朝食時の週12個の卵はLDLコレステロールを増加させず、収縮期血圧の低下に関連

卵は本当にコレステロール値を増加させて、心血管疾患のリスクとなるのでしょうか?最近の、6大陸、50カ国にまたがる約17万7000人を対象とした3つの調査を統合的に分析した研究でも、卵の摂取量と心血管疾患の発症率や死亡率に関連は認められませんでした。(この論文参照)

以前の記事「1日3個の卵は健康的であるかもしれない」でも書いたように、卵は非常に健康的だと思います。

今回の研究では週に12個の卵を摂取しています。ただし糖質制限ではありません。18~74歳の男女でBMI25以上(アジア系では23以上)で、メタボリックシンドロームおよび/または糖尿病予備軍の基準を満たした30人が対象です。4週間の間、朝食に卵あり群と卵なし群に分かれました。卵あり群では1日2個、週に6日、計12個/週の卵を摂取しました。

卵なし群では、卵を使わずにエネルギー量を一致させた高炭水化物食の朝食を摂りました。下の表は毎日のエネルギーの中央値です。(表は原文より改変)

パラメータ ベースライン 卵あり 卵なし
エネルギー、kcal /日 2111 2145 1996
炭水化物、エネルギー% 44.8 46.6 48.7
砂糖、エネルギー% 14.7 16.3 17.1
タンパク質、エネルギー% 18.0 18.3 17.4
総脂肪、%エネルギー 38.2 35.0 34.8
飽和脂肪酸、エネルギーの% 11.9 11.8 11.2
不飽和脂肪酸、エネルギーの% 25.5 23.8 23.6
食物繊維、g /日 17.0 18.4 16.5
コレステロール、mg /日 318 550 190
ナトリウム、mg /日 3077 3827 3369
カルシウム、mg /日 596 600 739

上の表は毎日のエネルギーの中央値です。当然卵あり群ではコレステロール量が非常に高くなっています。そして、研究に使う食品の違いにより、卵あり群ではナトリウム量が有意に高くなっています。

 

パラメータ ベースライン 卵あり 卵なし 卵あり、%∆ 卵なし、%∆
インスリン感受性指数 8.9(2.7) 6.8(0.9) 5.4(0.9) 15.0(14.3) −4.1(16.8)
インスリン曲線下面積0〜10分 406(265、647) 416(220、720) 499(299、679) −12.1(−37.7、25.2) 5.4(-12.5、32.9)
インスリン曲線下面積10〜40分 1010(591、1868) 932(728、1642) 1046(620、2160) 2.4(-15.2、20.2) 1.9(-24.0、18.0)
インスリン曲線下面積0〜40分 1409(928、2736) 1333(851、2740) 1582(962、2951) 1.4(-18.9、14.1) −0.6(−23.6、17.7)
空腹時血糖mg/dL 90.3(2.7) 90.8(2.0) 92.3(1.9) 2.3(2.8) 4.1(3.0)
空腹時インスリンmU/L 9.5(6.1、12.1) 8.2(5.9、14.5) 9.0(6.1、15.3) −0.6(−23.7、10.7) 8.6(-14.0、28.1)
HOMA2%-B(β細胞機能) 101(83.1、166) 89.5(66.8、127) 104(72.7、170) −2.0(−23.3、7.4) −0.6(−15.6、15.3)
HOMA2%-S(インスリン感受性) 86.8(66.4、122) 95.0(55.0、127) 85.3(49.5、123) 1.9(−9.0、29.1) −8.5(−25.2、15.0)
HOMA-IR 2.5(0.3) 2.3(0.3) 2.7(0.3) 1.4(9.9) 24.4(13.1)

上の図は平均値とベースラインからの変化率を示しています。卵なし群では卵あり群と比較してHOMA-IRが大幅に増加しました。それ以外では有意な変化はありませんでした。

