免疫機能は女性の方が高い

ソフトバンクグループが大規模な新型コロナウイルスの抗体検査の結果を発表しました。(ここ参照)検査キットの特異度は100%と言っているので、偽陽性はゼロと考えられますが、本当に特異度が100%かどうかはよくわかりません。もしも、100%ではなく、99.9%だとすると、40,000人の検査で有病率1%だとすると、10%くらいは偽陽性となってしまいます。本当のところはわかりませんが、結果を見てみましょう。

全体約44,000人の抗体陽性率は0.43%でした。このうちソフトバンク・関連企業の陽性率は0.15%、医療従事者5,850人については、抗体陽性率は1.79%でした。最も高い東京の医療機関でさえ3.1%でした。つまり、日本人のほとんどは抗体を持っていないと考えられます。しかし、行動制限が緩くなっているのに、感染は爆発しません。当然これから42万人は死にません(笑)。当初言われていた、集団免疫という仮説は全く役に立たないことがわかります。そうすると、日本人の60%とか70%が免疫を持たなくても十分に感染拡大が収束していっているのです。欧米でも60%なんていう数字には程遠いのに、行動制限が緩和されているのに収束に向かっています。集団免疫仮説は今回の感染で時代遅れの考えになりそうですね。

そうであれば、新型コロナウイルスがすでに弱毒化しているか、自然免疫だけで十分に対応できているかどちらかでしょう。世界の感染者(陽性者)はいまだ増加しているのに、死者数は減少しています。弱毒化しているか、現在感染拡大している国の高齢者が少ないか、BCG接種国で感染拡大しているかなどが考えられます。いずれにしても、今後は治療薬やワクチンの人体実験が難しくなりますね。アビガンも日本の感染者が激減しているので、治験が予定通りに終わらないようです。(ここ参照)

やっと初めてのワクチン候補が第3相試験の承認が得られたばかりです。(ここ参照)結局ほとんどのワクチンでは人への投与をする試験を始める前に感染が収束してしまって、開発ができないのではないかと思います。また、治療薬についても同様で、結局はどれが効いたのかわからないままでしょう。

早く社会をもとに戻してほしいですね。

さて、新型コロナウイルス感染では女性よりも男性の方が重症化リスクが高いと言われています。以前の記事「新型コロナウイルスと血栓症 その6 血栓症と男女差」では、血栓のできやすさから性別による重症化の差を説明しました。

今回は免疫機能の面から男女の差を見てみたいと思います。以前のSARSのときの香港の報告でも死亡する可能性は女性より男性で50%高くなっていました。

BCGワクチンにより全生存率が増加したり呼吸器感染症の低下を示す非特異的長期保護効果は、男の子より女の子の方が大きいことを示唆するいくつかの証拠があります。その他インフルエンザ、黄熱病、風疹、麻疹、おたふく風邪、単純ヘルペス2型、狂犬病ウイルス、天然痘およびデング熱ウイルスに対するワクチン接種後、保護する抗体反応はすべての年齢の男性に比べて女性で2倍高くなる可能性があります 。

(図はこの論文より)

上の図はワクチン接種後の自然免疫応答と獲得免疫応答の性差を示したものです。上段が女性、下段が男性です。細かい説明は省略しますが、女性の方が免疫の応答が大きいことが示されています。人体は病原体が体の中に入ってくると、まずは自然免疫で対応します。自然免疫は、感染した病原体を特異的に見分けて記憶することで、同じ病原体が再度入ってきたときに効果的に病原体を排除できる獲得免疫と違い、特定のグループの病原体に共通した分子や構造パターンを認識して攻撃します。

病原体のパターン認識受容体(PRR)の一つであるトール様受容体(TLR)への応答の違いも男女差があります。女性よりも男性で、末梢血単核球のトール様受容体(TLR)のTLR7に応答した抗ウイルスサイトカインのIFN-αの量が少なく、TLR8およびTLR9に応答した免疫抑制サイトカインIL10の量も多くなりました。(この論文参照)つまり、女性よりも男性の方がウイルスの侵入が起きたときの攻撃が弱く、免疫を抑制するサイトカインも増加するのです。女性の方が自然免疫の反応が大きいことになります。女性は感染に強いのです。

このことは、逆に女性の方がワクチンの副作用や自己免疫疾患が多くなることを意味します。

今回の新型コロナウイルス感染では自然免疫から獲得免疫の橋渡しがうまく行かなくなっている場合があるようです。そのことが重症化につながっていると考えられます。IFN-α/βというI型インターフェロンはウイルス感染後の自然免疫応答だけでなく獲得免疫の活性化にも重要な役割を果たします。

前回のSARSのコロナウイルスは、非リンパ系細胞におけるI型インターフェロンの誘導を効率的に抑制することが知られています。しかし、実験上では少量のIFN- αで刺激しておくと、このコロナウイルスによるI型インターフェロン抑制を防止できるという結果が出ています。(この論文参照)今回の新型コロナウイルスがI型インターフェロンの誘導をどこまで抑制しているかはわかりませんが、同じようなことが起きていて、自然免疫の機能低下や獲得免疫の遅れが起きているのかもしれません。

