オメガ3のDHAはLDL粒子を大きくしLDLコレステロールを増加させる

血液検査のデータに関してコメントをいただきました。

清水先生、おはようございます。
最近、血液検査をしたのですが、前回から2ヶ月程度経っています。
その間、ほぼ完全な糖質制限をしていたのはもちろんですが、毎日、イワシ水煮缶を食べていました。
その結果、LDLが100 mg以上上昇してしまいました。2ヶ月でこの変化は大きいですね。HDLや中性脂肪は変わりないです。

中性脂肪 40
HDL-C 110
LDL-C 338
総コレステロール 451
non-HDC-C 341

さすがに、この検査結果は、皆さんの分布から見ても異常のように思います。
また、スタチンの処方を拒否できないかもしれません。

確かに、以前の記事「みなさんの血液検査データ2020 集計 その3」「みなさんの血液検査データ2020 集計 その7」での糖質制限のLDLコレステロール値のグラフを見ても、LDLコレステロール338というのはかなり高い方ですね。

この方のコメントの中にイワシ水煮缶を毎日食べていたと書かれています。ご存じのようにイワシには必須脂肪酸のオメガ3が豊富に含まれています。オメガ3の中でEPAやDHAというものがあります。EPAやDHAは健康に対して様々な有益な効果があると考えられています。

そのDHAはLDLに影響を与えるようです。

ある研究で、腹部肥満と軽度の全身性炎症のある健康な(?)男性48人と女性106人にサプリメントを摂取してもらいました。 EPA(2.7g/日)またはDHA(2.7g/日)、対照としてのコーン油の3種類です。(図は原文より)

上の図はコントロールと比較した様々なパラメータの変化です。右側が増加、左側が減少を示しています。白いバーがEPA、黒いバーがDHAです。上の方は炎症系のパラメーターで、どちらも低下しています。今回注目すべきは、Total C(総コレステロール)、LDL-C(LDLコレステロール)、HDL-C(HDLコレステロール)、TG(中性脂肪)です。EPAと比較してもDHAでは大きくLDLコレステロールやHDLコレステロールが増加しています。中性脂肪どちらも大きく減少しています。

上の図は男女別のLDLコレステロールの変化率です。男性の方がDHAで大きく増加しています。もちろん、LDLコレステロールが100も増加しているということではありません。10~15程度の増加でしょうか?

また、別の研究でもLDLコレステロール増加の結果が出ています。この研究の対象者は軽度の高脂血症、過体重の男性です。EPA、DHA、またはオリーブオイルのカプセルを1日4 g摂取してもらいました。(図は原文より)

上の図は上から総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の変化率です。横軸は左からオリーブオイル、EPA、DHAの順です。DHAが最も脂質系に影響があり、LDLコレステロールを最も増加させています。HDLコレステロールも増加していました。

上の図はLDLの粒子サイズです。オリーブオイルもEPAも影響は与えませんが、DHAは有意にLDL粒子を大きくしました。

つまり、脂質系のデータに関してはDHAは糖質制限で起きる変化(HDL増加、中性脂肪低下、LDL増加、LDL粒子の大きさ増加)と同じような変化が起きています。

糖質制限とDHAでLDLに関して相乗効果があるのかもしれませんね。

オメガ3、DHAは健康的だと考えられているのに、不健康だと考えられているLDLコレステロール上昇をもたらします。LDLコレステロール上昇は本当に悪いのかどうかはその質の問題だと思います。もしかしたら、DHAの健康的な効果の一部はLDLコレステロール上昇によってもたらされている可能性もあります。質の良い高LDLコレステロールは問題ないと考えます。

「A randomized, crossover, head-to-head comparison of eicosapentaenoic acid and docosahexaenoic acid supplementation to reduce inflammation markers in men and women: the Comparing EPA to DHA (ComparED) Study」

「男性と女性の炎症マーカーを減らすためのエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸サプリメントのランダム化されたクロスオーバーの直接比較:EPAとDHAの比較(比較)研究」(原文はここ

「Purified eicosapentaenoic and docosahexaenoic acids have differential effects on serum lipids and lipoproteins, LDL particle size, glucose, and insulin in mildly hyperlipidemic men」

「精製されたエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸は、軽度の高脂血症の男性の血清脂質とリポタンパク質、LDL粒子サイズ、グルコース、インスリンに異なる影響を及ぼす」(原文はここ

コメント

  1. じょん より:

    清水先生、詳細に解説いただき、ありがとうございます。

    オメガ3系のDHAにこのような作用があるとは思いもよらなかったです。抗炎症についてはEPA, DHAともに作用がありますね。

    私の食べていた水煮缶は、DHA 2000 mg, EPA 3700 mg程度で、汁も全部飲んでいました。
    LDLの上昇には驚きましたが、いい変化なのですね。
    とは言え、医師や会社の産業医は必ず問題視すると思うと憂鬱です。DHAによるLDLへの影響は好ましいということを病院の先生方にも認識してほしいものです。

  2. 〇福 より:

    63才男性 4年以上前からEPA製剤のエパデールカプセル300を1回900㎎ 毎食直後に服用しています。DHA製剤ではLDLの顕著な上昇があるとのことですが、EPA製剤では2019/4月T-Cho247、HDL53、LDL194 NoneHDL194、TG65 2020/4月T-Cho277、HDL58、LDL181 NoneHDL219、TG87と変化がありません。ただNoneHDLの値が上昇しています。EPAがLDLを上昇させないのは文献と同様な結果です。動脈硬化検査を6ヵ月毎に受けています。 動脈硬化の指標ABI検査(足の血管の詰まり)も正常範囲(0.91~1.40) 、脳、心血管病の指標baPWV検査も3年前から測定していますが標準範囲(1300以下)です。
    このブログでは血液検査の結果LDL値で色々な論議がされていますが、ここは一つ動脈硬化の指標となりうる生理学的な検査を取り上げていただけないでしょうか?
    LDLが高値を3年以上維持、たけど動脈硬化の指標の検査結果は正常、医者からはスタチン処方を強く勧奨されていますが、拒否しております。ただEPA製剤の処方はTGが低いですが続けています。理由は神経細胞の酸化(炎症)に対して保護があるとの北欧での知見からです。また動脈硬化の指標も健常領域を保っているためです。

    • Dr.Shimizu より:

      〇福さん、コメントありがとうございます。

      この検査結果ではEPAの効果があるのかどうかは微妙ですね?
      糖質制限だけで十分に達成可能な範囲ですし、中性脂肪/HDL比が1.5ですから。(糖質制限の平均は0.75)
      ただ、2019年のデータは怪しいですね。LDL=nonHDL、T-cho=LDL+HDL、とピッタリですから、
      LDLは実際には測定されていないと思います。
      また、一般的にはエパデールは中性脂肪、non-HDLを低下させると言われています。
      その他の要因で中性脂肪やnon-HDLがやや増加しているのでしょう。
      現在は問題ないと思います。
      EPAにはほかにも様々な有益は効果があると思いますからね。

      申し訳ありませんが、現在のところ私自身、動脈硬化の指標は測定していません。
      ABI検査やbaPWV検査が正常範囲内であるのであれば、良いのでは?