アルコールを摂取するとその分解の過程でアセトアルデヒドという有害物質が産生されます。このアセトアルデヒドには発がん性があると考えられています。
人間の体には様々な細菌が存在し、その場所に適した細菌叢を形成しています。その細菌叢のバランスは非常に重要だと考えられていて、そのバランスが崩れることにより様々な病気になることがあります。
胃の中は胃酸があるので、細菌はいないのでは?と思うかもしれませんが、もちろん胃の中にもたくさんの細菌がいて細菌叢を形成しています。胃の中はpHが非常に低い(酸性)ことが当たり前です。しかし、PPI(プロトンポンプ阻害薬)を使用すると胃酸分泌が強く抑制され、pHは非常に高くなります。そうすると胃内細菌叢のバランスが崩れてしまうことは容易に想像できます。
今回の研究では、PPIを飲んで胃酸分泌を抑制し、アルコールを飲むことにより、胃の中のアセトアルデヒドがどうなるかを調べています。若い健康的な男性にエタノール0.6g/kg体重を摂取してもらい、PPIを飲むのと飲まないのでどう違うかを測定しました。(図は原文より)
上の図は上が胃内のpH、下がアセトアルデヒド濃度です。どちらも図の左側がPPIを飲む前、右側がPPIを飲んだ後です。一目瞭然で、PPIによりpHは増加(平均pH1.3±0.06から6.1±0.5に上昇)、アセトアルデヒドも約2.5倍増加しています。
PPIは胃のpHを上げ、好気性細菌の胃内異常増殖とエタノールからの微生物を媒介したアセトアルデヒド産生を引き起こします。アセトアルデヒドは局所発がん物質です。
以前の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期使用と胃がんのリスク」などで書いたように、PPIは胃がんのリスクを増加させます。その一部にはアルコール摂取も関連している可能性があります。
ただでさえPPIはがんを増加させる可能性があるので、PPIを使用している人では禁酒が必要でしょう。その前に糖質制限をしてPPIをやめましょう。
「Hypochlorhydria induced by a proton pump inhibitor leads to intragastric microbial production of acetaldehyde from ethanol」
「プロトンポンプ阻害剤によって誘発される低胃酸症は、エタノールからアセトアルデヒドの胃内微生物生産につながる」(原文はここ)