糖質制限と運動のパフォーマンスと筋肉量

いまだに糖質制限をすると、筋肉を分解しエネルギーとするために、筋肉量が減少すると思っている人もいます。もしこのことが正しいのであれば、糖質制限の中でも最も糖質量の少ないケトン食ではかなりの筋肉量喪失が起きて、運動パフォーマンスも低下するでしょう。

これまでの研究の結果はどうでしょうか?すべての研究で炭水化物は総エネルギーの10%未満、1日摂取量は50g以下のケトン食とコントロールを比較しています。

健康な人のケトン食対コントロール食後の体組成の変化は次のようでした。(表は原文より改変)

ケトン食コントロール
期間(日)体重kg脂肪量kg除脂肪体重kgタンパク質摂取量g/kg/日体重kg脂肪量kg除脂肪体重kgタンパク質摂取量g/kg/日
84−3.6−2.9−0.71.69−0.9−0.4−0.51.13
84−1.90−1.81.551.510.41.43
21−2.1−2.2−0.11.13記載なし記載なし記載なし1.64
84−3−2.5−0.51.08−0.3−0.30記載なし
84−7.7−5.9−1.4記載なし0.1−0.60.8記載なし
84−5.9−4.60.31.49−0.8−0.50.11.30
420.5−0.20.42.660.10.5−0.41.55
56−2.2−1.1−0.71.860.80.40.71.55
70−2.6−4.21.51.670.6−2.22.71.69

ケトン食では体重減少が起きていますが、そのほとんどは脂肪量の減少によるものです。

では運動のパフォーマンスはどうでしょう?

下の表は持久力タイプのパフォーマンス測定結果です。

期間(日)パフォーマンス測定パフォーマンス結果
最大酸素摂取量≧53mL/kg/min
21タイムトライアル、競歩(10 km)
25タイムトライアル、競歩(10 km)
84タイムトライアル、サイクルエルゴメーター(100 km)
28疲労困憊に至るまでの時間、サイクルエルゴメーター(60–65% 最大酸素摂取量
42タイムトライアル、トレッドミル(5 km)
疲労困憊に至るまでの時間、サイクルエルゴメーター
31疲労困憊に至るまでの時間、トレッドミル(70%最大酸素摂取量
最大酸素摂取量≦53mL/kg/min
28疲労困憊に至るまでの時間、トレッドミル(100% 最大酸素摂取量
84疲労困憊に至るまでの時間、トレッドミル
疲労困憊に至るまでの時間、シャトルラン
21タイムトライアル、トレッドミル(5 km)
28疲労困憊に至るまでの時間、サイクルエルゴメーター
70疲労困憊に至るまでの時間、サイクルエルゴメーター

ほとんどの研究でパフォーマンスはコントロールと差がないことを示しています。

筋力パフォーマンス測定を研究したものはどうでしょうか?(パフォーマンス測定の詳細は省略します)

期間(日)パフォーマンス測定パフォーマンス結果
42パワー、ウィンゲート(30秒)
84オリンピックリフト(1 RM)
84バックスクワット(1 RM)
パワークリーン(1 RM)
84スクワット(1 RM)
垂直ジャンプ
スプリントインターバル
ベンチプレス(1 RM)
84パワー、サイクルエルゴメーター、6秒スプリント
パワー、サイクルエルゴメーター、クリティカルパワーテスト
56垂直ジャンプ
バックスクワット(1 RM)
ベンチプレス(1 RM)
70バックスクワット(1 RM)
ウィンゲート
ベンチプレス(1 RM)

ほとんどの研究でパワー系のパフォーマンスもコントロールと差がありません。

もちろん、個人差、ケトン食を続ける期間、運動の種類などで違いは出るでしょう。しかし、ケトン食や糖質制限では十分なタンパク質を摂取している限り、筋肉量低下は起きないと考えます。体重当たり1.5gを目指してタンパク質を摂取しましょう。

スポーツ

「High-Fat Ketogenic Diets and Physical Performance: A Systematic Review 」

「高脂肪ケトジェニックダイエットと身体能力:系統的レビュー」(原文はここ

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