ビーガンやベジタリアンは本来肉食(雑食でもありますが)の人間にとって必要な栄養素が十分には摂れません。その弊害の一つとして骨折のリスク増加があると考えられます。
今回の研究では、ベジタリアンとビーガンの骨折リスクを比較しています。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は骨折のリスク比です。上から、全骨折、上腕骨折、手首の骨折、股関節の骨折、下肢の骨折、足首の骨折、その他(鎖骨、肋骨、椎骨)です。肉を食べる人を1として、魚を食べる人(肉は食べない)、ベジタリアン、ビーガンでのリスクを比較しています。最も強い関連性は股関節骨折で、魚を食べる人、ベジタリアン、ビーガンはすべてリスクが高くなりました。特にビーガンは股関節骨折のリスクが2.3倍でした。それ以外ではビーガンでは下肢とその他(椎骨など)のリスクが高くなっていました。
変数 | ハザード比(95%信頼区間) | |
---|---|---|
年齢 | 50歳未満 | 50歳以上 |
肉を食べる人 | 1 | 1 |
魚を食べる人 | 0.86(0.73、1.01) | 0.99(0.87、1.14) |
ベジタリアン | 1.00(0.88、1.13) | 1.14(1.01、1.27) |
ビーガン | 1.31(1.03、1.67) | 1.50(1.17、1.93) |
性別 | 男性 | 女性 |
肉を食べる人 | 1 | 1 |
魚を食べる人 | 0.94(0.73、1.21) | 0.95(0.85、1.06) |
ベジタリアン | 1.06(0.88、1.28) | 1.09(0.99、1.20) |
ビーガン | 1.18(0.85、1.62) | 1.53(1.24、1.88) |
更年期状態 | 閉経前 | 閉経後 |
肉を食べる人 | 1 | 1 |
魚を食べる人 | 0.64(0.47、0.87) | 1.01(0.88、1.17) |
ベジタリアン | 0.91(0.73、1.15) | 1.13(0.99、1.28) |
ビーガン | 1.41(0.93、2.15) | 1.62(1.22、2.16) |
身体活動 | 非アクティブ/低 | 中/高 |
肉を食べる人 | 1 | 1 |
魚を食べる人 | 0.94(0.82、1.08) | 0.96(0.79、1.16) |
ベジタリアン | 1.09(0.98、1.22) | 1.03(0.88、1.22) |
ビーガン | 1.43(1.13、1.80) | 1.34(0.98、1.82) |
BMI | <22.5 | ≥22.5 |
肉を食べる人 | 1 | 1 |
魚を食べる人 | 0.95(0.81、1.11) | 0.97(0.84、1.11) |
ベジタリアン | 1.17(1.02、1.33) | 1.04(0.92、1.17) |
ビーガン | 1.66(1.32、2.08) | 1.10(0.80、1.49) |
上の表は様々な要因でのリスク比の比較です。ビーガンの有意な骨折との関連性は、女性、特に閉経後の女性、および身体活動が低く、BMIが低い人でより強くなりました。
さらにビーガンでの骨折のリスクが高いことは、食事のカルシウムとタンパク質を調整した後も依然として有意でした。
もしかしたら、植物性タンパク質と比較して動物性タンパク質の方がインスリン分泌やIGF-1分泌が骨形成に対して十分な分泌量なのかもしれません。さらに、動物性と植物性のタンパク質の違いが何らかのシグナル伝達の違いを生んでいるのかもしれません。
また、ビーガンでの骨折リスク増加は、骨の健康状態の悪化だけでなく、筋肉量、筋力などの低下による転倒リスクの増加も関係あるのかもしれません。
さらに以前の記事「ビーガンは酸化ストレスが増加する」で書いたように、ビーガンの酸化ストレスの増加が骨や筋肉に悪影響を与える可能性もあるでしょう。
いずれにしても我々は肉を食べて進化してきました。肉や魚、卵をしっかり摂って骨の健康を維持しましょう。
「Vegetarian and vegan diets and risks of total and site-specific fractures: results from the prospective EPIC-Oxford study」
「ベジタリアンとビーガンの食事と全体および部位特異的骨折のリスク:前向きEPIC-オックスフォード研究の結果」(原文はここ)
おはようございます。
ビーガンの有名ウルトラトレイルランナー、スコット・ジュレク著『NORTH北へ』読んでました。
食事はビーガン食。活動量が桁違いな為、ドーナツやケーキなどはムシャムシャ食べる
(ビーガン用のオーガニック)。食事はやはり健康的とは思えないですね。
ところで
昨日の相澤晃選手、素晴らしい走り、感動しました。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
糖質たっぷり、ビーガン食でウルトラトレイルとは大変そうですね。
私は女子10000mで新谷仁美選手の圧巻の走りが素晴らしいと思いました。ほとんどすべての選手を周回遅れにしていました。
世界と戦えるかもしれません。しかし、素晴らしい走りは彼女だけで、逆に言えば選手層が非常に薄いとも言えます。