当たり前ですが、血糖値は糖質摂取で上昇します。糖質制限を始めれば、当然ですがすぐに血糖変動が低下します。段々と低下するのではなく、その日から低下します。
今回の研究では、糖質制限ではありませんが、糖質摂取量を少し減らし始めて48時間の血糖変動と通常の糖尿病食での血糖変動とを比較しています。(実際には血糖値ではなくフリースタイルリブレと同様に間質液のグルコース値ですが、血糖値と表現させていただきます。)対象はメトホルミンで治療中の平均年齢64歳、平均糖尿病期間5.5年、平均HbA1c6.5の2型糖尿病の人16人です。
摂取エネルギー量は2つの食事で同じです。栄養素の割合は、糖質控えめ食が炭水化物31%、タンパク質29%、脂質40%で、通常の糖尿病食は炭水化物54%、タンパク質16%、脂質30%です。摂取エネルギー全体の30%ずつを朝食(B)、昼食(L)、夕食(D)で摂り、残りの10%は夕食前後の間食(Sn)で摂りました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図の実線が糖質控えめ食、点線が通常糖尿病食です。下側のグラフは2つのグラフの差を示しています。食事をしていない睡眠中の血糖値は差がありませんが、それ以外のほとんどに時間帯で血糖値が大きく違います。朝食を摂ってから16時間前後ずっと通常の糖尿病食の方が血糖値が高いのです。
パラメーター | 通常糖尿病食 | 糖質控えめ食 |
平均血糖値(mg/dL) | 154.8 | 138.6 |
食後血糖値 | ||
朝食後 | 181.8 | 153.0 |
昼食後 | 169.2 | 144.0 |
食後血糖変動幅 | ||
朝食後 | 61.2 | 23.4 |
昼食後 | 50.4 | 23.4 |
最大血糖値 | 226.8 | 181.8 |
曲線下面積(時間×mmol/L) | ||
10mmol/L(180mg/dL)より大 | 6.4 | 0.1 |
7.8mmol/L(140mg/dL)より大 | 25.4 | 6.5 |
血糖値70~180mg/dLの時間の割合(%) | 80.4 | 97.2 |
高血糖値の時間の割合(%) | ||
10mmol/L(180mg/dL)より大 | 18.0 | 0.8 |
7.8mmol/L(140mg/dL)より大 | 51.3 | 37.7 |
表のように、糖質控えめで通常よりも最大値も食後の血糖値の変動幅も大きく低下しています。
さらに、糖質を控えめにするだけでも、通常より血糖値が180を超える割合は18%から0.8%まで低下しています。140を超える割合も、通常の糖尿病食では51.3%と1日の半分以上が140以上の血糖値になっているのですが、それが糖質控えめで37.7%まで低下しています。
たった54%の炭水化物を31%まで減らすだけでもこれだけの低下を認めます。もちろん、まだまだ糖質量は多いので、これでは糖尿病の逆転には足りませんが。ちゃんと糖質制限をすれば、さらに血糖値の変動は少なくなります。
例えば下の図は私のフリースタイルリブレの記録の一部です。(非糖尿病ですが)
学会や栄養士が勧める糖尿病食の糖質量では非常に危険です。摂取する糖質量がそのまま血糖値に反映することを全く考えていない食事をするべきではありません。糖質制限は始めたその日からすぐに血糖値変動を減少させます。
糖質過剰症候群
「The clinical effects of a carbohydrate-reduced high-protein diet on glycaemic variability in metformin-treated patients with type 2 diabetes mellitus: A randomised controlled study」
「2型糖尿病のメトホルミン治療患者の血糖変動に対する炭水化物低減高タンパク質食の臨床効果:無作為化対照試験」(原文はここ)
いつも勉強させていただいております。
有益な情報発信、ありがとうございます。
新型コロナの流行から約半年。
多くの医師がブログやSNSを通じて新型コロナに対して思うところを発信されていらっしゃるのを拝見しましたが、清水先生をはじめとする糖質制限推進派の先生方は常に冷静で、信頼できるデータを引用しながら「正しく怖れる」ように情報を発信されていらっしゃったように見受けられます。
素人の私にはうまくいえませんが、人間や病気にしっかり向き合っていらっしゃる姿勢が感じられました。糖質制限のおかげて年齢の割に不調が少ないタイプだと思いますが、何かあったときにはこういう先生にお世話になりたいものだと心から思いました。
先日、たまたまSNSでシェアされたとあるドクターの記事が、新型コロナの恐怖を煽り、クラスターが発生した組織やマスクを身に着けない人を手酷く批判するような内容で、同じドクターでもこういう情報を発信するんだと驚き、残念な気持ちになりました。
しかも、その直後の記事で菅新総裁の好物の糖質満載なパンケーキを宣伝していて……正直この先生にはお世話になりたくないなぁ、と思いました。
普段無料で読ませていただいているお礼も兼ねて(「糖質過剰」症候群は買いました!)コメントさせていただきました。
cornet de chocolatさん、コメントありがとうございます。
拙著のご購入ありがとうございました。
「信頼できるデータ」かどうかは実際のところはわかりませんが、糖質制限をしている人は、情報をうのみにしない癖があるのかもしれません。
もし、世の中の情報をうのみにしていれば、糖質制限などしていないわけですから。
恐怖や不安を煽ることは今に始まったことではありません。ビジネスモデルでしたから。これまでは様々な不安を煽り病院を受診させていましたが、
今回は逆に受診抑制となってしまいましたね。
インフルエンザでも大騒ぎする国民を作り出すことに成功しましたが、今回は過剰反応になりすぎて、日本もボロボロですね。
菅さんに軌道修正ができるかな?
「糖質制限をしている人は、情報をうのみにしない癖があるのかも」
糖質が良くない理由を自分の頭で理解している人は本当にそうですね!ダイエットにいいと安易に飛びついただけの糖質制限者だとダメだと思いますが…。
世の中の常識に捕らわれず、自ら情報を収集し、その中で正しいものを選択できる、自分の頭で考えられる人。本当に少ないです。みんな口にオムツして嵐が過ぎ去るのを待っているだけです。
ほそかわさん、コメントありがとうございます。
自分で考えて判断することは本当に大事だと思います。