高脂肪食はすい臓や胆嚢に負担になるか? その2

先日の「その1」では高脂肪食がすい臓の負担増にはならないことを書きました。

今回は胆嚢です。胆嚢の負担が増加するとすれば、胆石について考えるのが良いと思います。

そういえば、前回のその1の急性膵炎の原因としてもっとも多いのも胆石でした。胆石はコレステロール胆石が最も多いことから、予防には脂質を食べ過ぎないことを専門医は推奨しています。しかし、以前の記事「胆石も糖質過剰症候群である その1」「その2」で書いたように、胆石は糖質過剰症候群です。つまり、コレステロール胆石が多いからと言って、原因はコレステロールではなく、糖質過剰と考えられるのです。

今回の研究では、糖質(炭水化物)摂取量と症状のある胆石のリスクを分析しています。ただし、栄養の摂取量は食事アンケートによるものなので信頼性は低いかもしれません。(表は原文より改変)

炭水化物摂取の五分位数
1(最低)245(最高)
五分位の平均摂取量(g/日)176.6213.0234.2255.8295.2
BMI25.4(5.1)25.2(5.1)24.9(4.8)24.5(4.8)24.2(4.6)
身体活動(MET)16.5(20.7)18.4(23.6)20.1(24.8)21.1(26.6)24.6(28.9)
総エネルギー(kcal/日)1962(631)2025(611)2031(621)1992(607)1943(617)
タンパク質(g/日)99.4(19.0)95.3(15.0)92.6(14.2)89.5(13.9)83.6(14.9)
アルコール(g/日)22.8(22.0)13.6(15.3)9.7(11.7)7.0(9.2)4.6(7.2)
コレステロール(mg/日)373(133)331(96)305(87)276(75)221(75)
飽和脂肪(g/日)28.8(6.4)26.8(5.1)25.0(4.5)22.9(4.3)18.5(4.8)
多価不飽和脂肪(g/日)14.4(4.3)13.9(3.3)13.5(3.0)12.8(2.8)11.4(3.0)
一価不飽和脂肪(g/日)32.0(6.1)29.7(4.6)27.8(4.1)25.6(3.9)20.9(4.6)
トランス脂肪(g/日)3.0(1.1)3.1(1.1)3.0(1.1)2.8(1.1)2.2(1.1)
食物繊維(g/日)16.1(4.4)18.8(4.6)20.5(5.0)22.3(5.7)27.0(9.2)
現在の喫煙者(%)16.311.38.16.54.4
上の表は炭水化物摂取量によって5つの分けたときのそれぞれのグループの特徴です。炭水化物の摂取量が高いほど、脂質の摂取量は当然低く、コレステロール摂取量も低く、食物繊維は多く、喫煙率も低く、活動量も高いなど、比較するグループの特徴が異なりました。しかし、炭水化物の摂取量が最も多いグループでは、一般的な健康に関連する指標が高いという特徴で下。それにもかかわらず、胆石のリスクはというと?
炭水化物の五分位数
1(最低)245(最高)
モデル1:年齢調整済み1.001.13(0.97、1.32)1.29(1.11、1.50)1.17(1.01、1.37)1.28(1.10、1.48)
モデル2:多変量1.001.19(1.01、1.41)1.41(1.18、1.69)1.35(1.10、1.65)1.59(1.25、2.02)

上の表は炭水化物摂取量による、胆石のリスク比です。炭水化物の摂取量が多いほど胆石のリスクは高くなっていました。

それぞれの糖質の五分位数
1(最低)245(最高)
デンプン
    モデル1:年齢調整済み1.001.17(1.01、1.36)1.16(1.00、1.35)1.12(0.96、1.31)1.24(1.07、1.45)
    モデル2:多変量1.001.19(1.02、1.39)1.20(1.02、1.41)1.20(1.01、1.42)1.43(1.20、1.72)
ショ糖
    モデル1:年齢調整済み1.001.12(0.96、1.30)1.18(1.01、1.38)1.23(1.06、1.44)1.39(1.20、1.61)
    モデル2:多変量1.001.09(0.92、1.28)1.14(0.96、1.35)1.16(0.98、1.38)1.28(1.07、1.54)
果糖
    モデル1:年齢調整済み1.001.09(0.94、1.27)1.05(0.90、1.22)1.04(0.90、1.21)1.23(1.06、1.42)
    モデル2:多変量1.001.12(0.96、1.31)1.09(0.92、1.28)1.09(0.92、1.30)1.30(1.08、1.57)
乳糖
    モデル1:年齢調整済み1.001.22(1.05、1.42)1.22(1.05、1.42)1.28(1.10、1.48)1.13(0.97、1.32)
    モデル2:多変量1.001.18(1.01、1.37)1.19(1.01、1.38)1.24(1.06、1.44)1.10(0.93、1.29)

デンプン、ショ糖、果糖はそれぞれリスクと有意な正の関係がありましたが、乳糖には関連を認めませんでした。

高炭水化物(高糖質)で低脂質の食事をしているほど胆石のリスクが高くなるという結果でした。

さらに別の研究では、血液データと胆石のリスクとの関連を分析しています。(図は原文より)

上の図は総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値と胆石になる可能性を男女別に表しています。そうすると、総コレステロールとHDLコレステロールが高いほど胆石になる可能性は低下しています。中性脂肪に関しては女性で中性脂肪が高いほど胆石になる可能性が増加しています。つまり、HDLコレステロールが高く中性脂肪が低い方が胆石になりにくいのです。糖質制限はまさしく、HDLが増加し、中性脂肪が低下します。

コレステロールとの胆石のリスクの関係は上の図のようです。総コレステロール値が低いほど胆石のリスクが高まります。

上の図はBMIとの関連ですが、BMIが高くなるほど胆石のリスクは高くなります。低糖質高脂質の糖質制限食では通常BMIは低下します。

また、様々な疾患と胆石になる可能性についての分析では、糖尿病だと男性で1.5倍以上、女性で1.9倍以上胆石症になる可能性が高くなり、心筋梗塞または狭心症だと男性では約2倍、女性では1.7倍以上胆石症になる可能性が高くなっていました。糖尿病や虚血性心疾患が糖質過剰症候群だということを考えれば、胆石は糖質過剰摂取で起きると考えられます。

つまり、どうやら、胆嚢の負担を増加させるのは高脂質食ではなく糖質過剰摂取だということになります。

安心して糖質制限をして良いと思います。

「Dietary carbohydrates and glycaemic load and the incidence of symptomatic gall stone disease in men」

「男性における食事性炭水化物と血糖負荷および症候性胆石症の発生率」(原文はここ

「Factors associated with gallstone disease in the MICOL experience. Multicenter Italian Study on Epidemiology of Cholelithiasis」

「MICOLの経験における胆石症に関連する要因。胆石症の疫学に関するイタリアの多施設共同研究」(原文はここ

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コメント

  1. じょん より:

    清水先生、ありがとうございます。

    胆嚢への負担は、胆石を指標に見ればいいのですね。
    医学の世界でも、これまでは胆石は脂肪摂取量が増えることが原因と言われて来ましたが、実際にはそうではない、いかに通説がデータに基づくものではないことがわかりました。
    やはり糖質過剰こそがすい臓、胆のうの負担になるのですね。
    安心して糖質制限を続けることができます。

    • Dr.Shimizu より:

      じょんさん、コメントありがとうございます。

      記事がお答えになっていたのであれば幸いです。