スポーツドリンクに含まれる電解質には意味がない

暑い季節になると、頻繁に脱水予防が叫ばれます。そして、汗と一緒に電解質も失われるから電解質の補給も必要だとマスコミで頻繁に取り上げられ、何も考えず鵜呑みにした人が電解質の入ったドリンク、つまりスポーツドリンクを日常の生活の中で飲んでしまいます。

新型コロナウイルスの不安や恐怖を植え付けられたのと同様に、テレビやいわゆる専門家が、脱水の不安や恐怖を植え付け、電解質入りドリンク、スポーツドリンクを飲まないと死んでしまうかのような錯覚に陥る人もいるでしょう。医師の中でも高齢者などにスポーツドリンクを勧めている人もいるようです。

日常生活の汗で危険なほどの脱水になるわけでも、電解質不足になるわけでもありません。いつでもどこでも水は手に入る世の中ですから。電解質は多少失われても体が自動的に調整してくれます。

今回の研究では、もっと過酷な状況で、たっぷりと汗をかくウルトラマラソンにおいて、レース中のナトリウムの補給と実際の血中のナトリウム濃度がどうなるかを分析しています。チリとパタゴニアおよびナミビア、モンゴルで開催された6日間で250kmの距離を走る「Racing the Planet」というウルトラマラソンの5つの大会の参加者計266人で行われました。研究はその80kmのステージで行われました。

レース開始前にそれぞれの「水分補給戦略」の予定を調査し、80km地点でその戦略がどれほどの順守できたかをアンケート調査しました。(アンケートによる自己申告なので、不正確ダル可能性があります。)また、スタート前と80kmでも体重測定、血液検査もしました。

それぞれの戦略は様々でしょうが、どの参加者も何らかの形(塩のサプリメントやスポーツドリンクなど)で電解質を摂取していました。

汗で失われると言われているナトリウムはどうなっていたでしょうか?血中のナトリウムが145を超えたものを高ナトリウム血症、135未満を低ナトリウム血症と定義し、その間の値が正常としています。(図は原文より)

上の図は上の横軸がレース前の体重、下の横軸がレースタイムで、縦軸はどちらもレース後のナトリウム値です。赤が高ナトリウム血症で30人、緑が低ナトリウム血症で11人、青は正常のナトリウムで133人でした。

低ナトリウム血症と診断された参加者は、他のグループよりもベースライン時の体重が約13〜14 kg高く、平均して8〜9cm身長が高く、80km走るのに5〜6時間長くかかりました。また、、1週間あたりのトレーニング距離と最大走行距離が大幅に長いことがわかりました。さらに高ナトリウム血症の人はBUNが高く、BUN/Cr比も20を超える人が90%を占めました。ただ、低ナトリウム血症であってもBUN/Cr比も20を超える人が55%、正常でも66%でした。低ナトリウム血症ではクレアチニンが1.4と高めでした。

上の図は水分の状態です。低ナトリウム血症では66.7%が水分過剰でした。高ナトリウム血症では脱水も多いのですが、適切な水分量の人が最も多くなりました。

上の図は体重の変化、ナトリウムの摂取量、レースの環境と血中のナトリウムの状態の関係です。低ナトリウム血症では水分の取り過ぎと思われ、体重減少が最も少なくなりました。低ナトリウムにもかかわらず、ナトリウムの時間当たりの摂取量、総ナトリウム摂取量はもっとも多くなりました。ただ、下の図に示すように、有意な差はありません。

上の図は横軸がナトリウムの1時間当たりの摂取量、縦軸がレース後のナトリウムです。ナトリウムの摂取量が多くても少なくても、血中のナトリウムはどうなるかはわかりません。つまりナトリウムの摂取量は関係しません。

上の図は左が暑いレース、右が寒いレースのものです。ナトリウム異常の88%は暑いレース中に発生し、暑いレースのランナーの37%、寒いレースの参加者の7%でナトリウム異常でした。
寒いレースと比較して、暑いレースでの低ナトリウム血症の可能性は3.5倍であり、高ナトリウム血症の可能性は8.8倍でした。

結果として、13~19時間を超えるレースで、体重が4kgも減少するレースでさえ、ナトリウムの補給は、低ナトリウムを予防したり、高ナトリウム血症を誘発したりしません。スポーツドリンクに含まれる電解質は意味がないのです。

脱水は危険であるという洗脳が完了し、しかも脱水と共にナトリウムも減少すると思わされています。しかし、このような過酷な状況でもナトリウムは変化しないことの方が多く、逆にたくさんのナトリウムを摂取しても、水分摂取が多くなればナトリウムは低下する可能性が高くなります。運動中に生じる低ナトリウム血症については脱水症よりも危険です。多くの人が心配する運動時での脱水症による死亡例は報告されていませんが、運動中の低ナトリウム血症による死亡報告はいくつもあります。

その人の通常の食事を摂って、通常の水分を摂っていれば、そんなに簡単に脱水にはなりませんし、ナトリウムも低下しません。しばらくの間外を歩くくらいなら、全く問題ありません。1時間くらい空調の効いたジムで汗を流しても水で問題ありません。飲料系の企業が、不安を煽っているだけです。(一部製薬会社系が煽っていますが)もし多少足りなくなれば、のどが渇き、飲水を促してくれますし、1日の食事の中の塩分で十分にナトリウムは賄われます。スポーツドリンクが有効だとする研究には通常スポンサーがお金を出しています。

暑い中で長時間の激しい運動をしたり、働いたりする場合には、それなりにナトリウムも失われるでしょう。しかし、それは水分とは別に塩分(例えば梅干し、チーズなど)を摂取すれば良いのです。昼食時や休憩時にいつもよりも塩気の多いものを食べれば良いのです。

ポカリスエット49mg(100mlあたり)
牛乳41mg(100mlあたり)
トマトジュース237mg(100mlあたり)
カマンベールチーズ800mg(100gあたり)
プロセスチーズ198mg(1枚18g当たり)
梅干し870mg(1個、10gあたり)
きゅりの漬物900mg(1本、90gあたり)
サバの水煮缶680mg(1缶、200gあたり)

スポーツドリンクのナトリウム濃度は実際には非常に低く、なんの役にも立ちません。それよりもそこに含まれる大量の糖質の方が問題です。

 

「Effect of Sodium Supplements and Climate on Dysnatremia During Ultramarathon Running」

「ウルトラマラソンランニング中のナトリウム異常に対するナトリウムサプリメントと気候の影響」(原文はここ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です