高血糖や糖尿病はせん妄のリスクを高くする

高齢者は入院したり、手術を受けた後に、せん妄という、一時的な意識障害、認知機能障害を起こすことが珍しくありません。

環境の変化、入院というストレス、睡眠の状態、薬によるもの、手術後であれば麻酔薬の影響など様々な要因が考えられます。

しかし、このせん妄にも高血糖や糖尿病が関わっている可能性があります。

ある研究では、術後認知機能障害のリスクについて、肥満や高血圧ではなく糖尿病が1.84倍もリスク増加に関わっていると報告しています。(ここ参照)

さらに他の研究では、心臓手術後の術後せん妄の危険因子としての糖尿病と術前HbA1cの上昇を報告しています。糖尿病はせん妄の発症の可能性を1.7倍増加させ、さらにHbA1cが6.5を超える場合は1.8倍増加させていました。(ここ参照)

また、集中治療室での研究では、130mg/dL以上の血糖値を示した場合、過活動性せん妄の発症の可能性は4倍以上になりました。(ここ参照)

ある研究では、脳のグルコース代謝を測定するPETを使って、せん妄を起こした脳を調べてみると、せん妄を起こした全ての人で脳の皮質のグルコースの代謝低下を認めました。(図は原文より)

上の図は上段がせん妄時のPET、下段がせん妄から回復後のPETです。赤くなっているところがグルコースを取り込んでいる部分です。そうすると、せん妄時の方がグルコースの代謝が低下しているのがわかります。両側前頭葉(11例)、両側頭頂葉(11)、両側側頭葉(8)が最も頻繁に影響を受けました。

ただ、この論文によると、せん妄回復後代謝は改善しましたが、正常化はしませんでした。

一方で、感覚運動皮質はせん妄時代謝が維持または亢進していました。

ほんのわずかな空腹時血糖の増加でさえ、脳はアルツハイマー様のパターン、つまり脳のグルコースの代謝が低下すると言われています。(「ほんのわずかな空腹時血糖の増加でさえ、脳はアルツハイマー様のパターンの反応になる」参照)

以前の記事「認知症になる前の14年間を追ってみると・・・」で書いたように、認知症を発症した人では、対照群と比較して空腹時血糖は14年前からずっと、認知症の診断のちょっと前まで有意に高かったのです。

せん妄を起こす高齢者は、ほとんどが当然糖質過剰摂取を長年続けてきています。その中で、ぎりぎり普段の生活では問題なく過ごしていたところ、入院や手術という状況下で、過度のストレスや炎症が起こり、それに加えて糖質過剰の病院食などによって、脳のインスリン抵抗性が高まり、脳のグルコースの取り込みが悪くなってせん妄を発症するのかもしれません。

一方、脳のブドウ糖の取り込みが低下しても、脳のケトン体の取り込みは、健康な若い成人と比較しても、認知的に健康な高齢者だけでなく、軽度認知障害(MCI)および軽度から中等度のアルツハイマー病でも正常です。ケトン体は脳ネットワークの不安定性を低下させます。(「ケトン体は認知機能を改善する」「ケトン体が脳ネットワークの不安定性を低下させる」参照)

せん妄には薬物が投与されることが多いと思いますが、せん妄を予防したり改善させる方法は糖質制限やMCTオイルが最も有効であるかもしれません。もちろん、せん妄になってからMCTオイルを摂取することは難しいかもしれませんので、入院当初からMCTオイルを摂取してもらったり、糖質制限食を摂取してもらうことが重要かもしれません。

もちろんエビデンスがないので、通常の病院でせん妄予防のMCTオイル摂取をしてもらうことは問題があるかもしれません。しかし、主治医がOKしてくれるのであれば、患者の家族として、入院した患者である高齢者にMCTオイルを摂取させることはできるかもしれません。

認知症

糖質過剰症候群

「2- 18 F-fluoro-2-deoxyglucose positron emission tomography in delirium」

「せん妄における2- 18 F-フルオロ-2-デオキシグルコース陽電子放射断層撮影」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    幸せな気分になる口当たりの良い糖質を、存分に(糖質と気付きにくい食品や飲料も含め) 摂ることができる社会です。
    結果が、認知症や糖尿病などのいわゆる生活習慣病の激増なのではないでしょか。   ご長寿は素晴らしいですが、年齢を重ねることと、健康寿命を伸ばすことの解離を感じてしまいます。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      私は長生きしようとは思っていませんが、死ぬまで健康でいたいと思っています。
      そのためには体をなるべく糖化させないことだと思っています。

  2. 鈴木武彦 より:

    ご返信ありがとうございます。

    老化現象の原因も様々とは思いますが「糖化」、怖いですね。

    カロリーゼロ表示に甘えて、アクエリアスゼロ飲んでいましたら、目に見えて増量、浮腫増強。
    確認すると果糖入りでした。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      果糖のパワーはすごいですね?ただ、他の甘味料などによるものかもしれませんが。
      しかし、「カロリーゼロ」とわざわざ表示するということは、裏に何かを隠しているという意味でしょうかね?