ケトン体ドリンクの可能性

現在ではケトン体は非常に健康にとって有益だと考えられています。最近ではケトン体が危険だという人は見かけなくなりました。(まだどこかにいるのかな?)以前の記事「ケトン体は認知機能を改善する」ではMCTを摂取しケトン体を増加させることは認知機能に有効だということを書きました。

糖質制限をすればケトン体が増加しますが、ドリンクでケトン体を摂取するとどうなるのでしょうか?

今回の研究ではケトン体ドリンクを飲んだ後OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行っています。対象者は平均47歳の平均BMIが34という肥満の人15人です。糖尿病や心疾患、血糖値や脂質に影響する薬を飲んでいる人、糖質制限をしている人などは除外されています。HOMA-IRの平均は2.9で、インスリン抵抗性があります。一晩絶食し、OGTT30分前にケトン体ドリンクを飲みました。0.45mL/kg体重または482mg/kg体重の透明な粘性液体の形でケトン体サプリメントを摂取したようですが、それがどれくらいのケトン体の量であるかはよくわかりません。(図は原文より)

 

 

上の図はAとCはケトン体と血糖値の推移です。BとDはそれぞれの曲線下面積です。OGTTの30分前にケトン体ドリンクを飲んでいますが、30分後OGTT開始時点で、血中のケトン体は十分に増加していて、120分後でもずっと高い値を維持しています。当然コントロールではケトン体は増加しません。ケトン体の曲線下面積でもわかるように、ケトン体ドリンクを飲んだあとの血中のケトン体は結構個人差が大きいようです。多い人と少ない人では6倍ほどの違いがあります。ケトン体ドリンクの摂取後、2時間のOGTT中に血糖値の曲線下面積は11%減少しました。

上の図はインスリンとC-ペプチド(インスリン前駆体であるプロインスリンの構成成分)の推移です。これらはコントロールと差がありません。ただ面白いことに、ケトン体ドリンクを飲んでから、OGTT開始まで(-30分~0分)では、インスリンもC-ペプチドもケトン体ドリンク群で少し増加しているのです。古い研究では、ケトン体がインスリン分泌を促進したり、しなかったりという結果が出ていますが、どうやら血糖値が90以下ではインスリン分泌を刺激しないようです。そして、2000μmol/L以上に急激にケトン体が増加するときにはインスリンが分泌されるようです。もしかしたら、ケトン体によるこのわずかなインスリンの分泌促進は、体内にケトン体が十分にあるので、糖新生を抑制するためのシグナルであるのかもしれません。面白いですね。

上の図は遊離脂肪酸とGLP-1の推移です。遊離脂肪酸はケトン体ドリンクでOGTTの15分、30分で有意に低下、曲線下面積も21%低下しました。ケトン体によって脂肪が動員される必要が低下したからなのでしょうか?GLP-1もケトン体ドリンクで低下していました。曲線下面積では31%低下です。GLP-1はすい臓からのインスリン分泌を促進と血糖降下、グルカゴン分泌抑制作用がありますが、今回はインスリンの変化は認めませんでした。

上の図は乳酸、中性脂肪とグルカゴンの推移です。乳酸と中性脂肪の曲線下面積は変化しませんでした。グルカゴンの分泌は増加はしていませんが、グルカゴンの曲線下面積は有意にケトン体ドリンクで11%増加しました。

OGTTでのインスリンが変化なく、血糖値が低下したということは、OGTT前のわずかなインスリン増加に伴いブドウ糖の取り込みが増加したのか、または先ほど書いたように糖新生が減少した、またはインスリン感受性が何らかのメカニズムで増加したと考えられます。はっきりしたことはわかりません。

しかし、ケトン体にはまだまだ様々な可能性がありそうです。ただ、ケトン体ドリンクは非常に味がまずいそうです。(飲んだことはありませんが)

 

「A ketone monoester drink reduces the glycemic response to an oral glucose challenge in individuals with obesity: a randomized trial」

「ケトンモノエステル飲料は、肥満の個人の経口ブドウ糖チャレンジに対する血糖反応を低下させる:無作為化試験」(原文はここ

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