「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書(案)では今回も「カロリーはカロリー」説が採用されています。この中に次のような文章があります。
「エネルギー出納バランスは、エネルギー摂取量-エネルギー消費量として定義される(図 1)。成人においては、その結果が体重の変化と体格(body mass index:BMI)であり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回る状態(正のエネルギー出納バランス)が続けば体重は増加し、逆に、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回る状態(負のエネルギー出納バランス)では体重が減少する。」
つまり、いまだにエネルギー(カロリー)はどのようなものでも同じであるという考えです。それが糖質であろうが、脂質であろうが、タンパク質であろうがエネルギー量が同じであれば、体重にもたらす効果は同じであると考えているのです。
この考え方している限り、痩せるためにはカロリー制限食が必要であることになります。しかし、実際には栄養素の違いが体重に与える効果は違います。特にタンパク質はエネルギーになるよりも体の構成要素や重要な物質になるからです。
また、以前の記事「エネルギー消費量は食事で変わる」「高脂肪食と運動の組み合わせで寝ているときのエネルギー消費量が増加する」で書いたように、脂質の割合が高く、糖質の割合が少なければエネルギー消費量も増加します。摂取エネルギーが同じなのに、その食事の内容により消費するエネルギーは異なるのです。人間の体はそんなに単純計算ではないのです。
糖質制限ではエネルギー摂取量を減らさなくても、体重はどんどん減少します。「カロリーはカロリー」説は間違いなのです。
基礎代謝は通常、身長と体重と年齢で決定されますが、これももしかしたら食事の内容で異なるのではないかと、最近考えています。つまり、糖質制限をすると、基礎代謝低下するので、糖質過剰摂取よりもエネルギー摂取量は少なくて良いのではないか?と考えています。糖質過剰摂取は何か無駄なエネルギーを必要としており、その分基礎代謝量が増加しているという考えです。まだ勝手な仮説ですが。
タンパク質に関して、上限はどれくらいか?については、
「健常者を対象としてたんぱく質摂取量を変えて腎機能への影響を検討した比較試験のメタ・アナリシスは、35%エネルギー未満であれば腎機能を低下させることはないだろうと結論している。また、20%エネルギー以上(又は 1.5 g/kg 体重/日以上又は 100 g/日以上)の高たんぱく質摂取が腎機能(糸球体濾
過率)に与える影響を通常または低たんぱく質(高たんぱく質摂取群よりも 5%エネルギー以上低いものとする)に比べたメタ・アナリシスでは有意な違いは観察されなかった 。しかし、試験期間が短いなど課題が多く残されている。したがって、現時点ではたんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分ではない。以上より、耐容上限量は設定しないこととした。」
としています。つまり、タンパク質の上限は不明です。しかし、高齢者のフレイル予防目的に、今回は高齢者のタンパク摂取を増加させる基準にしています。
「以上より、フレイル及びサルコペニアの発症予防を目的とした場合、高齢者(65 歳以上)では少なくとも 1.0 g/kg 体重/日以上のたんぱく質を摂取することが望ましいと考えられる。」
私は以前の記事「中年以降はもっとタンパク質を摂る必要があるかもしれない」「高齢者はもっとタンパク質を摂るべきかもしれない」で書いたように、もっとタンパク質は多くても良いと思っています。また、質の低いタンパク質では必須アミノ酸は十分ではなく、動物性のタンパク質を多く摂る必要もあるでしょう。植物性のタンパク質ばかりでは同じ量のタンパク質を摂取しても、有効に使われません。だから、「少なくとも1日何gの動物性タンパク質を摂りましょう」というような具体的な指標が必要であると思います。
そして、タンパク質の重要性をもっと強調すべきです。そうしないと、高齢者の中には、白米に野菜をおかずにして食べることが健康的な食事だと思い込んでいる人も多いですから。
また、以前の記事「高タンパク食は腎臓に悪影響がないばかりか糸球体濾過量(GFR)を増加させる」でも書いたように、タンパク質の摂取量が多くなるほどGFRが増加するという研究さえあります。
タンパク質はしっかりと摂取しましょう。肉、魚、卵をたっぷり食べましょう。
次回は脂質とコレステロールについてです。
先生いつも情報ありがとうございます!
相撲部屋の食事をどう思いますか?丼にご飯何杯も…。身体を大きくするためだとか?あの体型はどうして出来るのでしょうか。
健康状態はどうなんでしょうか?
吉川恭彦(ヤス)さん、コメントありがとうございます。
相撲は体重別になっていない特殊なスポーツです。だから、体重が重い方が有利と考える人もいるのでしょう。
当然、健康的ではないです。引退後様々な病気を発症し、最近北尾さんが亡くなった様に、早く亡くなる方も多いのではないでしょうか?
先生返信ありがとうございます。
私事ですが足首の痛みもう1年になり全く走れません。我慢して走ってみても痛くてダメです。3日(水曜日)帯広から先生の病院に伺う予定してますので宜しくお願いします!