前回の記事「WHOは極端な塩分制限を推奨しているけれど…」で、WHOは塩分の摂取量の推奨値を決める際に、食事アンケートを用いた研究をいくつも採用して、決定していることが問題であることを書きました。塩分(ナトリウム)に限らず、食事のアンケートは非常に不正確です。国やWHO、学会等がガイドラインを決める際に食事アンケートによる研究は用いるべきではないと思います。
ある研究では、食事アンケートと尿中ナトリウム排泄量に関して、大きな差を認めたことを報告しています。(図は原文より)
横軸が自己申告のナトリウム摂取量、縦軸が尿中のナトリウム排泄量です。自己申告ではナトリウム摂取量を30%から50%過小評価する傾向が認められました。
他の研究でも同様です。(図は原文より)
上の図は自己申告のナトリウム摂取量と尿中のナトリウム排泄量を示しています。左からベルギーの人、真ん中がノルウェーの人、右がチェコの人のものです。自己申告のナトリウム摂取量は尿中のナトリウム排泄量の、ベルギー男性で61%、女性59%、ノルウェー男性75%、女性70%、チェコの男性67%、女性66%でしかありませんでした。つまり自己申告は最大で41%、最小で25%も過小評価でした。
上の図はBMIによって分類したものです。興味深いことにBMI30以上の男性で最も自己申告が過小評価されていました。少しでも良く見られたいのでしょうか?ナトリウム量として約3gの違いですから、食塩に換算すれば7.6gも誤差があるのです。
非常に低い精度です。1gや2gの食塩の量の多い少ないを検討しているのに、誤差が7g以上もあるデータを用いることは馬鹿げています。
もちろん、尿中ナトリウム排泄量のデータも問題があるかもしれません。しかし、自己申告ほどいい加減ではないでしょう。以前の記事「塩分制限は健康的?」で示した尿中のナトリウム排泄量と死亡や主な心血管イベントの発生リスクのグラフの方が信ぴょう性が高いと思います。
「Does dietary recall adequately assess sodium, potassium, and calcium intake in hypertensive patients?」
「食餌リコールは、高血圧患者のナトリウム、カリウム、カルシウムの摂取量を適切に評価しているか?」(原文はここ)
「Reporting accuracy of population dietary sodium intake using duplicate 24 h dietary recalls and a salt questionnaire」
「重複した24時間の食事のリコールと塩のアンケートを使用して、人口の食事のナトリウム摂取量の精度を報告する」(原文はここ)