軽度認知障害(MCI)にはケトン体を、そうなる前に糖質制限を

認知症は世界的に増加しています。認知症の前段階と考えられている軽度認知障害(MCI)から認知症に移行するのは年10%程度と考えられています。

厚労省の以前の「認知症予防・支援マニュアル」では次のように書かれています。

正常の高齢者が年間に1%ないし2%が認知症に移行していくのに対しMCIの年間移行
率は平均10%程度である(Bruscoli M ら、2004)。しかし、その率は、MCIのサブタイプ
やサンプルの状況でかなり違ってくる。医療機関を受診した記憶障型MCIでは10%から
15%が移行するという(Bozoki A ら、2001)。しかし、地域の高齢者を対象とした研究で
は、MCIから認知症への移行率は8.3%と低くなる。
最近のサブタイプごとの移行率を検討した結果では、たとえば、4年後の認知症への移
行率は、記憶障害の単一領域のタイプの24%であったのに対して、言語、注意、視空間認
知の障害のいずれかをあわせ持っている複合タイプでは、移行率は77%であった(Bozoki
A ら、2001)。また、3年後の移行率を検討した最近の研究結果でも、記憶障害単一サブタ
イプが 33.3%、複合サブタイプは、75.0%、非記憶単一サブタイプは、10.0%であったと
いう(Palmer KP ら、2008)。このように、サブタイプ別では、記憶障害の単一領域のサブ
タイプよりも、複合領域のサブタイプの方が、認知症への移行率が高いことがわかってい
る。

タイプにより移行の割合はかなり変わるようです。

MCIに対して早期に発見して、早期に介入、治療すれば、はたして認知症に移行することを防げるのでしょうか?恐らくそのようなエビデンスはないでしょう。

そんな中、MCIに対して、ケトン体を増加させるMCT(中鎖脂肪酸)のドリンクを6か月飲んだ時の変化を研究したものがあります。1日2回MCT15g入りのドリンクを飲んだ場合とプラセボを比較しています。(図は原文より)

上の図はエピソード記憶、実行機能、および言語能力に広く使用されているテスト(ボストンネーミングテスト)でのパフォーマンスが、プラセボと比較して30g/日のMCTドリンクを飲んだ場合、MCIで6か月以上改善したことを示しています。

上の図は横軸が血中のケトン体の変化量、縦軸がそれぞれのテストのパフォーマンスです。ケトン体が増加するほどテストの結果が良くなっています。そして6か月後でもその改善は続いていました。

しかもMCTドリンクは年齢、性別、教育、そしてアルツハイマー病の最強のリスク遺伝子APOE ε4状態とは独立してMCIにおける認知機能を改善していました。

MCIを早期に発見したところで、それを改善する薬は存在しません。しかしMCT、ケトン体はMCIの認知機能の改善をもたらします。

脳は絶え間なくエネルギーを必要としますが、認知症ではブドウ糖の取り込みが悪くなり、エネルギー不足を起こし、機能障害に陥ると考えられます。そこに脳のエネルギーのケトン体を摂取すれば、まだまだ脳は働き続けられるのです。

脳がブドウ糖を取り込むことができなくなる前に、糖質制限をすれば、脳のダメージは少なくなるでしょう。さらに糖質制限で日常にケトン体が存在することになれば、脳はもっと楽にエネルギーを確保できます。

認知症は糖質過剰症候群です。なってからでは遅いかもしれません。そして、認知症になるまでには何十年かかります。遅くとも40歳を過ぎたら、糖質制限を始めた方が良いと思います。

「A ketogenic drink improves cognition in mild cognitive impairment: Results of a 6‐month RCT」

「ケトジェニックドリンクは軽度認知障害の認知機能を改善する:6か月のRCTの結果」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    認知症「早期発見。早期治療」やはり製薬会社都合なのでしょうか。特効薬があれば意味あるでしょうが、無いですよね。レッテル貼られて、落ち込むなどの弊害のほうが大きいような気がします。「早めの生活指導や意向の確認」なども言われますが、大きなお世話では?

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      治療法がないのに、早期発見、早期治療は意味がないですよね。効果のほとんどない薬を長く飲ませることが目的かもしれませんね。
      まずは脳のインスリン抵抗性を増加させないことだと考えています。