すい臓がんの初期症状としての糖尿病

糖尿病には1型、2型があるのはご存じだと思います。アルツハイマー病を3型と呼ぶ人もいます。現在では、すい臓がんによって引き起こされる新規発症糖尿病を「3c型糖尿病」と呼んでいます。「3c型糖尿病」は膵原性糖尿病とも呼ばれ、慢性膵炎やがんのような悪性疾患などのすい臓の障害が原因で引き起こされる糖尿病と定義されているようです。

その症状は、2型糖尿病とは異なります。すい臓がんによる3c型糖尿病は、2型糖尿病で見られる体重増加の代わりに体重減少が起きる可能性がかなり高くなります。このことがしばしば見落とされ、2型糖尿病と誤って診断されている場合があるでしょう。

あるデータでは下の図に示すように、糖尿病の10%近くを3c型糖尿病が占めています。(図はここより)

上の図のように、もちろん糖尿病は2型が最も多いのですが、11人に1人は3c型という計算になります。その中でもすい臓がんによるものはさらにその8%なので、100人に1人もいないことにはなります。

しかし、すい臓がんは初期の症状がほとんどなく、見つかったときには非常に進行していることが多く、死亡率が非常に高いがんです。すい臓がんの人の50%前後で糖尿病の基準を満たしているとも言われているので、すい臓がんが先か、糖尿病が先か、何とも言えない場合もあるでしょう。

ある研究では、新規に発症した糖尿病の最初の数年のすい臓がんの危険性が最も高いことを示しています。2型糖尿病と診断された人では糖尿病のない人と比較して、2.5倍もすい臓がんになる可能性が高くなります。しかし、糖尿病の診断から2年以内では、約6.4倍も高く、インスリン使用者は約3.7倍も高くなっています。(図は原文より)

上の図は横軸が糖尿病診断からの年数です。縦軸がすい臓がんになる可能性です。かなりの長期の糖尿病では、すい臓がんのリスクはほとんどないようです。

つまり、2型糖尿病と診断された時点で、それが本当に2型なのか、3c型、つまりすい臓がんの初期症状なのかは評価が必要になるでしょう。

そこで一つの指標となるのが体重減少です。

最近報告された研究では体重減少が大きいほどすい臓がんの可能性が高くなるようです。この研究では糖尿病診断から4年以内を新規に発症した糖尿病と考えています。(図は原文より)

上の図はすい臓がんの発生率です。発生率は、4つのグループの人の10万人年あたりのケースとして表示されています。4つのグループはグラフの左(濃いバー)から非糖尿病+体重減少なし、非糖尿病+8ポンド(約3.6kg)以上体重減少、新規発症糖尿病+体重減少なし、新規発症糖尿病+8ポンド(約3.6kg)以上体重減少です。

Aのグラフは現在の年齢により分類したもの、Bのグラフは2年前のBMIで分類したもの、Cは身体活動や食事によって減った体重により分類したものです。

そうすると、やはり年齢とともにすい臓がんのリスクは高くなりますが、60歳未満であっても新規の発症の糖尿病+体重減少があるとかなりリスクがあるようです。2年前のBMIでみると、25未満の人の方が新規発症糖尿病+体重減少ですい臓がんのリスクが大きく増加しています。身体活動と食事で体重がちゃんと減った人の方が新規発症糖尿病+体重減少でのリスクは低く、身体活動と食事の効果が少なかった人の方がすい臓がんのリスクは高くなるようです。

糖尿病のすい臓がんのリスク比は、新規発症した糖尿病では2.97、長期糖尿病では2.16でした。糖尿病の期間でさらに層別化すると、4〜10年で2.25、10年以上では2.07でした。

糖尿病もなく体重減少もない人とすい臓がんのリスクを比較すると、新規発症糖尿病+体重減少なしでは2.29、新規発症糖尿病+1~8ポンドの体重減少で3.61、新規発症糖尿病+8ポンド以上の体重減少で6.75でした。

つまり、体重減少を伴う新規発症した糖尿病は、すい臓がんのリスクの大幅な増加と関係しています。診断以前よりも体重が減少している人で糖尿病になったばかりの人は注意していください。

以前の記事「空腹時高血糖はすい臓がんの発生率を増加させる」で書いたように、空腹時高血糖はすい臓がんの発生率を増加させます。しかし、空腹時高血糖がすでにすい臓がんの症状である可能性もあります。糖質過剰摂取で高血糖が続くことによりすい臓がんになることもあれば、すい臓がんの症状が高血糖や糖尿病として現れる場合もあります。いずれにしても糖質制限をすることはどちらのパターンもリスクを軽減すると思われます。

がんは糖質過剰症候群なのですから。

 

「Deciphering the complex interplay between pancreatic cancer, diabetes mellitus subtypes and obesity/BMI through causal inference and mediation analyses」

「因果推論とメディエーション分析によるすい臓がん、糖尿病サブタイプ、肥満/ BMI間の複雑な相互作用の解読」(原文はここ

「Diabetes, Weight Change, and Pancreatic Cancer Risk」

「糖尿病、体重変化、すい臓がんのリスク」(原文はここ

 

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