取量は350gを超えていました。恐らくここまでは必要ないのでしょう。しかし、100g~150g程度の脂肪摂取量では各組織のエネルギー需要に十分には応えられないことにより、普段の中性脂肪値は40以下の非常に低い値を示していると思われます。それでいても私には皮下脂肪がちゃんとあります。非常に不思議です。これぐらいの脂肪摂取量で私の体は適応しているのでしょう。体重の変化もほとんどなかったのですから。

つまり、適応するとエネルギー消費量の方が変動し、いつものエネルギー摂取量に見合うように何らかの調整がなされるのではないでしょうか?

エネルギー摂取量が少ない人でも、どこかで体重は下げ止まりをします。適応すると体重変化は無くなり、エネルギー消費量も減るのでしょう。だからと言って体が動かないのではなく、効率よく動くようになるのかもしれません。もちろん程度問題で、摂取量が少なすぎれば動けなくなる人もいると思います。

しかし、エネルギー摂取量の増加に対してはあまりうまく適応できないのでしょう。それは進化の過程でエネルギーが必要以上に満たされ過ぎることはあり得なかったからです。いつも如何にエネルギーを溜めるかという戦いの状況の中で進化して適応してきたので、溜められるときにはドンドン溜めるように代謝が働きます。エネルギーを溜める方向にはリミッターがないのだと思います。たとえ、体がエネルギー消費量を増加させたとしても限界があるのでしょう。肥満の人が体温が高く汗をいっぱいかいているのは、皮下脂肪が厚くて、体温が逃げずに熱がこもるからという説がありますが、もしかすると逆に何とかエネルギー消費を増やそうとする適応反応なのかもしれません。

つまり、基礎代謝というのも遺伝という要素が関わるだけでなく、食事が変わって適応すると変動するということです。適切なエネルギー摂取量やエネルギー消費量は個人差が非常に大きいのだと思いますので、厚労省の勧める1日のエネルギー摂取量や基礎代謝量というのは一応の参考値でしかないと思います。その摂取量を摂っていても痩せ続けるのであれば、その人はエネルギー消費量が非常に多い体であり、その摂取量で過体重である場合にはエネルギー消費量が非常に少ない体のなのでしょう。もちろん、ちゃんと糖質制限をしている前提です。

今回はちょっとおバカな人体実験を行いました。もう少し大きな変化が出るかと思いきやダメでした。でも、ある程度は仮説を裏付けるような実験になったのだと自画自賛しています。

実はもっと劇的にLDLコレステロールを下げる方法はあります。それは糖質を大量に頻繁に摂取することです。ただ、これを証明するために人体実験する勇気はありません。LDLは低下しても、「脂肪の摂取量が少なくなれば小さな危険なLDLが増加する」などで書いたように小さな危険なsdLDLが主なLDLになってしまい、HDLも低下し、中性脂肪は劇的に増加し、レムナントも増加し、そして高血糖になり高インスリン血症になり、AGEも増加するのでやりません。死んでしまいます。

そして、今回は他のパラメーターもいくつか測定しています。それの解釈はなかなか難しいですが、次回に記事で書きたいと思います。