DHAはLDLを増加させる

以前の記事「オメガ3のDHAはLDL粒子を大きくしLDLコレステロールを増加させる」でも取り上げたDHAとLDLコレステロールの関連ですが、次のような続報のコメントをいただきました。

清水先生、こんばんは。

糖質制限下では、これまでの常識がそうではないということになりそうですね。
アラキドン酸も炎症につながらない。
オメガ3と6の比も関係ないのでしょうか？

以前、コメントしましたが、イワシの水煮缶を食べ続けた結果、LDL-Cが急上昇し、338 mg/dLでしたが、内臓脂肪指数VAIは、0.186です。これは糖質制限に加え、オメガ3の好影響もあるのかもしれないと思っています。ただ、さすがにLDLが高すぎるので、イワシ水煮缶は1週間に一度くらいにすると、すぐに230 mg/dLくらいまでに下がりました。

糖質制限は奥が深いです。

この方の経験では、イワシの水煮缶を毎日食べるようになってLDLコレステロールが約100上昇し、1週間に1回程度にしたら約100程度低下したそうです。

一般的には食事性のコレステロール摂取はLDLコレステロール値にあまり影響を与えないと考えられています。厚労省もその立場です。しかし、LDLコレステロール値に影響を与えるのは食事性コレステロール量ではありません。

恐らく様々な栄養素が関係しているのでしょう。人によってはそれが糖質であったり、飽和脂肪酸であったり、オメガ3であったり…（「糖質を減らして脂質と交換するとHDLコレステロールは上昇し中性脂肪は低下する」など参照）

一般的にはLDLコレステロールは心血管疾患を増加させると考えられていますし、HDLの増加と中性脂肪の減少は心血管疾患を減少させると考えられています。

ではLDL増加、HDL増加、中性脂肪低下はどうなるのでしょうか？恐らく、心血管疾患ではLDLは上昇して、HDLは低下し、中性脂肪は増加していることが多いと考えられています。つまり、LDL増加、HDL増加、中性脂肪低下は想定外なのかもしれません。このことが糖質制限ではよく起こることです。糖質制限ではLDLは大きく増加することも珍しくありませんし、HDLは大きく増加し、中性脂肪は大きく低下します。LDL以外は心血管疾患リスクを低下させる方向に変化します。

同様に、オメガ3は一般的に健康的であり、心血管疾患を減少させると考えられています。オメガ3もLDL増加、HDL増加、中性脂肪低下方向に変化します。（図は原文より）

上の図は様々な研究をまとめたものです。黄色で示したように、中性脂肪は大きく低下し、LDLは2.2～12.2％増加しています。HDLは5％程度増加です。

以前の記事「オメガ3のDHAはLDL粒子を大きくしLDLコレステロールを増加させる」やこの論文から考えると、オメガ3の中でもDHAがLDLを増加させると考えられます。

人間ではありませんがハムスターの研究では、DHAがCETP活性を増加させ、肝臓におけるLDL受容体発現を有意に減少させました。（この論文参照）

このように上昇したLDLは本当に心血管疾患と関連するのでしょうか？私は単純にLDLコレステロール値がリスクを上げるとは思っていません。LDLの質が問題だと思いますし、その質を変化させる他の因子の方が重要だと思っています。DHAでも糖質制限でもLDLコレステロールは増加しても、LDLの粒子の大きさは大きくなります。つまり質の良いと考えられるLDLが増加するのです。

ということで、食事性コレステロールではなく、その他の食習慣とLDLコレステロールの関係を調べてみたいと思います。上手くデータが出るかはわかりませんが、よろしければアンケートにお答えください。

アンケートのページ「食習慣とLDLコレステロールの関連についてのアンケートのお願い」

「n-3 fatty acids and serum lipoproteins: human studies」

「n-3脂肪酸と血清リポタンパク質：人間の研究」（原文はここ）