おちんちんの血管は心臓の血管より細いです。そうすると動脈硬化の影響は、心臓よりもおちんちんに先に出ても不思議ではありません。
おちんちんの動脈硬化の影響は勃起不全(ED)としてあらわれます。
EDと冠動脈疾患の関連はどのようになっているでしょうか?
臨床症状、急性冠症候群(ACS)と慢性冠症候群(CCS)、および血管病変の程度(単一の血管か多数の血管か)に従って、冠動脈疾患患者285人の勃起不全(ED)の有病率を調査しました。
グループを3つに分けています。グループ1は急性冠症候群および冠動脈の病変が1血管のみ、グループ2は急性冠症候群および2~3血管病変、グループ3は血管病変の数に関わらず慢性冠症候群の人です。コントロールは完全なノーマルな冠動脈を持った人です。平均年齢は53~55歳程度です。(図は原文より)
上の図はEDの有病率です。左のグラフはグループごとのものです。コントロールのED有病率は24%でした。グループ1は22%とコントロールと差がなく、グループ2は55%、グループ3は65%にもなりました。
右のグラフは急性冠症候群(ACS)と慢性冠症候群(CCS)での血管病変の数の違いによる有病率です。急性冠症候群の1血管では22%でしたが、2~3血管の急性冠症候群で50%以上になり、慢性冠症候群のすべてで60%以上になりました。
上の図は右は今回無視して、左のグラフは重度のEDの割合です。1血管と比較して2~3血管では有意に重度のEDが多くなっています。
上の図は左がグループ3の冠動脈疾患発症前のEDの割合です。なんと血管病変の数に関わらずほとんどの人がEDを発症しており、平均で93%でした。右はグループ3の病変数によるEDから冠動脈疾患発症までの時間(月数)です。平均で24か月でした。
上の図は年齢によるED有病率です。▲がコントロール、ひし形が1血管、〇が2~3血管の病変です。年齢が高くなればコントロールでもED率は高くなっていますが、それでも60代で30%台でしょうか?しかし、1血管でも2~3血管でも60代になると90~100%に近い有病率です。
分析をすると、年齢はEDの可能性を1.1倍上昇させますが、1血管に対して2~3血管では2.53倍、急性冠症候群に対して慢性冠症候群では2.32倍でした。
またEDの存在は、1血管と比較して2~3血管病変の可能性が4.2倍に増加することに関連していました。
以前の記事「立(勃)たなくなったら糖質制限?」で書いたように、40~70歳の調査で、日本ではなんと34.5%がEDと非常に高かったのです。40歳以上の3人に1人以上がEDなのです。
EDも糖質過剰症候群です。糖質過剰摂取ではインスリン抵抗性が高くなり、動脈硬化を進行させ、血管の内皮機能障害を起こし、血管拡張を減少させてEDになるのではないかと思います。
EDは冠動脈疾患の発症の2~3年前に発症しています。おちんちんの元気がなくなったら、裏では動脈硬化が進行していると考えた方が良いでしょう。立たなくなってきたら、心血管疾患発症のカウントダウンが始まっているかもしれません。そうなる前にまずは糖質制限ですね。
心血管疾患
「Association between erectile dysfunction and coronary artery disease. Role of coronary clinical presentation and extent of coronary vessels involvement: the COBRA trial 」
「勃起不全と冠状動脈疾患との関連。冠状動脈の臨床症状の役割と冠状血管の関与の程度:COBRA試験」(原文はここ)
ED。血管年齢を簡単に確認できる指標でもあるのですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
血管年齢は動脈硬化を見ているのですから、EDは心臓よりも早く敏感に反応するのでしょうね。
ただ、EDのメインはインスリン抵抗性だと思います。若ければ糖質制限をすれば十分に改善すると思います。