中性脂肪値について、あまり関心がない医師もいるようですが、私はかなり重要視しています。
以前の記事「中性脂肪値と血糖値だけで様々な疾患のリスクを評価できる」で書いたように、TyGインデックスはインスリン抵抗性のマーカーで、この数値が高いと様々な疾患のリスクが高くなることが示されています。(測定はここから)
今回の研究では2型糖尿病において、インスリン抵抗性を表すHOMA-IRとTyGインデックスのどちらが動脈硬化に強く関連しているかを分析しています。
3,185人の平均年齢54.6歳の2型糖尿病の人の中性脂肪値と空腹時血糖値よりTyGインデックスを計算して、HOMA-IRと比較しています。(表は原文より改変)
動脈硬化の増加 | ||
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オッズ比(95%CI) | P値 | |
TyGインデックス | 1.40(1.16、1.70) | <0.001 |
三分位1 | 1 | |
三分位2 | 1.40(1.06、1.83) | 0.017 |
三分位3 | 1.49(1.09、2.04) | 0.013 |
HOMA-IR | 1.00(0.995、1.01) | 0.886 |
三分位1 | 1 | |
三分位2 | 1.22(0.93、1.61) | 0.155 |
三分位3 | 1.29(0.95、1.74) | 0.103 |
TyGインデックスの1の増加は動脈硬化の増加の可能性が40%増加していました。TyGインデックスの値に従い3つのグループに分けたときの一番低いグループと比較すると、一番高いグループでは49%動脈硬化の増加の可能性が高くなりました。ちなみに最も低いグループのTyGインデックスの平均は8.45で、一番高いグループは9.94でした。
TyGインデックスは2型糖尿病において、インスリン分泌にかかわる薬剤の影響を受けないので、インスリン抵抗性のマーカーとしてHOMA-IRよりも有効であるかもしれませんし、何といっても簡単に測定できます。
TyGインデックスが8未満というのが一つの目標値だと思います。空腹時血糖が100だとすると中性脂肪値は60未満が目標です。空腹時血糖が90だとすると中性脂肪値は66未満です。空腹時血糖が100、中性脂肪値が100だとTyGインデックスは8.5を超えます。
一度計算してみてください。
糖質過剰症候群
「Stronger association of triglyceride glucose index than the HOMA-IR with arterial stiffness in patients with type 2 diabetes: a real-world single-centre study」
「2型糖尿病患者におけるHOMA-IRよりも中性脂肪グルコース指数と動脈硬化との強い関連性:実際の単一施設研究」(原文はここ)
健康診断、やはり空腹時血糖と中性脂肪を毎回チェックします。
(作家の佐藤優さんが、「一流の人材は健康を最優先に考え」そこまでは納得ですが、
「通常の健康診断では検査項目限られる為、人間ドックに何万円も費やす」とのこと。
数値の異常による早期の治療が必ずしも健康寿命に繋がらないのでは?)
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
健康診断や人間ドックはこれまでの定説に基づいたことにより判断されてしまいます。
基準値さえ満たしていればOKの世界です。
糖質制限をしている場合、LDLコレステロールが上昇することが多く、治療対象になってしまいます。
空腹時血糖値、中性脂肪値は前日の食事や身体活動によって変動します。
また、体質による個人差も大きい項目であると思います。
この2つで動脈硬化の指数を把握するというのは、いささか拙速かなと思います。
それよりも、健診のオプションで頸動脈エコー検査をして、現実を確認するほうが確実です。
私はTyGインデックスが8を超えていますが、頸動脈エコーでは左右とも表面平滑、プラークなしで動脈硬化の状態にはないとのお墨付きを得ています。
田端さん、コメントありがとうございます。
前日に過度な運動をせず、お酒を飲まずに、12時間以上の絶食をすれば、それほど影響は受けないと思います。
もちろんエコーで確認するのは良いのですが、簡便であることと、あくまでリスクの話です。