新型コロナウイルス感染で、日本では抗体検査をしても、陽性者は1%にも満たない状態です。もちろん検査の精度の問題もあるかもしれません。
一部の専門家は、日本では思ったほど感染が広がっていなくて、まだまだ感染拡大の危険性がある、第2波が来る、と煽っています。
ウイルス感染には抗体産生(液性免疫)が当然のように考えられてきて、集団免疫仮説も生まれたと思います。
生ワクチンであるBCGは、Tリンパ球、マクロファージなどによる免疫、すなわち細胞性免疫が関わって免疫ができます。BCGワクチンを接種するとマクロファージに食べられて、その抗原がTリンパ球に伝えられて、感作されます。そうすると本当の結核菌が侵入してきたときにそのTリンパ球が働きマクロファージを活性化して、すぐに撃退できるのです。
しかし、新型コロナウイルスに関して、最近の論文で、回復した人の抗体レベルは有症状と無症状両方の患者で2~3カ月後に急激に下がることが確認されました。(この記事参照。論文はここ)
さらに、感染後3~4週間でIgM陽性の人の割合は、有症状患者グループでは78.4%だったのに対し、無症状グループでは62.2%にとどまっていたことや、8週間後では、血液中に存在する抗体の減少が認められた人の割合は、有症状患者グループでは62.2%、無症状グループは81.1%でした。
ここで、抗体に偏った免疫の考え方が問題になると考えられます。まずは自然免疫が重要で、多くの人はそれだけで撃退が十分で、抗体産生がそもそも必要なかった可能性があります。さらに、獲得免疫のうち、抗体を作り出す液性免疫ではなく、細胞性免疫が大きなカギを握っている可能性もあります。
まだプレプリントですが、今回の研究では細胞性免疫の重要性について示唆しています。(図は原文より)
上の図はそれぞれの家庭内の最初の新型コロナウイルス患者(Pが付いてる人)とその家庭内での接触者(Cが付いている人)の検査結果です。PCR検査は世帯の4~7までで実施され、1~3では行われていません。実施した世帯の最初の患者はPCR陽性でしたが、その家族はみんな陰性でした。
すべての家族は厳しく手を洗い、1人の家族(世帯2)を除くすべての家族は、家族との抱擁とキスを避けました。 2人の最初の患者(P4とP6)だけが、別々に食事するか、症状の発現からそれぞれ1日と3日後にマスクを着用しました。 8人の接触者のうち、2人(C3およびC6)には症状がなく、4人には発熱があり、3人には咳があり、4人には頭痛があり、1人には月経がありました。症状の持続期間は1〜11日(中央値7日)でした。
3つの異なる抗体検査で、家庭内の最初の患者は全て陽性でした。しかし、接触者のすべては陰性でした。
少なくとも4つ、最大8つの新型コロナウイルス抗原に対して新型コロナウイルス特異的IFNγ反応、つまり、新型コロナウイルス特異的T細胞応答が起きているかどうかを検査しました。この検査が陽性の場合も以前の新型コロナウイルス感染を示唆しています。
そうすると、家庭内の最初の患者は全て新型コロナウイルス特異的T細胞応答が陽性でした。接触者では8人中6人で陽性でした。つまり、抗体が陰性でも新型コロナウイルス特異的T細胞応答の人がかなりの割合でいるということになります。さらにこの検査が症状が発現してから最長で80日後に行われていて、その時まで抗ウイルスT細胞が維持されることを示唆しています。T細胞応答は、抗体よりも新型コロナウイルス暴露のより敏感な指標である可能性があります。
BCGが結核を予防するように、ウイルスでも細胞性免疫、T細胞の役割が非常に大きい可能性があります。そして、その細胞性免疫が十分に働けば、症状が無かったり、軽症で済むのかもしれません。そうすると抗体産生すら必要なくなり、ウイルスに打ち勝つことができると思われます。
この結果は抗体の検出のみに依存するこれまでの疫学的データがウイルスへの以前の暴露をかなり過小評価している可能性があることを示しています。
以前の記事「新型コロナウイルスと普通の風邪のコロナウイルスの免疫の交差反応性」で書いたように、交差性反応性免疫が起きているとも考えられています。Cellの論文では抗体との相関についても書かれていましたが、抗体とは関係なく、ウイルスを排除しているかもしれません。
今回の新型コロナウイルスでは抗体検査はもう必要ないでしょう。
T細胞が重要だとすると、胸腺の重要性も増してくるかもしれません。肥満では胸腺の老化が促進されると考えられています。(ここ参照)糖尿病はほとんど全ての免疫機能が低下していると考えられています。
まずは免疫力。糖質制限で免疫機能を維持しましょう。
「Intrafamilial Exposure to SARS-CoV-2 Induces Cellular Immune Response without Seroconversion」
「SARS-CoV-2への家族内曝露はセロコンバージョンなしで細胞性免疫応答を誘導する」(原文はここ)