熱中症予防にこまめな水分補給?

今年もマスコミなどが「熱中症予防にこまめな水分補給を!」と何度も訴える時期が来ました。脱水は熱中症のリスク因子ですが、水分補給が熱中症予防になる根拠を見せてほしいものです。

もちろん、のどがカラカラに渇いているのに水分補給ができないことは良くありません。しかし、別にのども渇いていないのに、こまめな水分補給など必要ありませんし、ましてやスポーツドリンクでの水分補給は有害以外の何物でもありません。企業が売り上げを上げるための脱水への不安戦略は大成功し、多くの人がペットボトルを持ち歩き、まじめにこまめに水分補給をしている姿をよく見かけます。しかも、高齢者はクリニックや病院で医療従事者にスポーツドリンクや経口補水液を勧められる場合も多いかもしれません。

運動もしていないのに、問題になるほどの脱水がそれほど起きることはありません。しかも現代はコンビニなどがどこにでもあるので、いつでも水分補給ができます。何も不安なことはないはずです。私はマラソンをしますが、普段練習で少し涼しければ10~15kmくらいのランニングなら途中で水分補給はしません。さすがに30度前後では水分補給をしますが、それでも10~15kmくらいなら無補給です。

運動時体内の水分が2%失われるとパフォーマンスが低下しはじめると言われていますが、眉唾物です。10%失われると危険と言いますが、なかなか普通の人は10%までは脱水にならないでしょう。しかし、エチオピアのゲブレシラシエが以前フルマラソンの世界記録を出したレースでは10%近く体重が減少したそうです。しかし、彼は命の危険があったわけではありません。通常、運動後の体重減少=水分喪失と考えられています。しかし、人間の体はそんな単純ではないようです。

今回の研究は、南アフリカ軍の18人の参加者で行われました。44.3°Cに達する気温で25kmの行進を行いました。参加者の平均年齢は26.0歳でした。各参加者はそれぞれバックパック、ライフル、および給水が含まれた26kgの荷物を運び、水は行進中に許可された唯一の液体であり、中に自由に飲むように指示されました。

平均水分摂取量は1264mL/hでした。予測発汗量は1789mL/hでした。平均体重減少は2.73kgでした。それにもかかわらず血漿浸透圧と血清ナトリウム濃度は有意に変化しませんでした。

ところが体重の1kg減少で、全身水分量は200g~500、600g減少するだけでした。(図は原文より)

他の研究でも、1.3kg体重が減少したにも関わらず、全身水分量は増加した人もいるし減少している人もいて、平均すると0.9kg増加していたものもあります。(図はこの論文より)

つまり運動などで有意に体重が減少することが、必ずしも脱水と関連していないと考えられるのです。

人類は住む場所によっては、現在ほど簡単に水が手に入ったわけではないでしょう。何時間も狩猟を行う間、水筒やペットボトルで水を持ち歩けたわけではありません。つまり、進化の過程である程度脱水には耐えられる力を持っているはずです。

暑い日に外を歩いたりして汗をたっぷりとかいたとしても、すぐに脱水になるとは考えにくいです。そしてこまめな水分補給で脱水を回避しても、必ずしも熱中症が予防できるわけではありません。

水分補給が全く必要ないわけではありませんが、そこまで過敏になる必要はありませんし、ましてや電解質や糖質の補給はほとんど意味がありません。水分補給には水かお茶で十分です。

そして、スポーツには全く適さない酷暑の中、オリンピックは開催されるようです。

「Trained humans can exercise safely in extreme dry heat when drinking water ad libitum」

「訓練を受けた人は、水を自由に飲むことができれば、極端な乾燥した暑さの中で安全に運動することができる」(原文はここ

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コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    水分補給問題に加え、エアコン問題も発生してきます。
    昔に比べて明らかに気温は上昇のようですが、高齢者はクーラーが嫌い。
    (父も生前、たぶん節約意識でエアコンすぐ消し、間違って暖房にしたりもしましたが、無事過ごしていました。)

    しかし「専門家」は「クーラー必須!」(熱中症で亡くなった方々のクーラー使用率などもニュースになりがちです)。