糖尿病の食事療法のガイドラインはこんな論文を根拠としている その2

先日の記事「糖尿病の食事療法のガイドラインはこんな論文を根拠としている その1」では、ガイドラインに採用されているエビデンスの元の論文について書きましたが、今日はこのガイドラインの次の文章の根拠となる論文についてです。

日本人を対象とし、炭水化物摂取量と合併症発生率との関係を検討した研究では、どの合併症においても関係は認められないとした。

確かに人種差がある可能性もあるでしょう。だから日本人の研究を採用するのは良いと思いますが、さすがにこの論文はあり得ません。

今回の研究では、炭水化物摂取量に応じて3つのグループに分けています。

次の表はベースラインでの炭水化物摂取量の割合に応じた、2型糖尿病の1516人の患者の1日あたりの食品グループと栄養摂取量です。いつものように摂取量のデータは食事アンケートという非常に質の低いデータです。(図は原文より、表は原文より改変)

第1三分位 第2三分位 第3三分位
<50.9% 51.0%〜56.4% ≥56.5%
平均 平均 平均 平均
炭水化物(%エネルギー) 53.6 46.4 53.6 60.7
栄養摂取量
エネルギー(kcal /日) 1736.9 1910.3 1706.2 1597.2
タンパク質(%エネルギー/日) 15.7 17.0 15.8 14.3
脂肪(%エネルギー/日) 27.6 31.7 27.8 23.4
食物繊維(g /日) 14.7 15.2 14.5 14.4
レチノール相当量(g /日) 1320.2 1420.6 1308.1 1233.6
ビタミンB1(g /日) 0.9 1.1 0.9 0.8
ビタミンB2(g /日) 1.1 1.3 1.1 0.9
ビタミンC(g /日) 134.3 136.7 131.8 134.4
ビタミンD(g /日) 11.5 14.6 11.4 8.6
ナトリウム(g /日) 4.2 4.5 4.2 3.9
カルシウム(g /日) 639.0 721.6 645.9 550.3
鉄(g /日) 8.1 9.1 8.0 7.3
食品群の摂取量
穀物(g /日) 191.4 174.0 190.1 210.0
じゃがいも/サトイモ(g /日) 53.5 55.6 53.8 51.1
大豆/豆乳製品(g /日) 71.3 90.5 69.7 54.1
果物(g /日) 133.2 120.4 128.7 150.5
緑黄色の野菜(g /日) 138.0 146.3 136.5 131.4
その他の野菜(g /日) 186.1 197.9 184.2 176.3
海藻(g /日) 2.0 2.3 2.0 1.8
肉/加工肉(g /日) 49.6 75.9 44.8 28.5
魚/加工魚(g /日) 100.1 129.6 97.6 73.7
卵(g /日) 29.0 33.1 29.6 24.3
ミルク/乳製品(g /日) 170.4 189.6 180.2 141.4
お菓子/おやつ(g /日) 17.8 16.0 18.8 18.5
オイル(g /日) 16.9 21.1 16.6 12.9
アルコール飲料(g /日) 89.3 163.7 71.9 33.7

当然3つのグループで、あらゆる栄養素の摂取量に違いがあります。しかし、この論文の一番肝心なところ、炭水化物摂取量を見てみましょう。3つのグループ分けでその境界線となる値は51%未満と56.5%以上です。最も炭水化物摂取量が少ないグループでも51%未満です。最も多いグループでも56.5%以上です。その差はなんと5.5%しかありません。しかもどのカテゴリーも厚労省が推奨する炭水化物摂取量の50~65%の範囲内です。我々糖質制限を行っている人ならこのグループ分けが何の意味もないことがわかるでしょう。50~65%の範囲内で多かろうと少なかろうと大して違いはありません。どちらも糖質過剰摂取なのですから。

実際のグループの炭水化物摂取量平均値は、46.4%、53.6%、60.7%なので、一番少ないグループはかろうじて推奨量を下回ってはいます。

上の図は糖尿病合併症のリスクです。結果を見るまでもありませんが、Aは腎症、Bは糖尿病性網膜症、Cは心血管疾患です。横軸は炭水化物摂取量の割合を示しています。炭水化物摂取量にかかわらず、合併症のリスクはほとんど変わりません。

糖質制限食は摂取割合でいえば、1日のエネルギー量の10%前後でしょう。この研究はその5~6倍の糖質を摂取しているのです。

別の視点から見れば、この研究は厚労省の摂取基準や、このガイドラインの炭水化物摂取割合を守っている限り、糖尿病合併症のリスクは下がらない、ということを教えてくれているのかもしれません。ちょっとくらい糖質摂取量を減らしたくらいでは変化が起きないでしょう。

もちろん、まだ糖質制限でこれらの合併症のリスクが低下した、という研究は出ていないでしょう。

しかし、このような論文で糖質制限が否定されることも全くありません。

この研究が示すのは、「国や学会が推奨する範囲内では、炭水化物摂取量と合併症発生率との関係は、どの合併症においても関係は認められない。」ということだけです。

糖質過剰症候群

「Is the Proportion of Carbohydrate Intake Associated with the Incidence of Diabetes Complications?-An Analysis of the Japan Diabetes Complications Study」

「炭水化物摂取の割合は糖尿病合併症の発生率と関連していますか?—日本の糖尿病合併症研究の分析」(原文はここ

4 thoughts on “糖尿病の食事療法のガイドラインはこんな論文を根拠としている その2

  1. 糖尿病を主に治療されていらっしゃる内科、合併症にかかわるであろう泌尿器科や眼科の医師の先生方も「持ちつ持たれつ」なのでしょうか。

    人工透析治療を行っているクリニックなどは建物からして大きくて立派、さぞや安定的に高額の報酬が、、、などと勘繰りたくもなります。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      透析患者は右肩上がりです。その原因疾患は圧倒的に糖尿病です。これを「治療の失敗」と考えられないのが今の医療です。

  2. 粗探しになりますが、人工透析に関するブログを検索したら山ほど、、
    しかし「週末はお寿司に決定ですもちろん、コーラつきで!!」
    「カリウムの補充はなるべくされたくないので 最近では朝食にバナナを食べたりして頑張ってます」
    「透析中にお弁当を食べますが、終わるころにはお腹が空いて空いてたまりません。
    よく帰りに外食してしまいます。6時間なら私よりもっとお腹がすくのではないでしょうか。」
    「回は発熱した場合に備えて、普段飲まない甘い飲み物と、果物(大好物のメロンがあったのでメロン​音符) とアイスを買いました。」
     
     同様の食事に関する記載が満載で、なんだかわけがわからなくなりました。
     皆さん、透析治療まで進んだら糖質制限どころではなくなるのでしょうか?
     

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      自分の体なので全て自己責任ですが、医療側が真の原因を隠し続けて、自己責任と言っても良いのかどうか?
      一般の人は一応専門家だと思ってその意見を正しいと思ってしまうことはあると思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です