脂肪分の多い食事は本当に消化が遅いのであろうか?

脂質は一般的に消化が悪いと考えられています。胃内の停滞時間については次のような時間を聞いたこともある人も多いと思います。(ここ参照)

炭水化物(ご飯・パン・麺)・・・2~3 時間。
タンパク質(魚・肉・卵・豆腐)・・・4~5 時間、
脂肪・・・7~8 時間

糖質制限をすると自ずと高脂肪食となります。しかし、私は満腹に食べても数時間もすれば、決して空腹感を感じるわけではありませんが、お腹は普通の状態に近い状態になります。5時間とか8時間などかかるとは思えません。

そして、上の胃内の停滞時間についての元ネタを見たことがありません。これまで伝えられているただの神話ではないかと思います。

以前の記事「炭水化物(糖質)は非常に消化に悪い!」で書いたように、炭水化物、特にお米は消化が良いとは思えません。6時間でもお米はかなり胃に残っています。

また、以前の記事「大量のコレステロールを摂るとどうなるか? その1」で書いたように、自分自身の人体実験では、卵10個を一気に食べた後の血液検査では、脂質60gでしたが、食後1時間後の中性脂肪値が最も高く、その後はやや低下するものの横ばい、そして4時間後では明らかに低下してきています。1時間後にすでに中性脂肪が最も高くなっていることを考えると、それほど脂質の消化吸収が遅いとも言えません。また、その実験で1時間後だけが「乳び(1+)」でした。

今回の研究では糖質制限ではありませんが、低脂肪食と高脂肪食でどうなるかを調べています。低脂肪食はタンパク質121.7g、炭水化物419.27g、脂質11.6gであり、高脂肪食にはさらに脂質が258g加わりました。4日間と14日間その食事が行われました。(図は原文より)

上の図は4日間での、左の図が胃の中の食事の半分が通過して空になるのに必要な時間です。図の左側が低脂肪食、右側が高脂肪食です。また右の図は食後の100分後に胃の中に停滞している割合です。そうすると、高脂肪食がやや胃の半減時間が低下しているように見えますが、115分対110.5分で有意差はありません。しかし、停滞割合は57%対50%で有意に高脂肪食で停滞する食事の割合が少なくなりました。

 

上の図は14日間後のものです。左の図は胃の中の食事の半分が通過して空になるのに必要な時間です。右の図は口から盲腸(大腸の入口)への通過時間です。胃の半減時間は147分対98分で有意に高脂肪食の方が胃の通過時間が短縮しました。口から盲腸への通過時間も360分対240分で高脂肪食の方が2時間も時間が短縮しました。

糖質制限でのこのような食事の消化時間の研究は、恐らくまだないと思います。だから、何とも言えませんが、何と組み合わせた食事なのかによって消化の時間は変化するでしょう。

研究によっては高脂肪食の方が遅いというものもあるでしょう。しかし、そうとも限らないのです。脂質を胸やけなどの原因の一つとして責任をかぶせるためにそのように言われていたのかもしれません。

私の人体実験からすると、糖質制限の場合では高脂肪食の消化は非常に良いと考えます。

 

「Gastrointestinal adaptation to diets of differing fat composition in human volunteers」

「人間のボランティアでの異なる脂質組成の食事への胃腸の適応」(原文はここ

6 thoughts on “脂肪分の多い食事は本当に消化が遅いのであろうか?

  1. 人出が多いのか、少ないのか、不思議なゴールデンウィークです。

    ご存知かとは思いますが、
    金森重樹さんという方が提唱・実践している断糖高脂質ダイエット。
    効果をあげている芸能人もいらっしゃるぐらい、脂肪摂取=肥満ではないのでしょう。

    消化時間についても、常識やイメージが大きい、ような気がします。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      脂質が太るという洗脳はなかなか抜けませんね。

  2. 夏井睦先生も炭水化物は消化に悪いと仰ってますね。
    風邪の時に消化に良いと思ってお粥を食べたりしますが湯豆腐とかのほうが良いのかな〜って思うようになりました。

    「ご飯やうどんは消化によい」と世間に流布している常識のほうが、間違っているのだ。  このことは、消化器内科や消化器外科の医者なら、日常的に実感しているはずだ。  たとえば、緊急内視鏡検査では、普通に食事をしたあとの状態の胃のなかを見ることになるし、十二指腸潰瘍穿孔で急性腹膜炎が起きた時には、緊急開腹術が行なわれ、胃袋を切開することになる。  そんな時、きまって目に入るのは、米粒と麺類と野菜だ。しかし、ステーキを食べた直後でも、肉の塊はどこにもないのだ。」

    引用元
    —『炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~ (光文社新書)』夏井 睦著

    1. 匿名希望さん、コメントありがとうございます。

      風邪や手術後に必要な栄養はタンパク質のはずですから、お粥を食べることは逆効果となる可能性もあるでしょうね。

  3. >脂質を胸やけなどの原因の一つとして責任をかぶせるため

    糖質制限すれば、速やかに逆流性食道炎は治りました。それ以前よりも脂質の摂取量は格段に増えているにもかかわらずです。
    したがって胸やけの原因は明らかに糖質です。
    私はうどんを食べると食後血糖値のピークが4~5時間後になります。このことからも炭水化物は消化が悪いのは明らかです。

    アメリカの代表的な病人食はチキンスープです。弱った胃腸に消化の悪い炭水化物(お粥)で負担をかけるよりもこちらの方が理にかなっていると思います。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      チキンスープでも卵スープでも、タンパク質の方が病人には必要でしょう。
      日本ではタンパク質の方が消化が悪くて、胃腸に負担がかかると思い込まれてしまっています。

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