朝食を抜くと血糖値が上昇しやすくなるという方がいます。朝食を摂った場合に昼食後の血糖値の上昇が抑えられ、朝食を抜くと血糖値スパイクが大きくなるというもので、一般的にはセカンドミール効果と言われています。
朝食を食べることを推奨する人の根拠となる代表的な論文をご紹介します。対象は過体重の2型糖尿病患者22人(平均年齢56.9歳(30~70歳)、罹病期間8.4年、BMI28.2、HbA1c7.7%)です。朝食ありの1日3食群(YesB)、朝食抜きの1日2食群(NoB)で比較しました。1食あたり約700kcalの食事をしてもらいます。脂肪20%、炭水化物54%、タンパク質26%、食物繊維7%という比率ですので、1食あたりの糖質量は約95gにもなります。私としてはこの時点で意味のない研究と思ってしまいますが、見ていきましょう。(図は原文より)
上の図のAは血糖値、Bはインスリン値、CはCペプチド、DはGLP-1、Eは遊離脂肪酸、Fはグルカゴンです。
Aの血糖値では、●のYesB群(朝食あり)で朝食後当然血糖値スパイクを起こしています。しかし、昼食後のスパイクはちょっと小さくなっています。夕食後ではまた少し高くなっています。具体的には朝食後のピークは218、昼食後192、夕食後235です。
一方○のNoB群(朝食抜き)では朝食はないのですが、その時の血糖値は124、つまり空腹時で124もあるのです。そして昼食後268、夕食後294です。
朝食ありの場合はファーストミールは朝食で、その時の血糖値は十分に高くなっています。朝食抜きのファーストミールは昼食なので、朝食ありの昼食後と比較するのはそれほど意味があるのかどうかはわかりません。しかし、朝食抜きのセカンドミールである夕食後の血糖値はセカンドミール効果はありませんでした。セカンドミール効果があるのであればサードミール効果があっても良さそうですが、朝食ありの夕食後の血糖値は昼食よりも十分に大きいスパイクを形成しています。
次にBのインスリンを見てみましょう。朝食時では当然、両群で大きな差がありますが、注目は昼食時と夕食時です。どちらも朝食ありの方がインスリンが多くなっています。食後3時間の曲線下面積では朝食時68.6%、昼食時17%、夕食時7.9%と、全ての食事で朝食あり群の方がインスリン分泌が多く出ているです。Cペプチド、GLP-1も同様です。インスリン分泌のピークは朝食なしの方が30分ほど遅くなっています。
つまり、YesBの朝食あり群では、昼食と夕食で朝食なし群と比較して血糖値の上昇はそこそこ抑えられているけれど、インスリンは1日を通して、朝食なし群よりも大量に分泌されていることになります。逆に言えば朝食を抜くとインスリン分泌能がやや抑制されるとも言えます。
絶食が長いとインスリン抵抗性は高くなります。つまり朝食時は寝てる間は絶食時間が長いですからインスリン抵抗性が高くなります。さらに朝はコルチゾールが高くなりますので、さらにインスリン抵抗性が高くなります。
朝食を抜くと、さらに絶食時間は延びるので、高レベルの遊離脂肪酸が保持された状態です。そしてさらにこの研究では朝食を抜いただけの実験なので、1日1400kcalと、かなりのカロリー制限食を食べていることになります。そうすれば絶食時間の遊離脂肪酸がさらに増加し、インスリン抵抗性を高くする可能性があります。
セカンドミール効果が本当にあるかどうかは別として、その効果を得るためだけに朝食を摂ることを勧めるのは意味がありません。実際に今回の朝食あり群では朝食後の血糖値スパイクが起きていますし、その後も朝食なし群よりは少ないとしても、食事のたびに大きな血糖値スパイクが起きています。朝のスパイクは無視して昼食や夕食だけのスパイクの大きさを比較することは問題でしょう。そしてさらに、朝食なし群よりもインスリン分泌がかなり多い状態です。高血糖を少し抑えるだけのために、高インスリン血症を招いてしまうのです。
必要なのは血糖値スパイク、高インスリン血症を回避することです。朝食を食べるかどうかではなく、何を食べるかでしょう。朝食に糖質を摂らずに、卵などを食べれば、全く問題ないでしょう。糖質を摂らないことの方が重要です。
朝食を食べようが食べまいが、糖質を摂らなければ、セカンドミール効果など考える必要はありません。
朝は最もインスリン抵抗性が高い時間帯です。朝食に糖質を摂ることは避けるべきだと思います。
糖質制限
「Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial」
「正午までの絶食は、2型糖尿病患者の昼食と夕食後の食後高血糖の増加とインスリン反応の障害を引き起こす:無作為化臨床試験」(原文はここ)
「セカンドミール効果」意識高い系の管理栄養士が好みそうな用語ですね。
少し考えれば意味のない用語・習慣が、健康業界(健康的な情報発信で営業している分野)には多いです。
余程注意しないと惑わされてしまう、お金や時間、それこそ健康を犠牲にさせられてしまいます。判断力の衰えた高齢者などイチコロなのではないでしょうか?
安倍総理、是非、糖質制限にも取り組んで、健康維持していただきたいです。
(もしかして、もう実践されているでしょうか?)
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
糖質過剰摂取が前提で栄養士は話をするので、そもそもが違います。
糖質制限をすればセカンドミールもファーストミールも関係ありません。