以前の記事「空腹時血糖のわずかな違い 糖尿病への軌跡」で書いたように、糖尿病の発症のかなり前からわずかな変化が表れています。この記事の研究は海外のデータでした。
では日本人ではどのようになっているのでしょうか?(図は原文より)
まずは空腹時血糖です。Aの●は糖尿病予備軍を発症した人、Bの●は糖尿病を発症した人です。Aの○はベースラインで耐糖能正常であり、最終的にそのまま耐糖能が正常だった人です。Bの○はベースラインで耐糖能正常+糖尿病予備軍であり、最終的に糖尿病には進展しなかった人です。
糖尿病予備軍は、空腹時血糖が100〜125mg/dLおよび/またはHbA1cが5.7%〜6.4%の間と定義されました。空腹時血糖100mg/dL未満およびHbA1c5.7%未満の人は耐糖能正常とされました。
そうすると、10年前から、最終的に糖尿病予備軍になった人では耐糖能正常に人と比較して、ほんのわずかですが空腹時血糖が高く、ほんのわずかながら少しずつ上昇しています。耐糖能が正常の人は経年変化がありませんでした。最終的に糖尿病を発症した人も同じで、そうではない人と比較して、糖尿病予備軍の場合よりもさらに顕著に空腹時血糖は高く、年々右肩上がりになっています。そして最後の年、糖尿病と診断されたときにドンと空腹時血糖が上昇しています。
つまり、空腹時の血糖値は基準値にギリギリ収まっていれば良いのではなく、基準値の範囲の高値付近は注意が必要であり、年々ほんのわずかでも上昇傾向が認められるのであれば、それは糖尿病発症のカウントダウンである可能性が高いということになります。
上の図はBMIが年々どのような変化をしてきたかのグラフです。空腹時血糖と同様に糖尿病(および予備軍)発症10年前から徐々に増加しているのが明らかです。発症しない人では経年変化が認められませんでした。少しずつ体重が重くなっていくのを、年をとっていくことや運動不足を言い訳にしていてはいけません。それは加齢や運動不足で起きているというよりは、やはり糖尿病へのカウントダウンなのです。すい臓のβ細胞がだんだんと疲弊してきているのです。
上の図はSPISEというインスリン抵抗性を表す指標です。6.61未満でインスリン抵抗性があると考えられており、中性脂肪/HDLコレステロール比よりもインスリン抵抗性により相関していると考えられています。空腹時血糖やBMIと同様に、糖尿病発症の10年前からSPISEは変化が認められ、どんどん低下しています。上のグラフから判断すると、SPISEは8.5以上あった方が良さそうです。9を超えていれば全く問題ないと思われます。
ちなみに私のSPISEは11.19でした。
SPISEに興味がある方は下の空欄に、ご自身のHDLコレステロール値(mg/dL)、中性脂肪値(mg/dL)、身長(cm)、体重(kg)を入力してみてください。
糖尿病予備軍を経て糖尿病が発症すると考えると、糖尿病予備軍が発症するまでにも10年経過して、そこからさらに10年経過して糖尿病が発症すると言う人もいるでしょう。つまり、糖尿病の発症から20年も前から空腹時血糖やBMI、SPISEに表れるインスリン抵抗性に変化が認められる可能性があるのです。
最初は空腹時血糖やBMIの変化はわずかなので見逃してしまうかもしれません。しかし、空腹時血糖が100に迫ってきていたら、糖質制限開始の合図です。もちろん、その前からやった方が良いですが。
「Type 2 Diabetes: When Does It Start?」
「2型糖尿病:いつ始まりますか?」(原文はここ)