インスリン抵抗性は骨代謝回転を抑制する

骨密度は骨折の強力な予測因子です。病院では、高齢者の骨密度を測定し、その結果で薬を投与して骨密度を増加させることをしています。しかし、2型糖尿病では、骨密度が増加するのに、骨折率は高くなります。つまり、当然ですが骨密度だけが骨折の予測因子ではありません。

骨は、破骨細胞、骨芽細胞や骨細胞によって、恒常的な周期の更新および修復サイクルを常に受け​​ています。骨形成と吸収は密接に結びついて、それにより骨芽細胞は新鮮な骨基質を合成し、様々な過程を経て骨になります。この骨代謝の回転が非常に重要です。

糖尿病の骨折の要因はコラーゲンがAGEsにより質が低下し、もろくなるのであろうと考えます。また、骨代謝の回転がうまくいっていないことも重要な要素だと考えます。

今回の研究ではその骨代謝の回転がどうなっているかを分析しています。骨形成のマーカーは、Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)とオステオカルシン(OC)、骨吸収のマーカーは、I 型コラーゲン架橋 C–テロペプチド(CTx)です。(図は原文より)

上の図のaは全身の骨密度(BMD)です。bはTスコアです。Tスコアは、若年齢の平均BMD値を0として、標準偏差を1SDとして指標を規定した値をいい、骨粗鬆症診断基準に用いられるスコアです。cはZスコアで、同年齢の平均BMD値を0として、標準偏差を1SDして指標を規定した値をいい、骨粗鬆症診断には用いられません。

横軸は左から正常の群(BMI25以下、HOMA-IR2.0未満、正常耐糖能)、過体重および肥満でインスリン抵抗性なし(BMI25以上、HOMA-IR1.5未満)、過体重および肥満でインスリン抵抗性あり(BMI25以上、HOMA-IR3.0以上)、一番右が2型糖尿病(BMI25以上)です。

そうすると、正常の人よりも骨密度は肥満の人の方が高くなっています。Tスコアでも同様の結果ですが、Zスコアでは有意差がありませんでした。

上の図は骨代謝のマーカーです。左からOC、CTx、P1NPです。どれも正常の人とインスリン抵抗性なしの人では同程度でした。しかし、インスリン抵抗性ありの人と2型糖尿病の人では、正常とインスリン抵抗性がない人と比較して、低下していました。P1NPは有意差まではありませんでしたが。

インスリン抵抗性のある人では、骨形成のマーカーであるOCと骨吸収のマーカーであるCTxが内臓脂肪に反比例していました。空腹時インスリン値もOCおよびCTxに反比例していました。

骨代謝の関係する細胞にもインスリン受容体は存在するでしょう。肥満や2型糖尿病でインスリン抵抗性が増大すると、インスリンの信号が適切に伝達されなくなり、骨代謝回転が低下するのではないかと考えられます。

いずれにしても、骨密度だけを測定して、骨密度が低下していないからといって喜んでいてはダメでしょう。インスリン値も測定し、インスリン抵抗性があるのであれば、骨密度の高さは意味がなくなる可能性が十分にあります。もちろん、通常はインスリン値は測定しません。

糖質制限をすれば、インスリン抵抗性は低下するし、AGEsも減少するので、骨の健康も向上すると考えられます。

そういえば、最近発売された骨粗しょう症の薬は、発売半年で死亡が16例になりました。(詳しくは次回以降で)薬に頼るよりも自分の食事を変える方が重要だと思います。

「Bone Turnover Is Suppressed in Insulin Resistance, Independent of Adiposity」

「骨代謝回転はインスリン抵抗性で抑制され、脂肪過多とは関係していない」(原文はここ