肥満は様々な疾患、症状の危険因子です。神経変性疾患のリスクも高くなるでしょう。
今回の研究では平均年齢41歳の太りすぎまたは肥満の人と正常範囲のBMIの人のSPECTスキャンという検査で脳血流を比較しています。(図は原文より)
上の図は脳血流が低下している脳の部位を示しています。脳全体で血流の減少を認めましたが、特にこの研究では前頭葉の分析をしています。前頭前野および前帯状回という部位の血流低下を認めました。
前頭前野というのは、
「前頭前野はヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。前頭前野は系統発生的にヒトで最もよく発達した脳部位であるとともに,個体発生的には最も遅く成熟する脳部位である。一方老化に伴って最も早く機能低下が起こる部位の一つでもある。この脳部位はワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プラニング、推論などの認知・実行機能を担っている。また、高次な情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程も担っている。さらに社会的行動、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係している。」(ここ参照)
つまり、人として最も重要な脳の部位とも言えます。人間らしく生きるためにはこの脳の部位の働きが欠かせません。この前頭前野の機能が破壊されると人格が大きく変化するとも言われています。肥満では破壊まではされなくとも機能低下が起きる可能性があります。
前帯状回というのは、
「大脳半球内側面の前方部に存在する、帯状溝周辺および帯状回の領域であり、ブロードマン24野、ブロードマン25野、およびブロードマン32野に相当する。ACCは特にヒトにおいて、担う機能の違いから、行動モニタリングおよび行動調節に関わる領域、社会的認知に関わる領域、および情動に関わる領域に大きく分かれる。」(ここ参照)
また、前頭前野や前帯状回の機能低下は注意欠陥多動性障害 (ADHD) と関係していると考えられています。肥満でのADHDの有病率は非常に高いと言われています。
BMIの上昇は前頭前野機能の低下と実行機能障害のリスク要因である可能性があることを示しています。
恐らくこれには、肥満というよりは脳のインスリン抵抗性が関係していると考えられます。肥満ではなくても脳のインスリン抵抗性は起こると考えられます。糖質過剰摂取ではもしかしたら前頭前野の血流が低下しているかもしれません。
糖質過剰症候群
「Elevated BMI is associated with decreased blood flow in the prefrontal cortex using SPECT imaging in healthy adults」
「BMIの上昇は、健康な成人のSPECTイメージングを使用した前頭前野の血流低下と関連しています」(原文はここ)
フィニアス・P.ゲージ(Phineas P. Gage、1823 – 1860)の事例(人格者の彼が、事故で
前頭部損傷、一命とりとめたが、彼の友人や知人からは「もはやゲージではない」
と言われるほどに変貌。)
諸説あるようではありますが,
とても印象的でした。