糖尿病の薬、SGLT2阻害薬は良いことばかりが強調されています。もちろん、これまでの他の糖尿病薬と比較すると良いのかもしれません。しかし、リスクについてはあまり目にしません。一時期のスタチンのような感じがして、気持ち悪いです。薬は薬。副作用のない薬はありません。
SGLT2阻害薬が治験中から下肢切断のリスクが増加するかもしれない、と言われていました。
(「糖尿病治療薬SGLT2阻害薬は下肢切断を増加させるかもしれない!」「米食品医薬品局(FDA)は5月18日付けで、SGLT2阻害薬下肢切断リスクに関する警告を発出」「いまだに燻るSGLT-2阻害薬の下肢切断リスク」参照)
カナグリフロジンによる切断のリスクに対する警告枠は、2020年8月下旬にFDAによって削除されました。
今回の研究は、SGLT2阻害薬と下肢合併症リスクとの関連を調べたメタアナリシスです。下肢切断、末梢動脈疾患、糖尿病性足病変の既往歴のある糖尿病患者を含む集団を対象に実施された39件のSGLT2阻害薬のランダム化比較試験を対象としました。
SGLT2阻害薬非使用者と比較して、SGLT2阻害薬治療を受けた患者では切断の可能性は1.23倍、末梢動脈疾患の可能性は1.21倍でした。薬剤種別解析の結果、カナグリフロジン群でのみリスクが認められ、切断の可能性は1.60倍、末梢動脈疾患の可能性は1.53倍でした。さらに、52週間を超える試験期間を有するRCTでは、SGLT2阻害薬非使用者と比較して、切断の可能性1.22倍、末梢動脈疾患の可能性1.22倍でした。
メタアナリシスの結果、SGLT2阻害薬使用で体重減少が大きいことは下肢切断、末梢動脈疾患、糖尿病性足病変のリスクと有意に関連していました。さらに、ベースラインの拡張期血圧の低下、SGLT2阻害薬使用による収縮期血圧の低下の程度、および拡張期血圧の低下の程度は、SGLT2阻害薬使用者においてそれぞれ切断、PAD、DFのリスク増加と有意に関連していた。SGLT2阻害薬を使用して、体重が大きく減ったり、血圧が低下して喜んでばかりはいられないようです。
もう一つ、日本人の研究を見てみましょう。SGLT2阻害薬またはメトホルミンを使用している2型糖尿病の日本人患者107,296人が対象です。SGLT2阻害薬群とメトホルミン群の切断リスクには有意差は認められなかったのですが、SGLT2阻害薬群の切断リスクはメトホルミン群と比較して、女性であると2.78倍、強力なスタチンの使用で2.68倍になっていました。また、BMI25以上の2型糖尿病患者に関しては、切断イベントはSGLT2阻害薬を使用している患者でのみ観察されました。
製薬会社や専門家はSGLT2阻害薬には下肢切断リスクがないと言い張るでしょうけど、体重が大きく減少したり、血圧が低下したり、女性であったり、スタチンを飲んでいる人は十分に注意してください。
副作用のない薬はありませんから。
「SGLT2 inhibitors and lower limb complications: an updated meta-analysis」
「SGLT2阻害薬と下肢合併症:最新のメタアナリシス」(原文はここ)
「Real-world risk of lower-limb amputation associated with sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors versus metformin: A propensity score-matched model analysis in Japan」
「SGLT2阻害薬とメトホルミンの比較における下肢切断リスクのリアルワールド:日本における傾向スコアマッチングモデル解析」(原文はここ)