アメリカ糖尿病学会が出した歴史的なコンセンサスレポート 糖質制限を推進!

先日アメリカ糖尿病学会が発表した栄養療法のコンセンサスレポートを読んで、びっくりしました。歴史的な瞬間かもしれません。アメリカ糖尿病学会の栄養療法のコンセンサスレポートの中で糖質制限を大きく推進する内容になったのです。(図は原文より)

まずは、主要な栄養素についての推奨事項として、次のように述べています。

「糖尿病を患っている、または糖尿病のリスクがあるすべての人にとって、炭水化物、タンパク質、および脂肪からのカロリーの理想的な割合はないことを証拠は示唆しています。 したがって、主要栄養素の配分は、現在の摂食パターン、好み、および代謝目標の個別の評価に基づくべきです。」

つまり、現在日本糖尿病学会や厚労省が推奨している、炭水化物の割合を摂取エネルギーの50~65(60)%摂ることに関して、証拠はないということを示しています。PFCバランスに全くエビデンスは存在していないのです。

食事のパターンの推奨事項として

「糖尿病の管理には、さまざまな食事パターンが許容されます。

特定の個人における異なる食事パターンの比較したメリットを取り巻く証拠が強化されるまで、医療提供者はそのパターンに共通している主な要因に焦点を当てるべきです。

○でんぷん質のない野菜を重視する。

○砂糖や精製した穀物の追加を最小限に抑える。

○可能な限り、高度に加工された食品よりも自然食品を選ぶ。」

さらに、

「糖尿病患者の全炭水化物摂取量を減らすことは、血糖を改善するための最も多くの証拠を示しており、個人のニーズや好みに合ったさまざまな食事パターンに適用することができます。

血糖値の目標を満たさない、または抗血糖薬の服用量を減らすことが優先される2型糖尿病の選択された成人では、低炭水化物または超低炭水化物の食事プランで炭水化物摂取量を減らすことが現実的です。 」

つまり、糖質制限はもはや「危険」な食事でもなく、「流行」のダイエット法でもなく、研究に裏付けられた非常に有益で実践可能な食事であり、多くの糖尿病患者に最も適していると考えられているということです。

素晴らしい!歴史が変わりました!ここまで糖質制限を推奨する内容になったのです。文章の中では「炭水化物を制限した食事パターンを使用した試験のほとんどは、飽和脂肪を制限しませんでした。現在の証拠から、この摂食パターンは全体的な心血管リスクを増加させるようには思われません。」とも書かれています。画期的!

ただ、残念なことに炭水化物の割合が40~45%以下でも低炭水化物の扱いです。他の表では、低炭水化物の食事パターンは、炭水化物を総カロリーの26〜45%に減らすことと定義されています。超低炭水化物は、「栄養性ケトーシスを誘発するために、1日当たり20〜50gの非繊維炭水化物を目標とすることがよくあります。」と書かれ、この食事パターンは炭水化物を総カロリーの26%未満まで減らすことと定義されています。

しかし、ご丁寧に次の表まで付けています。

つまり、炭水化物を10%まで想定していることになります。素晴らしい!

さて、このようなアメリカの糖尿病学会の発表を受けて、5月に行われる日本糖尿病学会の総会ではどのような見解が発表されるのでしょうか?以前の記事「日本人の食事摂取基準(2020版)(案)を読んでがっかり その2 炭水化物(糖質)」で書いたように、厚労省は炭水化物の割合を変えようとはしていません。この内容との整合性をどのように取るかも気になりますね。手の平が返されるか?適当なところでお茶を濁すか?楽しみですね!

「Nutrition Therapy for Adults With Diabetes or Prediabetes: A Consensus Report」

「糖尿病または前糖尿病の成人のための栄養療法:コンセンサスレポート」(原文はここ

2 thoughts on “アメリカ糖尿病学会が出した歴史的なコンセンサスレポート 糖質制限を推進!

  1. 2回目のコメントになります。
    いつも興味深く拝見しております。
    私事ですが3年前からダイエットで糖質制限と運動を始め現在は171cm、61kgと20歳の頃の体型を維持しています。
    すこぶる体調は良いのですがネット等を見ますとタンパク質の摂り過ぎは腎臓に良くないなどの記述が目立ちます。
    しかし糖質で摂らないカロリーを補うためにタンパク質や脂質の摂取は自ずと増えてしまいます。
    この辺り、ドクターシミズ様は如何お考えでしょうか?
    私の基本データは下記の通りです
    ■平均的な摂取栄養素(週1回の外食を除く)
     エネルギー2,450kcal、タンパク質170g、脂質140g、炭水化物130g、塩分9.9g
     *外食する日は概算で5,000kcalくらい摂ってる感覚があります
    ■タンパク質の内容:大豆、納豆、豆腐、卵、チーズ、サバ水煮、いりこ
    ■脂質の内容:チーズ、卵、サバ水煮、薄皮付落花生、ごま油
    ■炭水化物の内容:パスタ(週1回)、ビターチョコレート(ほぼ毎日)、その他
     *白米、パンは基本的に食べません
    ■500kcalの有酸素運動(ジョギング)を週5回ほど実施

    1. 40代男性さん、コメントありがとうございます。

      ネットのどの情報を信じるかはそれぞれです。糖質制限も肯定派否定派それぞれの意見があります。
      タンパク質が腎臓に良いか悪いかも同じ次元です。また、タンパク質の話も前提は糖質過剰摂取状態です。
      日本人の食事摂取基準(2020版)(案)を読んでがっかり その3 エネルギーとタンパク質」で書いたように、
      厚労省でさえ、上限は設定していません。35%までなら腎機能を低下させることはないだろうとしています。

      40代男性さんは肉は食べないのですね?大豆製品がメインに見えますが、それでタンパク質170gにもなるとしたら、余程大量に食べるのですね?
      豚肉で考えたら900gほどですが、豆腐だと11丁ほどです。
      タンパク質の質を考えたら、肉の方が良いと思いますが。

      私は普段全くカロリーなどは考えていません。糖質を摂らない分を補うという考えさえありません。
      糖質以外のもので、質や中に含まれる栄養素を考えて、好きなだけお腹いっぱい食べるだけです。
      計算すれば、体重1kg当たり2g以上のタンパク質は摂っているでしょう。
      プロテインなどで極端な高タンパク食であればわかりませんが、糖質制限時の高タンパク質では腎機能低下は起こらないのではないかと思っています。

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