いくつもの研究で、脳震盪を起こすようなスポーツをやっていた人の認知症をはじめ、神経変性疾患のリスクが高まると言われています。(「アスリートと神経変性疾患 その1」「その2」「サッカーのヘディング禁止」「元エリートラグビー選手の神経変性疾患リスク」「脳震盪を起こすコンタクトスポーツへの子供の参加は制限すべきかもしれない」など参照)
これを受けて、様々な国ではサッカーでのヘディングについて、制限を設け始めています。イングランドサッカー協会は24-25シーズンはU-7からU-9世代の全試合で意図的なヘディングが禁止、25-26シーズンはU-10世代に拡大し、26-27シーズン以降はU-11世代もヘディングが禁止ですが、U-12世代からヘディングが許可されてしまいます。
アメリカサッカー協会は2015年より、10歳以下の子供のヘディングが禁止され、11歳から13歳までの練習でのヘディングの回数を制限しています。
日本のサッカー協会の制限はそれらよりは少し甘い制限です。(ここ参照)サッカー協会の上の人間は「みんな昔は小さいころからヘディングをしていた」と古い考えをしているので、大きな変化を起こせないのでしょう。
しかし、中学生からヘディングをOKとしても本当に良いのでしょうか?中学生はまだ発達段階です。脳への衝撃が脳にとっていいはずがありません。
平均年齢22歳のアマチュアサッカー選手19人を対象とした研究(ここ参照)では、たった20回のヘディング練習で、ヘディング練習直後に皮質運動抑制の増加が検出されました。これは、脳震盪未満の頭部衝撃の蓄積効果を通じて、脳の健康を損なう病理学的プロセスを引き起こす可能性を示唆しています。皮質運動抑制のサイレント期間の延長は、脳損傷の病態生理と関連していることがわかっており、機能障害と皮質抑制性介在ニューロンの過活動との関連を示唆しています。
ヘディング練習直後、空間作業記憶(SWM)エラースコアが有意に上昇し、これは短期記憶障害と一致するものです。さらに、ヘディング直後の対連想学習(PAL)タスクにおけるエラースコアは67%増加し、これは長期記憶機能の低下と一致するものです。短期および長期記憶のこれらの障害は一時的なもので24時間にはベースラインパフォーマンスに正常化しました。
今回の研究では、18歳から34歳まで(平均年齢25歳)の健康なサッカー選手で、サッカーのヘディング経験が5年以上ある人を対象として、20分間で20回のヘディング練習を行ってもらいました。ヘディングから約45分後にMRIを受け、、血液を採取し、課題前、課題後、課題後2.5時間、課題後24時間の時点で認知機能を評価しました。
MRIスキャンでは、微妙だけど測定可能な変化が確認されました。ヘディングは一次運動野の総N-アセチルアスパラギン酸と総クレアチンレベルを上昇させました。ヘディングは、前頭葉、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、小脳の白質に位置する11個のクラスターにおいて、組織伝導率を有意に低下させました。情報伝達に影響を与えることを示唆しています。
血液では、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP:アストログリア病変のバイオマーカー)、ニューロフィラメントライト(Nf-L;軸索病変のバイオマーカー)という2つのタンパク質の値が上昇(それぞれ1.22倍、1.78 倍)していることも確認されました。これらのタンパク質は現在、脳損傷と将来の認知症リスクの血液バイオマーカーとして最も優れたものと考えられています。ただ、ヘディングに関連する変化は、これらの疾患で一般的に見られる変化よりもはるかに小さく、顕著な有害症状や認知機能の検出可能な変化がない状態で観察されました。
脳振盪を起こさない程度の衝撃でも、サッカー選手の脳の代謝を高め、ニューロンやグリアの完全性を変化させる可能性があることを示唆しています。日々の練習で症状のないヘディングでさえ、脳に微妙な変化をもたらす可能性があるのです。それがだんだんと蓄積されれば、将来の大きな問題へとつながることも十分に考えられます。
サッカー全体のヘディング禁止をすべきだと思いますが、せめて大人になるまで、18歳までは禁止にすべきだと思います。回数制限をしても、うまくなりたい選手は、それを守らないでしょう。ハンドと同様に、ルールでヘディング禁止にしないと機能しません。空中戦がなくなれば、頭同士が衝突することによる脳震盪も激減するでしょう。
どこのサッカー協会も、サッカーというスポーツの面白みが減ってしまうのを懸念しているので、完全に禁止にはできないのでしょう。そして、選手が認知症や神経変性疾患になったとしても、ヘディングとの因果関係を証明できませんので、責任を追及されることもないのです。
高校生以下はコンタクトスポーツ禁止にすべきでしょう。
「The Acute Effects of Non-concussive Head Impacts on Brain Microstructure, Chemistry and Function in Male Soccer Players: A Pilot Randomised Controlled Trial」
「男子サッカー選手における非脳震盪性頭部衝撃の脳微細構造、化学組成、機能への急性影響:パイロットランダム化比較試験」(原文はここ)
昭和の時代と異なり、今は自転車もヘルメット必須の時代。
頭部を守る大事さが広く認識されたのは
良かったですね
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
健康のためのスポーツが、逆に健康を害することになってしまっています。
ウルトラマラソンも不健康なスポーツです。
不健康なスポーツは大人になってから自分でやりたい人はやればいいでしょう。
しかし、子供させる運動ではありません。
ランナーズ9月号で、
サロマ湖100kmウルトラマンの記事、
読んでいるだけで感動しました