糖質過剰摂取は生まれて間もないころから始まっています。小さな子供でも大量の必要のない砂糖を添加した、食べ物や飲み物を頻繁に摂取してしまっています。当然親が与えているのですから、親が考えなければなりません。
今回の研究は日本のものではありませんが、アイルランドの3歳児の糖質過剰摂取の状況を示しています。日本でも似たような状況だと思います。総糖というのは、食品または飲料に含まれる天然の糖(自然の果物や野菜の構造に組み込まれているでんぷん以外の糖質)と添加された糖の合計です。遊離糖というのはWHOの定義した糖です。加工する過程で添加された糖だけでなく、蜂蜜、シロップ、フルーツジュース、濃縮フルーツジュースに自然に含まれる糖も含まれます。
イギリスの栄養に関する科学諮問委員会(SACN)では、2歳以上では総エネルギー摂取量の5%以上の遊離糖を摂取すべきではなく、子供には砂糖入り飲料の摂取を最小限に抑えるべきだと助言しています。しかし現実的には遥かに多い糖質を摂取していると思われます。(表は原文より改変)
3歳児の総糖および遊離糖の1日摂取量、頻度(食事またはスナックとして)、および総エネルギー摂取量(TEI)に対する割合
平均 | P25 | P50 | P75 | |
---|---|---|---|---|
総糖(g /日) | 75.8 | 54.6 | 75.3 | 132.7 |
総糖(頻度) | 5.2 | 4.0 | 5.0 | 6.0 |
総糖からのエネルギー(%TEI) | 26.9 | 22.4 | 26.9 | 31.2 |
遊離糖(g /日) | 40.0 | 21.3 | 36.7 | 81.5 |
遊離糖(頻度) | 3.9 | 3.0 | 4.0 | 5.0 |
遊離糖からのエネルギー(%TEI) | 14.1 | 10.0 | 13.5 | 65.5 |
上の表のP25 、P50、P75はそれぞれパーセンタイルです。少ない方から25%の人、50%の人、75%の人の摂取量や摂取頻度を示しています。そうすると、平均して3歳児でも糖の総量は平均して1日75g以上にもなります。そして遊離糖は40gにもなります。ティースプーン1杯はおよそ4gと考えて、ティースプーン10杯もの遊離糖を摂取していることになります。糖の総量では約19杯のもなります。これにでんぷん質の糖質が加わるので、非常に大量の糖質を摂取していることになります。
さらに遊離糖のエネルギーは総摂取エネルギーの14%にもなっています。75%もの子供が10%以上の遊離糖を摂取しているのです。10%というのはWHOが推奨する最大摂取量です。可能な限り5%までの摂取量で抑えることを推奨しています。それを達成できたのは4%未満の子供です。
しかも、摂取頻度を見ると、1日に4回も5回も摂取しています。つまり、起きている間、常に糖質を摂取し続けている状態です。子供たちは不必要な間食に曝され続けているのです。
フルーツジュース とスムージー | 乳製品 | ソフトドリンク (ノンダイエット) | チョコレート菓子 | ケーキとビスケット | 非チョコレート菓子 | 砂糖とシロップ | デザートとプリン | RTEBC | その他 | パンとシリアル | 果物と野菜 | |
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消費(%) | 73.0 | 100.0 | 71.4 | 59.5 | 89.7 | 45.2 | 56.3 | 25.4 | 92.1 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
総糖平均 | 8.7 | 22.0 | 4.8 | 3.6 | 4.7 | 2.2 | 2.6 | 1.2 | 3.2 | 3.0 | 2.5 | 17.3 |
遊離糖平均 | 8.4 | 8.2 | 4.8 | 3.1 | 4.4 | 2.2 | 2.5 | 0.9 | 3.1 | 1.3 | 0.7 | 0.4 |
%TEI総糖平均 | 3.1 | 7.6 | 1.8 | 1.2 | 1.6 | 0.8 | 0.9 | 0.4 | 1.2 | 1.1 | 0.9 | 6.3 |
%TEI遊離糖平均 | 3.0 | 2.8 | 1.8 | 1.1 | 1.5 | 0.8 | 0.9 | 0.3 | 1.1 | 0.5 | 0.2 | 0.1 |
頻度平均 | 0.7 | 3.2 | 0.9 | 0.3 | 0.8 | 0.2 | 0.4 | 0.1 | 0.9 | 5.8 | 1.8 | 3.2 |
確率 おやつとして | 27.0 | 26.0 | 30.0 | 73.0 | 69.0 | 66.0 | 18.0 | 37.0 | 5.0 | 21.0 | 19.0 | 33.0 |
確率 食事として | 73.0 | 74.0 | 70.0 | 27.0 | 31.0 | 34.0 | 82.0 | 63.0 | 95.0 | 79.0 | 81.0 | 67.0 |
RTEBC:(ready-to-eat-breakfast-cereals:すぐに食べられる朝食用シリアル。ケロッグのようなもの)
TEI:(Total Energy Intake:総エネルギー摂取量)
上の表はどのようなものから糖を摂取しているかを表しています。国により違いがあるかもしれませんが、アイルランドの3歳児は100%、乳製品、パンとシリアル、果物と野菜から糖を摂取しています。その次に多いのはがケロッグのようなすぐに食べられるシリアルです。そして、ケーキやビスケット、フルーツジュースやスムージー、ソフトドリンクと続きます。これらの中でもしかしたら、乳製品、シリアルやフルーツジュースやスムージーは、多くの人が健康的だと勘違いしている可能性があります。もちろん糖質をほとんど含まない乳製品は問題ないでしょう。しかし、添加されている糖質が非常に多いと思われます。甘い朝食用のシリアルは不健康です。
特に問題なのは、子供たちも多くの糖を「食事」として摂取していることです。毎日の食事の中に非常に大量の糖が含まれてしまっているのです。
遊離糖はフルーツジュースやスムージー、乳製品に含まれているものが非常に多いのです。
できる限り糖が添加されていない乳製品を選んだり、フルーツジュースやスムージーではなく、天然の果物や野菜をとるべきでしょう。(大量の果物はお勧めしませんが)天然に含まれている糖だけでも非常に多いのですから、添加されたものは不必要です。
ソフトドリンクなどの液体の糖質を子供に飲ませている親も多いでしょう。食事の時にもフルーツジュースを飲んでいる子供も多く見かけます。
ただでさえ糖質の多い食事をしているのに、さらに余分な糖を摂取する必要はありません。虫歯はもちろん、肥満や将来の糖尿病などの病気をもたらすのは糖質です。小さな子供だから大丈夫ではありません。小さなころからの糖質過剰摂取は様々な問題を引き起こす可能性が高くなります。
以前の記事「子供の肥満は親次第」「子供や若者であっても食事を間違えれば小さな危険なLDLが多くなる」などでも書いたように、食育は親の責任です。飲み物に糖質は必要ありません。食事まで含めて考えても糖質過剰摂取であることは間違いないと思います。さらに間食で子供に有害な毒を与えているようなものです。
「Estimation and consumption pattern of free sugar intake in 3-year-old Irish preschool children」
「3歳のアイルランドの就学前児童における遊離糖摂取の推定と消費パターン」(原文はここ)