以前の記事「糖尿病発症の10年前からの変化」では、糖尿病の発症のかなり前から、わずかな変化が起きていることを示しました。今回は認知症です。
様々な因子が認知症のリスク増加と関連していると考えられています。認知症のある人の診断される前と認知症のない対照の人の14年間のリスク因子の推移を比較してみました。
比較した因子はBMI、収縮期血圧および拡張期血圧、HDLコレステロールおよびLDLコレステロール、中性脂肪、血糖値です。その中で有意な差が認められたのはBMIと血圧と血糖値です。(図は原文より)
上の図はBMIです。横軸は認知症と診断される14年前から診断された年までの推移を示しています。青いグラフが認知症群、オレンジが対照群です。対照群は変化が少なく、それに比べて、認知症群では診断される直前にはBMIが非常に低下しています。診断の7年ぐらい前から急にBMIが低下し始めているのがわかります。恐らくは認知症になる人は活動性の低下などによる筋肉量の低下、食欲の低下などが関連しているのではと考えられます。
上の図は血圧の推移です。認知症群では認知症の診断の前に収縮期血圧で3.4年、拡張期血圧で8.7年、対照群よりも血圧が低下していました。つまり、血圧は低い方がリスクが高いのです。以前の記事「高齢者は血圧を下げすぎてはいけない! その2 特に身体機能や認知機能に問題がある場合」「高齢者の血圧が高いのは意味がある。何でも正常値にする危険性」などではすでに認知機能に問題がある人に関して、血圧を低下させることのデメリットを書きました。高齢になってくると動脈硬化も進んでくる場合が多いので、脳に血流を送るためにはある程度高い血圧が必要になると思われます。ですから、血圧が低い方が認知症の危険も高まると思われます。
上の図は血糖値の推移です。血糖値が最も長い間有意差があります。対照群と比較して空腹時血糖は14年前からずっと、認知症の診断のちょっと前まで有意に高かったのです。当然のことです。アルツハイマー病は「3型糖尿病」と言われるぐらいですから。以前の記事「脳のインスリン抵抗性はうつ病、そして認知症をもたらす」で書いたように、脳のインスリン抵抗性、ミトコンドリアの機能不全が関連しているとも考えられます。
久山町の研究では、お米をたくさん食べるほど認知症になりやすいという結果が出ています。お米は糖質です。糖質過剰摂取はアルツハイマー病に大きく関連しているのは間違いないでしょう。
一方今回の研究では、コレステロールなど脂質の状態は認知症との関連は認められませんでした。
認知症になりたくないのであれば、糖質制限は必須でしょう。
「Evaluation of the Concurrent Trajectories of Cardiometabolic Risk Factors in the 14 Years Before Dementia」
「認知症の前14年間の心代謝リスク要因の並行軌道の評価」(原文はここ)