今回の新型コロナウイルスでは、前回のSARSのコロナウイルスを含む他の多くのヒト病原性ウイルスよりもI型インターフェロンに対する感受性が高いことが示唆されています。(この論文参照)つまり、今回の新型コロナウイルス感染の抑制にはI型インターフェロンが非常に大きな役割を担っていると考えられます。

そうすると、たとえ新型コロナウイルスがI型インターフェロンの誘導を抑制する効果を持っていたとしても、前回のコロナウイルスほどではなく、致死率が低いのかもしれません。そして、I型インターフェロンをはじめとする自然免疫の力のちょっとした違いが重症化するかどうかを分けている可能性もあります。

そうだとすると、女性では男性よりもIFN-αが多くなり、BCGワクチンによる自然免疫の訓練が効果を上げ、新型コロナの重症化を防げていると考えられます。さらに高齢者、糖尿病や肥満では免疫力低下を起こすので、自然免疫の防御力が弱まり、さらに獲得免疫の遅れが重症化につながると考えられます。子供ではもしかすると胸腺が大きな力を発揮しているかもしれません。

いずれにしても、免疫力を下げないようにしていれば、今回の新型コロナウイルスは全く怖いものではないでしょう。それには糖質制限でしょう。

「Sex-based differences in immune function and responses to vaccination」

「免疫機能の性別による違いとワクチン接種に対する反応」(原文はここ

コメント

  1. NANA より:

    > 当然これから42万人は死にません(笑)。

    さすがに、8割おじさんこと西浦氏の「42万人死亡」は、科学から逸脱した言説と言わざるを得ないですね。

    Dr.Shimizuさんは、日本のいわゆるコロナ禍は過大に評価されている、見積もられているとの立場だと思いますが、私もその見方には基本的に同意します。

    COVID-19の人口あたりの死亡率が高い欧米の国々と比べて二桁も低い日本の感染実態を説明する原因を、Shimizuさんが仰るように、「新型コロナウイルスがすでに弱毒化しているか、自然免疫だけで十分に対応できているかどちらか」だとすれば、今後何か特別なことでも起きない限り、「第二波」の到来はないという理屈になりますよね。

    一方、「第二波はほぼ必ずやって来る」という予測が多くの専門家の間で共有され、警告も発せられているかと思います。また、そういった認識が社会でも共有されつつあるかと思います。

    それに対し、Shimizuさんは「第二波の到来」説について、どのような反論や意見を展開されるかお聞きしたいですね。新しいブログエントリーを期待するところです。

    • Dr.Shimizu より:

      NANAさん、コメントありがとうございます。

      第2波とは何か?という定義がないのでなかなか難しいですが、私はブログでは現在が第2波だと思っていて、
      昨年末から2月下旬から3月上旬までの武漢からの新型コロナが第1波、3月中旬以降の欧米の新型コロナが第2波と考えています。
      それはそれとして、次の波が来るのか?インフルエンザは毎年流行していますが、第〇波とは言いません。
      日本人が感染に慣れてしまえば、第〇波と数えなくなるでしょう。
      気にするのであれば第2波は来る可能性は「ある」と思いますが、必ず?とは思っていません。SARSと同じ運命になる可能性もあると思っています。
      しかし、コロナウイルスはなくなるわけではないので、今後も変異したコロナウイルスが何度もやってくるでしょう。
      世界中で第2波が来たとしても、今回のように大量の死者が出るとは思っていません。亡くなる人の多くは今回で亡くなってしまっていますし、
      超過死亡が大きく増えた国でも、長期的に見れば相殺されると思います。
      もちろん日本でも今回よりも死者数は小規模だと思います。

      専門家の予測は最悪を想定して話をする傾向にあります。それでいて、それよりも良い結果になれば、「悪いことにならなくて良かったね」
      と逃げることができます。当然医師の医療行為の説明もそのようになっています。訴訟リスクもあるからです。
      「第2波は来ない」と言って第2波が来た場合その専門家は無能扱いでたたかれますが、「第2波は必ず来る」と言って来なかった場合には、「良かったね」で終わることも多いです。
      必要なのはどのような予測にせよ、検証することでしょう。42万人死亡といった予測がどうして間違っていたのかを、ちゃんと検証しなければなりません。
      しかし、その専門家はいまだに自身の説の間違いをちゃんと公表していません。これだけ日本に大きな影響を与えた仮説の間違いの理由は
      ちゃんと説明すべきだと思います。

      またデータの透明性が日本はまだまだでしょう。情報は遅く、しかもわかりにくい。これでは日本人が自分で判断することが難しくなります。
      その方が国としては都合が良いのでしょうね。