小さな子供にリンゴジュースを与えることはやめた方が良いかもしれない

フルーツジュースは健康的なイメージがあり、赤ちゃんにも適した飲み物と考えている人もいるかもしれません。しかし、特にリンゴジュースは乳児の疝痛(健康な赤ちゃんがあやしても何をしても激しく泣き続ける状態)を起こしてしまうかもしれません。

今回の研究では30人の健康な乳児(平均5.1か月)の親に疝痛があったかどうかを質問し、あったグループとなかったグループに分けました。そして、それぞれのグループに120mlの白ブドウジュースまたはリンゴジュースを与えました。ジュースを飲んだ後の0.5時間から3時間後までの身体活動、エネルギー消費量、泣いている時間、睡眠時間、呼気水素(炭水化物の吸収不良の指標)を測定しました。(図は原文より)

上の図は上が白ぶどうジュース、下がリンゴジュースです。グラフは上から呼気水素、泣いている時間、寝ている時間です。●が疝痛のある乳児、□が疝痛のない乳児です。白ぶどうジュースは全ての項目で疝痛のあるなしで違いはありませんでした。

一方リンゴジュースグループでは、疝痛のある乳児グループでは呼気水素排泄増加を認め、炭水化物の吸収不良を示しました。疝痛のない乳児グループでは吸収不良はなく、呼気水素排泄増加はありませんでした。また、疝痛のある乳児グループではこの研究の最後の1.5時間の間、より泣き、その結果、睡眠が少なくなりました。

上の図は身体活動とエネルギー消費量の図です。疝痛のない乳児にリンゴジュースを与えたグループと比較して、疝痛のある乳児にリンゴジュースを与えたときには身体活動もエネルギ消費量も高くなりました。これは先ほどの泣いている時間が長く、眠りが少ないことと関連しています。

白ぶどうジュースでは疝痛のあるなしにかかわらず身体活動、エネルギー消費量の変化はありませんでした。

何が違うのでしょうか?白ぶどうジュースとリンゴジュースでは、実はそこに含まれる糖質の割合がかなり違うようです。

白ぶどうジュース:ソルビトールを含まない、果糖とブドウ糖の比率1:1

リンゴジュース:ソルビトール0.5g/dL、果糖とブドウ糖の比率2.6:1

つまり、ソルビトールが含まれていたり、果糖の比率が多いフルーツジュースは疝痛と関連があるようです。

(上の図はこの論文より)

上の図は黒いバーがリンゴジュース、白いバーが白ぶどうジュースです。縦軸は呼気の水素ガスの曲線下面積、横軸は左から6か月の乳児、真ん中が18か月児、右が両方の年齢グループの合計です。どの年齢でもリンゴジュースの方が曲線下面積は大きく、吸収不良が生じていることがわかります。下痢の原因にもなるでしょう。

以前の記事「1歳未満の赤ちゃんにフルーツジュースは与えてはいけない!とアメリカの小児学会の勧告」で書いたように、アメリカの小児学会では、1歳未満の赤ちゃんにフルーツジュースを与えないように勧告を出しています。

吸収不良を起こす人と起こさない人の違いは何で起こっているのかはわかりません。遺伝なのか、腸内細菌の違いなのか。しかし、大人になっても果糖の吸収があまりできない人がいるということは、果糖吸収は人間の標準装備ではないのかもしれません。

チンパンジーは雑食ですが、主に果実を食べるとされています。そうすると、進化の過程では人間とチンパンジーが分かれた後に、変化したメカニズムが関係しているのか、人間の一部が何らかの理由で果糖の吸収を低下または失ったか、でしょうか?それともチンパンジーは果糖の少ないフルーツを選んでいるのでしょうか?

1日1個のリンゴは医者を遠ざける、ということわざもありますが、160年くらい前のことわざです。現在のフルーツは甘くなりすぎて、1個も食べると有害性が上回っている可能性もあります。

果糖を大量に含む、フルーツジュースは決して「ヘルシー」ではありません。せめて、子供用のフルーツジュースには腹痛や下痢などの注意喚起を載せるべきでしょう。

糖質制限

「Association between infantile colic and carbohydrate malabsorption from fruit juices in infancy」

「乳児疝痛と乳児期のフルーツジュースからの炭水化物吸収不良との関連」(原文はここ

6 thoughts on “小さな子供にリンゴジュースを与えることはやめた方が良いかもしれない

  1. チンパンジーかどうかは忘れましたが、熟れている果実を好む訳ではなく、傷んでいる果実を選ぶ傾向にあり、果肉はよく吐き出している事が良く観察され、おそらく潜んでいる昆虫または、幼虫を食べているのではないか

    という記述を見た事があります

    1. 糖尿人の息子さん、コメントありがとうございます。

      面白い情報ですね。情報源が分かれば教えて下さい。

  2. 母親の実家が代々りんご園農家
    です母親家系全員緑内障です
    母親も実家から送られるりんご
    を長年継続的に沢山食べてました
    りんごが第四の糖尿病緑内障の
    原因かも?
    母親が心臓発作で2回救急車で
    運ばれましたが原因不明でした
    母親は自分でネットで調べて
    原因が分かりました
    緑内障眼圧を下げる目薬でした
    (チモプトール)危うく目薬で
    死ぬところでした
    主治医、眼科医、救急医が
    気がつか無いのが怖いです

    1. 山崎 勝巳さん、コメントありがとうございます。

      リンゴが原因かどうかはもちろん不明だと思いますが、糖質過剰摂取はありそうですね。

  3. 糖質アレルギーでありませんが、糖質制限で甘味には敏感になりました。
    市販の惣菜を甘く感じて表示を見ると砂糖使用。
    捨てるのも罰あたりなので仕方なく食べます。        
    逆に甘味に飢える時もあり、糖質少なめのお菓子やアイスなどを爆食いしてしまいます。

    左程、世の中に甘味はあふれ、糖質/甘味依存は根深いものがあります。
    そして糖質摂取後、肥える(浮腫む)、ボンヤリして頭が働かなくなるのも実感してます。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限をすると、確かに甘味に敏感になりますね。
      糖質依存は本当に強く、抜け出るのが大変な人も多いでしょうね。

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