WHO調査報告書 全国一斉休校に根拠なし

昨日の夜(2月29日)、安倍首相が記者会見しました。具体性がないことを何度も同じことを話して時間稼ぎして、短時間で質問も打ち切り終わった感じでした。何のための記者会見かわかりませんでした。「北海道封鎖」という言葉が出なくて良かったのですが、よく考えれば北海道を封鎖すればオリンピックをあきらめたことと同じなのかもしれません。マラソンと競歩が札幌で行われるのですから。それともまた、「やっぱり東京でマラソンを行う」と言い出すかもしれませんが。

会見でPCR検査を保険適応にすると言っていましたが、検査現場の負担急増、疲弊が心配です。儲けを考え、ちょっとした症状でも全部PCR検査を出してしまう医師がいないことを祈ります。

テレビに良く出演しているあるクリニックの医師が、新型コロナウイルスかどうかわからないけど、恐らく違うと思っている患者に対して「PCR検査で陰性が出れば、きっぱりと否定できる」という主旨の話をしていましたが、PCR検査では否定はできないはずです。PCR検査を増やすことは良いのですが、その結果をどのように患者に説明するのか、どう活用するのか、が非常に重要でしょう。PCR検査陰性は新型コロナウイルスに感染していない証明には全くなりません。

今回の記者会見の中で安部さんは全国一斉休校の根拠も全く示すことができませんでした。「子供を守る」というわかりやすいキーワードで何とか押し切ろうと思ったのでしょうが。

そんな中WHOから調査報告書が公表されました。中国のこれまでの状況を分析したものです。

WHO調査報告書 症状の特徴・致死率など詳しい分析明らかに

新型コロナウイルスの感染が広がっている中国で、WHO=世界保健機関などの専門家チームが行った共同調査の報告書が公表され、感染者の症状の特徴や致死率などについて詳しい分析を明らかにしました。

この報告書は、WHOが派遣した各国の専門家や中国の保健当局の専門家らによるチームが現地で調査にあたり、2月20日までに中国で感染が確認された5万5924人のデータについて分析しています。

それによりますと、感染者からみられた症状は
▽発熱が全体の87.9%、
▽せきが67.7%、
▽けん怠感が38.1%、
▽たんが33.4%、
▽息切れが18.6%、
▽のどの痛みが13.9%、
▽頭痛が13.6%などとなっています。

また、感染すると平均で5日から6日後に症状が出るとしています。

感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状がみられない場合もあったということです。

呼吸困難などを伴う重症患者は全体の13.8%、呼吸器の不全や敗血症、多臓器不全など命に関わる重篤な症状の患者は6.1%だったということです。

重症や死亡のリスクが高いのは60歳を超えた人や高血圧や糖尿病、それに、循環器や、慢性の呼吸器の病気、がんなどの持病のある人だということです。

逆に子どもの感染例は少なく、症状も比較的軽いということで、19歳未満の感染者は全体の2.4%にとどまっていて、重症化する人はごくわずかだとしています。

子どもの感染について報告書では多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとしたうえで、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。

一方、5万5924人の感染者のうち死亡したのは2114人で、全体の致死率は3.8%でした。

致死率は高齢になるほど高く、80歳を超えた感染者の致死率は21.9%と5人に1人に上っています。

特に、合併症の患者は致死率が高く、
循環器の病気がある人は13.2%
糖尿病が9.2%
▽高血圧が8.4%、
▽慢性の呼吸器の病気が8.0%、
▽がんが7.6%となっています。

また、感染拡大が最も深刻な湖北省武漢は、致死率が5.8%なのに対し、その他の地域では、0.7%と大きな差が出ています。

さらに、ことし1月1日から10日までに発病した患者の致死率は17.3%となっているのに対し、2月1日以降に発病した患者の致死率は0.7%と低く、感染拡大に伴って医療水準が向上した結果だと分析しています。

 

子どもの感染については「子どもの感染例は少なく、症状も比較的軽いということで、19歳未満の感染者は全体の2.4%にとどまっていて、重症化する人はごくわず」「報告書では多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとしたうえで、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。」と書かれています。つまり、子どもから大人に感染することは確認されておらず、親から子どもに感染すると考えられるのです。この報告より、学校を一斉休校する根拠は全くないことになります。一斉休校の効果もほとんどないでしょう。

また、心配な致死率ですが、全体では3.8%と非常に高い印象がありますが、細かく見ると「感染拡大が最も深刻な湖北省武漢は、致死率が5.8%なのに対し、その他の地域では、0.7%と大きな差」が認められています。つまり、武漢市は医療が崩壊してしまったために致死率が非常に増加してしまいましたが、そうではない、通常の医療環境であれば0.7%程度の致死率であろうと考えられます。だから、医療が崩壊しないようにしなければなりません。そのためには軽症者は自宅で安静にし、心配というだけで病院受診はできる限り控えた方が良いと思います。病院内での感染リスクは自宅よりもずっと高いので、感染していない人が病院で感染してしまう可能性もあります。

また、「1月1日から10日までに発病した患者の致死率は17.3%となっているのに対し、2月1日以降に発病した患者の致死率は0.7%」と報告されています。これについて「感染拡大に伴って医療水準が向上した結果だ」と分析していますが、治療法が見つかったわけではないので、本当にそうなのかな?と思います。恐らくこの時期に武漢市の感染が爆発的に増え、医療が崩壊してパニックになっている時期と重なているのではないのかな?と思います。しかし、比較的冷静になった2月以降は致死率は0.7%です。

