ケトン体は認知機能を改善する

いまだに医師や栄養士の多くが脳のエネルギーはブドウ糖だけだ、と言っています。その知識をアップデートしていない人は専門家とは言えませんが、堂々と発言しているのが何とも嘆かわしく、その言葉を信じてしまう人も多いのも事実でしょう。

今回は認知機能とケトン体の話題です。ケトン体は最も重要なブドウ糖の代替エネルギーです。長期の絶食では、ケトン体は脳のエネルギー必要量の60%以上を供給することができます。脳のブドウ糖の取り込みが低下しても、脳のケトン体の取り込みは、健康な若い成人と比較しても、認知的に健康な高齢者だけでなく、軽度認知障害(MCI)および軽度から中等度のアルツハイマー病でも正常です。

MCIや認知症では脳のブドウ糖の取り込みが低下し、脳のエネルギーが不足すると考えられています。そこで今回の研究では、ケトン体を作り出す中鎖脂肪酸(MCT)を摂取すると脳のエネルギーや認知機能がどうなるのかを調べています。

MCIの52人の人に6か月、30g/日のMCTまたはプラセボに与えました。MCTはドリンク250mlの中に30g入っている状態で提供されました。(図は原文より)

上の図はPETで表した脳のケトン体代謝率です。左がプラセボ、右がMCT。上がMCT投与前、下が投与後です。MCTの投与後にMCT群ではケトン体の代謝が大きく増加しています。

上の図は脳のブドウ糖の取り込み(上)とケトン体の取り込み(下)です。左がプラセボの前後、右がMCT投与前後です。MCTを飲んだ人では脳のケトン代謝が230%に増加しましたが、脳のブドウ糖の取り込みは変化しませんでした。

上の図は認知機能です。横軸は血中のケトン体濃度変化です。細かい検査の内容は省略しますが、エピソード記憶、言語、実行機能、および処理速度の測定値は、ベースラインに対してMCTで改善されました。脳のケトン摂取の増加は、いくつかの認知的な測定と正の関連がありました。

血中のケトン体が適度に増加した量で利用できる場合、脳によってブドウ糖よりもケトン体が優先的に取り込まれるため、実際にブドウ糖の代わりにケトン体が脳のエネルギーになります。

血中のケトン体の半減期は比較的短いため、MCIの脳のエネルギー不足を完全に補うには、おそらく30g/日以上の量が必要かもしれません。しかし、通常の食事、つまり糖質過剰摂取状態であってもMCT投与は脳のケトン体を増加させるようです。

もちろん、糖質制限を行えば常にケトン体が血中に存在するので、十分なエネルギーを脳に送り込むことが可能になります。以前の記事「脳のケトン体の利用は標準装備」でも書いたように、脳は生まれつきケトン体を利用するようにできています。糖質制限でケトン体が大きく上がらない人はMCTオイルを併用するのも良いと思います。

脳のエネルギーはブドウ糖だけ、というウソには惑わされないようにしましょう。認知症は糖質過剰症候群です。認知症には糖質制限が必須だと考えられます。

「A ketogenic drink improves brain energy and some measures of cognition in mild cognitive impairment」

「ケトジェニックドリンクは、脳のエネルギーと軽度の認知障害の認知のいくつかの尺度を改善する」(原文はここ

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    あけましておめでとうございます。

    >通常の食事、つまり糖質過剰摂取状態であってもMCT投与は脳のケトン体を増加させるようです。

    そうですね、MCTオイルを多めに摂取すると増えると思います。
    しかし、経験上、インスリン分泌を少なくした方がケトン体は高値になります。したがって、糖質も蛋白質も少ない(いわゆるケトン食の)方がケトン体は明らかに増えます。
    筋トレで糖質が必要と言っている方がいますが、この方たちはプロテインなどの高たんぱく食でインスリン分泌が多く、ケトン体産生が少ないのではないかと想像しています。

    • Dr.Shimizu より:

      西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      プロテインの飲料で高濃度を一気に摂取しない限り、糖質制限をしていれば、ケトン体は十分に産生されると思います。
      ただ、ケトン体の増加は個人差が大きいと思います。

  2. 鈴木武彦 より:

    『アルツハイマー病が劇的に改善した!米国医師が見つけたココナツオイル驚異の効能 』
    という本を読み、10年程前40歳代半ばでココナッツオイルを摂ることを数年続けました。
    (ある程度効果はあったような、気はします。)

    糖質制限するようになってからは、体調の良さもあり、いつしかココナッツオイル習慣が途絶えました。

    認知症リスクも高まるこれから、良質な脂質の摂取割合を増やしてく方向へシフトしていこうかと思います。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      スーパー糖質制限を行っているならあえてMCTやココナッツオイルを摂らなくても、ケトン体は十分にあると思います。

  3. 鈴木武彦 より:

    大変貴重なご助言、ありがたいです。

  4. T.I より:

    いつもサイトを拝見しております。
    以前の投稿へのコメントで申し訳ありません。
    実は顕著な機能改善がありましたので報告したいとおもいます。
    母は97歳で最近、曜日と日、その日の予定の関連付けができなくなって幾度となく周りの者に確かめますが、すぐ忘れてしまい自分自身も困惑した表情になりカレンダーの前に立ち尽くしてしまう状態でした。またいつも不安そうな表情をしていました。
    自活できているので軽い初期の認知障害と判断します。
    先生のケトン体による脳機能改善の投稿を拝見して、MCTを12月25日頃より朝食前に取るように勧めました。(C8が100%のもの)
    そのあと1月11日に家に行ったとき以前の母と違い表情が明るく、受け答えが明確で、感じ的にですが以前と全然違うのです。兄、姉も同様に感じていたので間違いなく脳機能が改善していると思います。今朝も化粧してこれから飲まなくちゃと言ってました。
    それともう一つ耳が遠く補聴器をつけても全然だめでしたが、なんと1回の言い直しで聞き取れるようになりました。こちらはMCTによるものかどうかは分かりませんが。
    糖質制限をきっちと行えばもっと効果があると思いますが、とりあえずお菓子はだめと
    言っております。長くなりますがもう一件、
    先生のサイトを参考に自分ですが、バター、MCT、ココナッツオイルなど脂肪を多くとり糖質制限を厳格に行った結果、3ヶ月毎の検査でLDLが134から91、HDLが74から91、中性脂肪が54から41となり、スタチンの処方がなくなりました。(LDLは100以下にしたかったようです)
    先生のサイトに巡り合うことができて感謝しております。今後も有意義な情報発信をお願いいたします。

    • Dr.Shimizu より:

      T.Iさん、コメントありがとうございます。

      お母さまの認知機能改善良かったですね。難聴まで改善とは。ケトン体パワーはすごいと思います。
      またご自身のHDL増加、中性脂肪低下も素晴らしいデータです。