北海道は新型コロナウイルスのPCR検査陽性者が日本国内で一足早く急増し、その後本州の他の地域も急増していきました。北海道は上手くいけば(?)すでにピークを過ぎていて、このまましばらくは横ばいか漸減してくるでしょう。これから本格的な冬がやってくるので、もう一山来る可能性がありますが、やはり日本の感染者は非常に少ないようです。それにも関わらず日本の医療は崩壊する、と言われています。なんと脆弱な医療体制でしょう。制度、法律などを柔軟に運用をすれば、余裕なはずです。

ところで、日本をはじめアジアの国は非常に死者数が少なく、その理由が不明で様々な要因が考えられています。これまでも何度も取り上げてきたBCGワクチン以外にも、最近いくつかのワクチンとの関連が指摘されています。

まずは日本脳炎ワクチンです。北海道のPCR検査陽性者がちょっと前に急増していることを受けて、北海道は日本脳炎ワクチンを定期接種していないことと関連付けたかったのでしょう。(この記事参照)

しかし、北海道の陽性者急増はタイミングが早かっただけの話です。確かに北海道は最近まで日本脳炎ワクチンを接種していませんでした。(同じ日本なのに、蚊が生息していないという理由で接種していないなんて変な話です。北海道の人だって本州や海外に行きますから。)

では、北海道は本当に死亡率が高いのでしょうか?2020年12月1日現在のそれぞれの都道府県のPCR陽性者数、死亡者数を見てみましょう。(データはここを参照)(人工呼吸のデータは12月2日現在、ここ参照)

人口PCR陽性者数死者数死者数/陽性者人口10万人当たりの死者数人口10万人当たりの人工呼吸患者
北海道528.1万9,0752080.0233.940.53
東京都927.3

1397.1万

41,3114940.0125.33

3.54

0.52

0.34

大阪府882.3万20,5914260.0213.691.16
沖縄県146.7万4,353690.0164.740.27
日本全体1億2337万149,9132,1710.0141.760.23

この記事の江戸川病院の先生はPCR検査陽性者を感染者と勘違いしているのかもしれません。日本のPCR検査はCt値が非常に高いので、感染性が無くても陽性となる割合が高くなります。検査数を増やせば当然陽性者は多くなります。

確かにPCR検査陽性者数から見たら北海道の死者数は東京よりも2倍近く高くなりますが、大阪と比べたらそれほどの違いは認められません。大阪は日本脳炎ワクチンの接種率が低いのでしょうか?現在の人工呼吸器装着患者数も大阪が非常に高く北海道の2倍以上です。(それにしてもなぜ現在、大阪は突出して重症者、人工呼吸患者が多いのでしょうか?人工呼吸は東京と比べても2倍3倍以上です。全国平均の5倍です。)

死者数を陽性者ではなく人口10万人当たりで見てみると、東京が最も高くなります東京、大阪と北海道はあまり違いはありません。

また、この先生は論文の中で「日本、ラオス、マレーシア、ネパール、韓国、タイ、スリランカ、ベトナムなど、日本脳炎ワクチンの予防接種が普及している、または国のプログラムに含まれている国のCOVID-19による致死率は、日本脳炎ワクチン予防接種を受けていない国と比較して非常に低い」と述べられています。(論文はここ

では、見てみましょう。上の8か国は日本脳炎ワクチン接種国です。下の4か国は非接種国です。(データはここを参照)(ここも参照)

人口PCR陽性者死者数死者数/陽性者人口100万人当たりの死者数
日本126,312,634150,3862,1720.01417
ラオス7,319,51439000
マレーシア32,538,93268,0203650.005411
ネパール29,354,228236,2461,5380.006552
韓国51,287,79135,1635260.01510
タイ69,873,7274,026600.0150.9
スリランカ21,450,99625,4101240.00496
ベトナム97,705,1571,358350.0260.4
パキスタン222,669,232403,3118,1660.02037
バングラデシュ165,375,504469,4236,7130.01441
ブータン775,157414000
シンガポール5,869,62158,230290.000505

確かに日本脳炎ワクチン接種国では死亡率が低い国が多いですが、これはアジアの多くの国がそうです。陽性者の中での死者の割合でも、ワクチン接種と非接種では大きな違いが無いように見えます。日本と比較してほとんど違いが無いか、日本よりかなり低い割合です。

人口100万人当たりの死者数でもワクチン接種との関連はあるとは思えません。

国によってPCR検査をどの範囲でやるかは大きく違いますし、Ct値も大きく違うでしょう。そうすればPCR検査陽性者を比較しても何の意味もありません。人口当たりで判断する方が妥当でしょう。日本脳炎ワクチン接種国のネパールなどは平均寿命でも世界で100位以下であり、高齢者が非常に少ないのにも関わらず人口当たりの死者数が非常に多いので、日本脳炎ワクチンはあまり関係ないのではないでしょうか?