恐らくこのウイルスに致死率は0.7%程度なのでしょう。インフルエンザでは約0.1%と言われているので、それよりはちょっと高い致死率と思われます。しかし、ものすごく高い致死率でもありません。ただ、この報告のデータはあくまで患者が病院を受診して新型コロナウイルスであると診断された人のデータだと思います。受診していない非常に軽症、無症状の人がいるので、このウイルスの実際の致死率は0.3~0.5%程度なのではないでしょうか?そこまで恐れる数値ではありません。以前言われていた致死率2%程度、今回の報告での致死率3.8%というのは、武漢を含めての数値です。高齢者や糖尿病など免疫機能が落ちている人以外は、通常の医療水準であれば、もっと致死率は低いと考えます。

この記事には書かれていませんが報告書では死亡率の性差が書かれていました。女性と比較して男性で死亡率が高くなっています(4.7%対2.8%)。このウイルスにとって、性別で何が違うのでしょうか?

武漢とそれ以外の詳しいデータが知りたいですね。

韓国は9万件超の検査数で感染者は3,150人です。死者は17人。致死率0.54%です。かなりWHOの報告書と近い数値です。

日本で感染が確認された人は2月29日午後7時の時点で、日本で感染した人が227人、クルーズ船の乗客乗員が705人、チャーター機で帰国した人が14人の、合計946人となっています。このうち死亡したのは国内で感染した人が5人、クルーズ船の乗船者6人、合計11人となっています。クルーズ船などを除いて、日本で感染した人だけを考えると致死率0.7%で考えれば、現在5人死亡なので、感染者は714人となります。致死率0.3%だと感染者は1,667人です。227人とは大きく差があります。実際には数倍の感染者は日本にいるのでしょう。

基本的に自分の免疫でウイルスを抑え込む以外に方法はありません。免疫機能が落ちている人では新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザや普通の風邪を起こすウイルス(通常のコロナウイルスも普通の風邪ウイルスです)でも肺炎になることは珍しくはないと思います。基本的には風邪のウイルスなので、このウイルスの感染は、かなりの割合の人に感染が行き渡って、このウイルスに対する免疫が集団でできない限り収束は困難なのではないかと思います。

それにしてもどういった条件で、どのタイミングで学校を再開するのでしょうね?

 

3 thoughts on “WHO調査報告書 全国一斉休校に根拠なし

  1. コロナウイルスはまだ未知の事が多いと思います。従って、現時点では全てのデータが揃っているとは言えないと思います。然るに現在のデータだけで判断してしまうと、とんでもない事が起きる可能性があると、なぜ考えないのでしょうか。

    子供がかかっているデータがないから休校にする根拠がない、という論調が多いですが、データが出てからの対策では遅くなりませんか? 現に日本でも次第に子供の感染者が出て来ているのは、ニュースでも既知の事では無いでしょうか。

    この時点で、子供に対策を取らないと、もし今後子供の感染者が増えた場合に、国に対する非難の大合唱になる事は火を見るより明らかです。

    このように、国が早い対応をすれば「根拠のない対応をする」と非難し、逆に物事がはっきりしてから対応すれば「対応が遅すぎる」と国民は言いたい放題です。そのような、自分勝手で国の政治を理解出来ないような考えでは困ります。国民も自己都合ばかりで考えず、今後このような視点から国の判断を見て欲しいと考えます。

    1. 休校にすることで子供に対する対策になるとお考えなのでしょうか?

      ちょっとありえないでしょう。むしろ家で家族と一緒にいる方が感染するリスクは高まるのじゃないんでしょうか?

    2. 吉岡 斎さん、コメントありがとうございます。

      「現時点では全てのデータが揃っているとは言えないと思います。然るに現在のデータだけで判断してしまうと、とんでもない事が起きる可能性がある」というのと
      「データが出てからの対策では遅くなりませんか?」というのは矛盾が認められます。
      使えるデータは使えばいいと思います。

      もちろん休校はやっても良い対策だとは思います。人と人の接触をこの対策で減らせるのであれば、ですが。
      でも結局保育園も幼稚園もOKです。さらに学童保育はOKとしています。これでは場所によっては教室よりも人口密度が上がってしまいます。
      学校が休みだとして果たしてどれだけの子供たちが家の中でじっとしているでしょうかね?
      親は毎日仕事に行けば多くの人と接触しているので、子供だけ休みにしても効果は非常に少ないでしょう。
      また、報道にもあるように、看護師さんの休みが増えて、医療のマンパワーが減少する可能性もあります。
      仕事を休めない親の場合、やむをえず、子供に留守番をさせているかもしれません。
      海外では12未満や14歳未満を一人で留守番させること自体が違法です。子供を危険に晒す行為です。
      このようなことなどに同時に対策を打ち出すのであれば、まだ良いでしょう。
      でも、行き当たりばったりにか私には思えません。
      医療が崩壊しない程度に蔓延すること以外ないと思います。というよりすでに蔓延しています。

      様々な意見があっていいと思います。どちらにしても正解はわかりませんから。
      しかし、科学よりも政治が優先されてしまっては困りものです。

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