アセトアミノフェンは感覚、感情を低下させるかもしれない

一般的には鎮痛薬のアセトアミノフェンは安全と考えられていますが、本当でしょうか?日本では比較的少ない量で投与されているので、もしかしたら問題が少ないのかもしれません。

欧米ではかなりの量のアセトアミノフェンを使用しています。アセトアミノフェンは実は脳に働いて好ましくない作用も示すようです。

今回の研究ではDOSPERTスケールというものを用いて、リスクをとるかどうかの意思決定についてアセトアミノフェン(1,000mg)の影響を調べています。DOSPERTスケールの項目は以下のようです。(ここ参照)

1. 自分の趣味が友達と違っていることを認める
2. 管理されたキャンプ場ではなく、自然の中でキャンプする
3. 一日分の収入を競馬に使う
4. 年収の10%を安定成長の投資信託に投資する
5. 一晩に5杯以上のアルコールを飲む
6. 所得税申告にかなりの額の不正行為をする
7. 主な問題点において父親と合意しない
8. 一日分の収入を、賭け金の高いポーカーに使う
9. 既婚者と交際する
10. 他人の行った仕事を、自分がしたと言い張る
11. 自分の限界を超えた、または閉鎖された場所でのスキーを強行する
12. 年収の5%をリスクの高い株に投資する
13. 水量が多い時期に、急流をいかだで下る
14. スポーツ試合の結果に一日分の収入を賭ける(野球、サッカー、フットボールなど)
15. 避妊具なしの性交渉をする
16. 友人の秘密を他人に明かす
17. 助手席に座るときシートベルトをしない
18. 年収の10%に相当する金額を新規の投機的事業に投資する
19. スカイダイビングの講習を受ける
20. オートバイに乗るときヘルメットを着用しない
21. 名誉があっても楽しめない仕事より、自分が楽しめる仕事を選ぶ
22. 社会的な場で、少数意見だが自分が信じる方を擁護する
23. 日焼け止めをつけずに太陽に体をさらす
24. バンジージャンプを少なくとも一回は挑戦する
25. もしできれば自分で所有する小型機を操縦したいと思う
26. 治安の良くない場所を1人で夜歩いて帰宅する
27. 近親者の住むところから遠い町へ引っ越す
28. 30代半ばで転職する
29. 用事を済ませるために外出する間,子どもだけを自宅に残す
30. 2万円の入っている財布を拾っても届け出ない

まったくリスクがない(まったくメリットがない)から非常にリスクがある(大きなメリット)までの7段階で回答します。

アセトアミノフェンを服用した人は、上のような項目の活動を、プラセボを服用した人よりも危険性が低いと評価しました。

また、アセトアミノフェンの服用は、コンピューターで仮想バルーンを膨らませることで報酬を獲得できる実験でも、より多くのリスクをとるようになりました。

つまり、アセトアミノフェンは、危険な活動を考えるとき、人々に否定的な感情を感じさせないよう作用しているようです。このことは危険な行動を増加させる可能性があります。

また、アセトアミノフェンはポジティブな感情とネガティブな感情の両方を鈍らせることもわかっています。(「アセトアミノフェンはただの鎮痛剤ではないようだ」参照、論文はここ

さらに、アセトアミノフェンの服用は他の人の痛みに対する共感を減少させるということもわかっています。(ここ参照)

このような共感は社会的行動と反社会的行動を調節するため、これらの薬物誘発性の共感の低下が社会的大きな影響を及ぼす可能性があります。アメリカでは約4分の1の人が毎週のようにアセトアミノフェンを使っているようです。

どうやらアセトアミノフェンは島前部と前帯状皮質という脳の領域の活性化を低下させるようです。(ここ参照)

この脳の領域は感情的な認識と動機付けに関連しているようです。

急性期に一時的にアセトアミノフェンを使用することは問題ないと思いますが、常用していると、知らない間に他人の痛みが分かりづらくなっていたり、感情に乏しくなっているかもしれません。手放しで安全な薬なんて存在しません。

でも、どうしてもバンジージャンプをするのであればアセトアミノフェンを2~3錠飲んでからの方が良いのかもしれませんね。

 

薬剤

「Effects of acetaminophen on risk taking 」

「リスクテイクに対するアセトアミノフェンの効果」(原文はここ

2 thoughts on “アセトアミノフェンは感覚、感情を低下させるかもしれない

  1. 痛みを麻痺させると同時に、大切な感情や感覚も麻痺させてしまうのですね。

    まあ、痛みというものも見方によっては大切な感覚でしょうから、その他の感覚や感情と綺麗に選り分けることはきっと不可能なのですね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      脳に働く薬は注意が必要でしょうね。急性期に頓用が基本だと思います。

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