ただ、欧米に比べたら非常に少ないのは確かなので、影響はゼロではないかもしれません。

ちなみに日本の2016年度感染症流行予測調査事業に基づき報告された日本脳炎ワクチン接種率は、接種歴不明者を合わせると53.6%(接種有857名/未接種243名/接種歴不明499名)で、不明者を除くと78%でした。(ここ参照)

 

次におたふく風邪のワクチンについてです。おたふく風邪(ムンプス)を含むMMRワクチン接種歴のある人では、ムンプス抗体価のレベルと新型コロナの症状が反比例の関係にあるという研究が報告されました。MMRワクチンは、はしか(麻疹)とおたふく風邪と風疹のワクチンですが、面白いことにはしかと風疹の抗体価とは関連せず、おたふく風邪の抗体価のみが関連していました。さらに面白いことにワクチン接種歴がない人ではムンプスの抗体価と新型コロナの関連は認められませんでした。(図は原文より)

 

上の図は縦軸がムンプス抗体価で、横軸が症状の程度です。右に行くほど症状が重い人です。新型コロナの症状の度合いを0~30段階で評価し、0は機能的免疫の人、1を「検査では陽性だが無症状だった人」とし、21以上を重症としています。一番左の機能的免疫というのは「数日間、新型コロナ陽性で症状がある患者とマスク無しまたは近距離での濃厚接触があったにも関わらず検査で陰性」の人です。ムンプス抗体価と症状が反比例しているのがわかります。

 

 

上の図は症状のスコアと抗体価の関連です。さらにさらに面白いことに、MMRワクチン接種者では、ムンプス抗体価が134~300 AU/mlの人は全員が症状が0または1でした。また、軽症の人は全員がムンプス抗体価が134 AU/ml未満であり、中等症の人は全員が75 AU/ml未満であり、入院して酸素を必要とした人は全員が抗体価が32 AU/ml未満であったのです。(ちょっと話が出来過ぎの感じもありますが)

日本ではMMRワクチン接種は中止されていて、おたふく風邪のワクチンは任意接種です。恐らくは接種率は40%程度でしょう。MMRワクチンが有効であるのか、日本のような単独のおたふく風邪ワクチンでも有効であるのかは不明です。

日本ではBCGワクチンが新型コロナから守ってくれているのかもしれませんが、海外で子供たちを守ってくれているのがこのMMRワクチンかもしれません。大人になるとムンプス抗体価は低下し、保護効果がなくなるのかもしれません。

抗体は特異的なものと考えられていますので、ムンプス抗体が新型コロナウイルスの症状の重さと関連しているのは不思議な気がします。しかし、ムンプス抗体を高く保てる人はその分免疫機能が訓練されていて、自然免疫やT細胞の働きが非常に強いのかもしれません。

いずれにしても、様々なワクチンや様々な過去の感染が私たちの体の免疫機能をブーストしたり、訓練したりしてくれていると思います。日本でも東京など都会で死亡率が高いのは、人間同士の接触の頻度が高いこと、つまり人口密度が高いこともあると思いますが、もしかしたら自然環境が清潔になり過ぎで、土などと触れ合う機会が激減して、様々な細菌やウイルスとの接触も激減しているため、免疫機能が訓練されずに免疫が低下しているのかもしれません。

これまでの免疫学、感染症学はあまり役に立たないかもしれません。いわゆる感染症の専門家は過去の知識に頼り過ぎて、今の新型コロナにはついていけていないように感じます。

人間にとって免疫が非常に重要な機能であることは間違いありません。過度な消毒、感染防御などを行っている現在の状況で、子供たちの免疫機能の低下が非常に心配です。野生に戻るわけにはいきませんが、新型コロナに感染することを恐れて、家の中に閉じこもったり、消毒してばかりでは、今回は感染から逃れることができたとしても、次に来る新たなウイルスなどに立ち向かうことができないかもしれません。

 

「Analysis of Measles-Mumps-Rubella (MMR) Titers of Recovered COVID-19 Patients」「回復したCOVID-19患者の麻疹-おたふく風邪-風疹(MMR)力価の分析」(原文はここ

4 thoughts on “新型コロナウイルスとBCG、おたふく風邪、日本脳炎ワクチン”
  1. 大阪の住民ですが、重症者のベット逼迫で今日から「不要不急の外出は自粛してね」になってしまいました。この程度(欧米の数十分の1)で医療崩壊が懸念されるなんて、なにか日本の医療システムがおかしい!のだと思います。
    gotoを利用して10月に行った「すすきの」の今も気になってます。

    ところで、都道府県の表ですが、
    東京都の人口、927.3万となってますが、1397万程度ではないでしょうか?(令和2年10月推計)
    1397万として人口10万人当たりの死者数を計算すると(5.33→)3.54となり、東京都が最も低くなります。

    1. 愛読者さん、コメントありがとうございます。

      間違いのご指摘ありがとうございました。早速訂正させていただきました。
      それにしても大阪は何が他のところと異なるのでしょうかね?

  2. 海外と日本(アジア)、年代別でこれだけ重症化率や死者数が異なる
    (日本では十代の死亡者ゼロ)、要因を明らかにすることで予防や治療につなげられることを期待しています。

    ただ、現在日本医師会が盛んに喧伝していらっしゃる「医療崩壊」は、今まで色んな意味で国民の負担の上にあぐらをかいていた結果なのでは?
    なんて言ったら、医療関係者から叱られてしまいますね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      医師会、厚労省などいろいろと思惑があるのでしょうね?
      それにしてもアジアと欧米のこれほどの違いの本当の理由がわかると良いですが、恐らくは結論は出ないのではないかと思います。

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