ココナッツオイルと中鎖脂肪酸(MCT)とケトン体

中鎖脂肪酸(MCT)は糖質制限をしていなくてもケトン体が上昇すると言われています。中鎖脂肪酸の中で最もケトン体を増加させるのは炭素数が8個(C8)のカプリル酸です。ココナッツオイルには約6~8%含まれていますが、MCTオイルには60%も入っています。

実際に中鎖脂肪酸やココナッツオイル、長鎖脂肪酸しか含んでいないヒマワリ油などを糖質を同時に摂取したときと摂取しない場合のケトン体値はどうなるのでしょうか?

まずは、参加者のベースラインです。下の図は12時間絶食後の数値です。(図は原文より)

上の図の一番下が総ケトン体値です。単位が日本のμmol/Lと違います。日本の単位に直すには1,000倍してください。つまり参加者のベースラインは300μmol/Lもあります。意外と高めですね。βヒドロキシ酪酸も150と高めです。ちなみに基準値は総ケトン体131以下、アセト酢酸(acetoacetate)55以下、βヒドロキシ酪酸(BHB)85以下です。

そして、この人達に250mlのコーヒーの中に次のような脂肪酸を含んだものを飲んでもらいます。(グルコースを摂取する場合はコーヒーの15分前に行われました。)

Suf:ヒマワリ油30g、 C8:カプリル酸(20 g)+ヒマワリ油(10 g)、C8 + Glu:カプリル酸(20 g)+ヒマワリ油(10 g)+グルコース(50 g)、Coc:ココナッツオイル(30 g)、Coc + Glu:ココナッツオイル(30 g)+グルコース(50 g)、C8 + Coc:カプリル酸(20 g)+ココナッツオイル(30 g)。

MCTオイルとしてはかなりの量ですね。

上の図は0~240分のβヒドロキシ酪酸の時間あたりの曲線下面積です。値は4時間の平均濃度と考えてください。Suf:0.18±0.11、C8:0.45±0.19、C8 + Glu:0.28±0.12、Coc:0.22±0.12、Coc + Glu:0.08±0.04、C8 + Coc:0.45±0.20(mmol / L)でした。

Coc + Gluを100%として考えると、Suf:216%、C8:544%、C8 + Glu:336%、Coc:273%、C8 + Coc:547%。

 

上の図は時間とβヒドロキシ酪酸の推移です。ココナッツオイルではやはりケトン体の増加は少ないようです。グルコースを飲んでもCoc + Gluで150分後くらいからはケトン体は上昇してきます。しかし、同様にグルコースを飲んでもココナッツオイルではなくC8であれば、C8 + Gluでは30~45分後にはケトン体が上昇し始めています。やはりMCTオイルのパワーはかなりすごいですね。もちろん、グルコースを飲まない方がケトン体値は高くなります。ただ、個人差は結構ありそうです。

 

 

上の図は血糖値の推移です。(日本の単位にする場合は18をかけてください)グルコースを飲んだ場合、当然0分の段階で血糖値はやや高いのですが、60分後から降下し、120分値は80くらいに低下しています。50gのグルコースを飲んだのに4時間の間に血糖値スパイクは起きていません。油の摂取によるものか、中鎖脂肪酸によるものかはわかりませんが、結果的には血糖値の上昇を抑制しました。

グルコースを飲まない場合には血糖値はずっと安定しています。

つまり、ケトン体はMCTオイルのC8の摂取後、かなり高くなりますが、グルコースを摂取するとケトン体値は上昇はしますが抑制されてしまいます。ただ、12時間の絶食直後ですでにケトン体が高い状態で脂肪酸+糖質を摂取しても、もしかしたら血糖値の変動は非常に少ないのかもしれません。MCTオイルの量によるのかもしれません。個人差もあると思いますので、興味がある方は自分で測定してみてください。

やはり、MCTオイルは色々ありそうで、興味深いですね。

 

「Ketosis After Intake of Coconut Oil and Caprylic Acid—With and Without Glucose: A Cross-Over Study in Healthy Older Adults」