パラメータ ベースライン 卵あり 卵なし 卵あり、%∆ 卵なし、%∆
総コレステロールmg/dL 195(8.1) 194(9.3) 189(7.6) −0.8(1.4) −2.4(1.6)
LDL-C mg/dL 119(84.5、139) 113(86.5、141) 106(88.5、132) −2.9(−6.0、6.2) −6.0(−11.7、2.9)*
HDL-C mg/dL 54.7(2.3) 54.1(2.4) 54.6(2.7) −0.6(1.7) −0.1(1.9)
非HDL-C mg/dL 141(7.5) 140(8.7) 135(7.1) −1.1(1.9) −3.4(1.9)
中性脂肪mg/dL 133(72.0、150) 111(64.0、176) 117(64.0、179) 0.7(-12.7、17.9) −0.6(−12.4、10.1)
総コレステロール:HDL-C 3.7(0.2) 3.7(0.2) 3.6(0.2) 0.04(1.7) −1.8(1.7)
hs-CRP mg/L 1.4(0.8、3.9) 2.0(0.7、3.5) 1.5(0.8、3.9) -11.5(-38.1、17.4) 0.0(-28.2、31.3)
収縮期血圧 mmHg 127(2.1) 123(2.2) 126(2.5) −2.7(1.1)* 0.0(1.4)
拡張期血圧 mmHg 81(1.9) 79(1.3) 79(1.4) −1.9(1.7) −0.7(2.1)

卵なし群のLDLコレステロールはベースラインの119mg/dLから6.0%減少しました。卵あり群では2.9%の減少にとどまり、卵なし群よりも減少率が低下しました。収縮期血圧は、あり群で127mmHgのベースライン値からさらに2.7%低下し、卵なし群では変化がありませんでした。

通常の朝食を卵2個を含む朝食に変更すると、大量のコレステロールを摂取しているにも関わらず、ベースラインよりもLDLコレステロール値は低下しました。ただ、卵を含まずその分を炭水化物に変更した朝食の方がLDLコレステロールはもっと低下しました。しかし、インスリン抵抗性を表すHOMA-IRは卵なし群の方が増加しました。朝食に糖質を多く摂取したからであると思われます。もちろん、他のインスリン感受性の指標は有意差が無かったので、インスリン抵抗性の変化は大きな変化ではないと思われます。

いずれにしても、1週間に卵を12個食べても、LDLコレステロールは増加せず、むしろ低下していました。そして、ナトリウム量が卵あり群で増加しているにも関わらず、収縮期血圧も低下していました。

卵の摂取量と心血管疾患のリスクについては、研究により相反する結果が出ています。ほぼ全てのそれらの研究は糖質過剰摂取状態での研究でしかありません。心血管疾患を患う多くの人はインスリン抵抗性を持っています。そうであるとすると、インスリン抵抗性の有無により卵との関連を調べないと意味がないでしょう。

心血管疾患は全身のインスリン抵抗性が無くても、血管局所のインスリン抵抗性となっていると考えられています。それについてはいつか機会があれば記事にしたいと思います。

いずれにしても重要なことはインスリン抵抗性を起こさないために高インスリン血症を防ぐことでしょう。それには糖質制限であり、卵制限ではありません。

糖質過剰症候群

「Effects of substituting eggs for high-carbohydrate breakfast foods on the cardiometabolic risk-factor profile in adults at risk for type 2 diabetes mellitus」

「2型糖尿病のリスクがある成人の心臓代謝リスクファクタープロファイルに及ぼす高炭水化物を卵に代替えした朝食の影響」(原文はここ

2 thoughts on “朝食時の週12個の卵はLDLコレステロールを増加させず、収縮期血圧の低下に関連

  1. ここ1年ぐらい、朝食ではないですけど、昼食に毎日卵を6個食べてます。
    週42個ですね。
    LDLは、1年前が99だったのが57になりました。
    低すぎw

    そういえば糖質制限5年目ですが、最初の1年目はLDLはめちゃくちゃ上がりましたね。
    江部先生のブログを読んでも良くある事らしいですが、そこから毎年少しずつ下がって、今では健康診断で、経過観察と書かれるぐらい低くなりました。
    血管の修復が終わったから、身体がLDLを作らなくなったんだろうなーと思い、無視してます。

    1. お!さん、コメントありがとうございます。

      LDLは糖質制限を始めて上昇後しばらくすると低下してくる人もいますし、上昇したままの人も結構な割合で存在します。
      この個人差がなぜ起きるのか今のところわかりません。恐らく血管の修復とは無関係だと思います。

お! へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です