塩分制限で起こる程度の血圧低下ならタンパク質摂取量を増やすことでも得られる

食塩の摂取量と血圧の関係だけが取り上げられ、塩分制限が「ヘルシー」と誤解されています。血圧に影響する栄養成分は恐らく多因子です。なので、塩分ばかり悪者にするのは非常に違和感があります。

以前の記事「WHOは極端な塩分制限を推奨しているけれど…」で書いたように、WHOのガイドラインさえ、非常に根拠に乏しいと考えられます。

血圧が2~3mmHg低下したぐらいで、非常に大きな影響があるのであれば、タンパク質の摂取量も十分に影響がある可能性があります。

この研究では、尿中尿素と血圧の関係を分析しています。尿素窒素は尿素の窒素部分ですが、今回は我々になじみの薄い尿中尿素がマーカーです。尿素は、食事性タンパク質の主な異化産物であり、尿中に排泄される尿素は食事のタンパク質摂取量のマーカーと考えられています。

(尿中の尿素窒素の基準値は6.5~13.0g/日程度です。1時間当たり、271~542mgです。尿素窒素(mg/dl)を尿素(mmol/l)に換算するときの係数は0.357なので、9.7~19.3mmol/時でしょうか?)

(図は原文より)

上の図は収縮期血圧、高血圧と様々な変数の多変量回帰係数を示しています。左側の数値が収縮期血圧なので、それだけを見ていきます。そして数値がプラスの場合、血圧を上げる因子であり、マイナスは下げる因子だと思ってください。そして数値の絶対値が大きいほど影響が大きいと考えてください。そうすると一番下の降圧薬を除けば、もっとも上にある尿中尿素が圧倒的に数値が大きく、さらにマイナスです。尿中尿素が多いほど血圧は低下することを示しています。表の2段目は尿中ナトリウム排泄量ですが、ほとんど血圧に影響していないようです。

6.5mmol/時の高い尿中尿素は収縮期血圧4.25mmHgの低下と関連しているそうです。そして高血圧のリスクを35%低下させるそうです。

上の図は縦軸が高血圧の有病率です。横軸は尿中尿素を3つに分けて1が最も少ないグループ、3が最も多いグループです。Z軸は尿中のナトリウム排泄量で手前が最も少ないグループ、一番奥が最も多いグループです。尿中のナトリウム排泄量が多いグループでは顕著に尿中尿素が多くなると高血圧の有病率が低下しています。

他の研究でも、体重、24時間尿中のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムを調整しても、食事の総タンパク質摂取量が全体の平均より30%多い(約37g/日)人の収縮期血圧と拡張期血圧は、それぞれ平均3.0および2.5mmHg低いと推定されました。(ここ参照)

タンパク質摂取量(または尿中尿素)と血圧との関係のメカニズムは不明です。上の図を見ると尿中尿素は尿中ナトリウム排泄量と直接関連しているように見えます。

タンパク質の摂取後に生成された尿素は、ナトリウムの再吸収を阻害したり、排泄を増加させているのかもしれません。

タンパク質やアミノ酸が血圧に直接影響を及ぼしている可能性もあります。

私は全く塩分制限をせず、たっぷりとタンパク質を摂取したいと思います。

次回以降ではもう少しだけ深く(?)考えてみたいと思います。

心血管疾患

 

「Relation of urinary urea to blood pressure: interaction with urinary sodium」

「尿中尿素と血圧の関係:尿中ナトリウムとの相互作用」(原文はここ

2 thoughts on “塩分制限で起こる程度の血圧低下ならタンパク質摂取量を増やすことでも得られる

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      私にはわかりませんが、WHOが忖度しているというよりも、単純にお金が動いているのかもしれませんね。

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