ケトン体と交感神経に関して、コメントを頂きました。ありがとうございました。
MCTオイルでケトン値が上昇するのは感じます。
脂質代謝が亢進しているのは、肥満で痩身のためには効果があり、アドレナリン分泌が増えていると説明しているのがあるのですが、痩身目的ではなく、オプチマルヘルスを求める場合には、アドレナリンで交感神経優位になるのは、良いこととは思えないのです。
交感神経優位になって、不眠になることもあるので、そのあたりの判断は難しいと実感しています。
>交感神経優位になって、不眠になる
関係あるのかどうかわかりませんが、確かに糖質制限でショートスリーパーになると言う方は多く、消化吸収に使うエネルギー量が少ない事などが理由にされています。
ただ、本当のショートスリーパーは短時間で睡眠が足りている状態(これも怪しい)ですが、糖質制限での短時間睡眠は、「不眠」ではないかと感じます。
私も当初、4時間くらいになりました。寝ていない割には眠気はないですが、それで睡眠が足りていると言う感覚ではありませんでした。
今よりもケトン体高値だったと思います(2000~3000μmol/L)。
現在は、6時間くらいの睡眠時間になっています(800μmol/L前後)。
ケトジェニックな状態は、例えると原始人では朝日で目覚めて食べ物を探しに行く状態とすれば、活動的になるようにコルチゾールやアドレナリンやらの分泌が増えて、交感神経優位になっていると思います。でも脂質代謝ですから、ケトン体(BHB)が脳のエネルギーになっているので、脳は不安感なく、平静、でも自律神経は交感神経優位ではないかと捉えてみました。このバランスの取り方が大事に思います。私も1000μmol/L以上にならないようにする方が良さそうです。
つまり、糖質制限やケトン食でケトン体が増加すると、交感神経が活性化して優位になるのではないか、それにより不眠になるのではないか、ということです。
糖質制限で睡眠の質が良くなるという感覚を持つ人がいると思います。私自身も入眠も良くなり、スッキリ目覚めることも多くなりました。ただ、個人差はあるでしょうから、睡眠が悪くなったと感じる人もいるかもしれません。しかし、それが交感神経と関係しているかどうかもわかりません。
糖質制限ではナトリウム排泄が増加すると考えられるので、知らない間に塩分不足になり、交感神経を活性化している可能性はあるかもしれません。しかし、ケトン体は交感神経を活性化するのでしょうか?
ケトン体についてはまだわからないこともいっぱいあるので、その答えは実際のところわかりませんが、マウスでは次のような報告があります。
「Short-chain fatty acids and ketones directly regulate sympathetic nervous system via G protein-coupled receptor 41 (GPR41)」
「短鎖脂肪酸とケトンは、Gタンパク質共役型受容体41(GPR41)を介して交感神経系を直接調節する」(原文はここ)
(図はここより)
この研究では、食物繊維から腸内細菌の発酵により合成される短鎖脂肪酸やケトン体が「GPR41」という脂肪酸受容体を介して、交感神経を直接的に調節するとこを明らかにしました。GPR41は、マウスとヒトの交感神経節(交感神経細胞の集合体)に最も多く発現しているそうです。
短鎖脂肪酸はこのGPR41を介して交感神経を活性化することがわかりました。一方で、ケトン体であるβヒドロキシ酪酸はGPR41を抑制することにより、交感神経を抑制することがわかりました。さらにこれらの短鎖脂肪酸やケトン体による反応は、エネルギー消費量の変動と非常によく一致していたそうです。
ただ、糖質制限時にはエネルギー消費量が増加するという研究も存在します。以前の記事「エネルギー消費量は食事で変わる」で書いたように、炭水化物が少なく脂肪が多いほど、エネルギー消費量が増加している結果でした。
恐らく、飢餓によるケトン体産生状態と、糖質制限やMCTオイルを摂取した時のエネルギー源満点のケトン体産生状態では違いがあるのではないかと思います。
食べている状態では、総食物エネルギー摂取量のかなりの割合(5〜10%)が、腸内細菌叢による食物繊維の結腸発酵によって生成された短鎖脂肪酸に由来しているそうです。ただし、消化管内の短鎖脂肪酸のレベルは、腸内細菌の構成にも大きく関係しますし、食物繊維の量によっても違います。
食物繊維を摂取していても糖質制限ではケトン体が増加するので、どちらが優位になるかで交感神経に対する効果は違いがあるかもしれません。また、交感神経の調節はその他のさまざまな因子によっても行われると思います。ケトン体だけで議論するのは無理があるかもしれません。
さらに、先ほどの研究をした方が、別の大学に移って、昨年出した論文では次のように言っています。
「Ketone body receptor GPR43 regulates lipid metabolism under ketogenic conditions」
「ケトン体受容体GPR43はケトン体形成条件下で脂質代謝を調節する」(原文はここ)
(図はここより)
ケトン体といえばβヒドロキシ酪酸ばかり取り上げられますが、今回はアセト酢酸です。
この研究では、飢餓や絶食などのブドウ糖を正常に利用できないケトン体が増加するような体内環境や、断続的断食や糖質制限において、腸内環境の変化や、ケトン体の一種であるアセト酢酸がGタンパク質共役型受容体というもののひとつ「GPR43」を介して脂質代謝を制御することを発見しました。
通常の状態では、このGPR43は、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸によって、腸管及び血中を介して全身で活性化されています。しかし、絶食、糖質制限食や断続的断食を行うことにより、腸内細菌叢が変化し、短鎖脂肪酸の産生が腸管内では著しく減少し、ケトン体が増加した体内環境では、全身ではアセト酢酸を介して、GPR43は活性化される一方で、腸管では短鎖脂肪酸の減少によりGPR43が抑制されるということになるようです。
アセト酢酸-GPR43シグナル伝達は、ケトン体産生条件下でLPL(リポタンパク質リパーゼ)産生が増加したため、血漿LPL活性化による脂肪分解を介して血漿中の脂質利用を促進するようです。
それにより、全身のエネルギー利用が増加するようです。これもまた、絶食時とエネルギー源いっぱいの糖質制限時で、人間で本当に同様のことが起きているかどうかはわかりません。
ケトン体はエネルギー源として使用されるだけでなく、ケトン体には様々な受容体が存在し、シグナル伝達物質としての役割も担っているようです。
まだまだ、ケトン体は奥が深そうです。
エネルギー源としてのケトン体の功罪はまだまだ解明途上なのですね。
ただ、それに乗じた研究結果(過程)のつまみ食い的な糖質制限批判には注意したいものです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
まだ未解明なことが多いとしても、ケトン体を正面から批判する専門家はもうほとんどいないでしょうかね?
いたら、頭脳のCPUはPC88レベル?