「ココナッツオイルとカプリル酸の摂取後のケトーシス—グルコースありとなし:健康な高齢者を対象としたクロスオーバー研究」(原文はここ

6 thoughts on “ココナッツオイルと中鎖脂肪酸(MCT)とケトン体

  1. >つまり参加者のベースラインは300μmol/Lもあります。意外と高めですね。βヒドロキシ酪酸も150と高めです。

    普通の健常者の値が知りたくて糖質制限をしていない息子の早朝空腹時ケトン体(βヒドロキシ酪酸)を測ったことがありますが、300μmol/Lでした。
    息子は、糖質制限はしていないものの間食の習慣もペットボトル飲料を飲む習慣もありません。ただそれだけで、後はごく普通の食事です。
    それでも、ケトン体値は基準値をはるかに超えています。
    つまり、この基準値も糖質過剰での数値ではないかと思われますし、その上限値にどれほどの意味があるのかと思います。

    MCTオイルは確実にケトン体が増えます。
    私は、時々、ケトン体値を昼食前を基準に計測しますが、朝食前に300μmol程度であっても朝食にMCTオイルを加えると昼食前には1000μmo/L前後にはなります。
    そして、低糖質の昼食であれば、夕食前にはもっと上がっている事が多いです。
    以前、SGLT2iを微量(スーグラ12.5mg)服用していた頃は夕食前に5100μmol/Lまで上がりましたから、体内のグルコースを少なくすれば上昇することも分かります。ただ、正常血糖ケトアシドーシス回避のため、600μmol/L以上の場合はSGLT2iは服用中止、3000μmol/L以上では緊急受診の目安とされているようです(Diabetes Strategy v0l.10 no.2 2020 26ページ)。

    体感的には1000μmol/Lを超えている時は非常に体が軽く感じます。例えば、階段を駆け上がっても非常に楽です。

    ただ、ケトン体値は何が影響するのか分かりませんが、同じ食事、同じ運動量でも全く違う値になることが多いです。
    私の生活の中で因果関係が分かっているのは前日にアルコールを多く摂取すると翌日はケトン体値が高くなると言う事です。

    因みに私は2型糖尿病、平均糖質42g/日の糖質制限食です。

    ※数値は何れもβヒドロキシ酪酸です。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      貴重なデータありがとうございます。ケトン体は糖質制限をしていればどんどん高くなるわけではありませんよね。
      これはケトン体を作って、それを十分に体がエネルギーとして使用しているからそれほど高くならないのか、
      単に作り出すケトン体が少ないのかわかりません。
      また、非常に個人差も大きいと思います。私は低めです。

      糖質制限をしていなくても空腹時300なんていう数値も出るのですね。ケトン体の基準値は本当に意味がないと思います。

      アルコールは糖新生が抑制される分高くなるのかもしれませんね。

  2.  MCTオイルでケトン値が上昇するのは感じます。
     脂質代謝が亢進しているのは、肥満で痩身のためには効果があり、アドレナリン分泌が増えていると説明しているのがあるのですが、痩身目的ではなく、オプチマルヘルスを求める場合には、アドレナリンで交感神経優位になるのは、良いこととは思えないのです。
     交感神経優位になって、不眠になることもあるので、そのあたりの判断は難しいと実感しています。

    1. ルバーブさん、コメントありがとうございます。

      インスリンが低い状態でアドレナリン刺激→脂質分解ですが、脂質分解またはケトン体産生→アドレナリン分泌ではないと思いますが?

  3. ルバーブさんへ

    >交感神経優位になって、不眠になる

    関係あるのかどうかわかりませんが、確かに糖質制限でショートスリーパーになると言う方は多く、消化吸収に使うエネルギー量が少ない事などが理由にされています。
    ただ、本当のショートスリーパーは短時間で睡眠が足りている状態(これも怪しい)ですが、糖質制限での短時間睡眠は、「不眠」ではないかと感じます。
    私も当初、4時間くらいになりました。寝ていない割には眠気はないですが、それで睡眠が足りていると言う感覚ではありませんでした。
    今よりもケトン体高値だったと思います(2000~3000μmol/L)。
    現在は、6時間くらいの睡眠時間になっています(800μmol/L前後)。

    1. 西村様

       助っ人ありがとうございます。
       ケトジェニックな状態は、例えると原始人では朝日で目覚めて食べ物を探しに行く状態とすれば、活動的になるようにコルチゾールやアドレナリンやらの分泌が増えて、交感神経優位になっていると思います。でも脂質代謝ですから、ケトン体(BHB)が脳のエネルギーになっているので、脳は不安感なく、平静、でも自律神経は交感神経優位ではないかと捉えてみました。このバランスの取り方が大事に思います。私も1000μmol/L以上にならないようにする方が良さそうです。

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