以前の記事「アスリートと神経変性疾患 その1」では、サッカー選手が神経変性疾患での死亡率が高くなることを書きました。
今回は、アメリカンフットボールのナショナルフットボールリーグ(NFL)の選手と野球のメジャーリーグベースボール(MLB)の選手の長期的な健康リスクを比較しています。(図は原文より、表は原文より改変)
死因 | 根本原因または寄与する原因 |
---|---|
ハザード比(HR) | |
全原因 | 1.26 |
すべてのがん | 1.11 |
すべての心血管疾患 | 2.40 |
すべての神経変性疾患 | 2.99 |
認知症/アルツハイマー病 | 2.26 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 3.10 |
パーキンソン病 | 3.45 |
自殺 | 1.59 |
上の図は生存率でAはがん、Bが心血管疾患、Cは神経変性疾患、Dは自殺です。黄色い線は野球選手、青い線はアメフト選手です。心血管疾患と神経変性疾患ではアメフトが大きく生存率が低下していることがわかります。
アメフトの方が心血管疾患による死亡率が増加するのは、恐らくはアメフトの選手の方が体重増加が大きいことが関係しているかもしれません。
神経変性疾患による死亡率の増加は、やはり頭部へのダメージが関連していると思われます。当然コンタクトスポーツは体がぶつかり合うので、脳震盪の確率も高くなります。野球などのスポーツでは非常に少ないでしょう。アメフトやラグビーなどはタックルするわけですから、頭部を何度も打ち付ける可能性があります。サッカーはヘディングの問題でしょう。
アメリカの一般の男性と比較した研究(論文はここ)でも、アメフト選手の神経変性疾患のリスクの高さを指摘しています。(図はこの論文より)
細かいところは省略しますが、全原因死亡やがんによる死亡、心血管疾患による死亡は低いのですが、神経変性疾患全体による死亡は3倍以上、アルツハイマー病やALSでは4倍前後死亡率が高くなっています。
上の表はアメフトのポジションによる死亡率の違いです。ラインマンというどちらかというと走らないスピードを出さない選手では神経変性疾患は高くならず、スピードを出して走るポジションの選手ではアルツハイマー病やALSが6倍以上の死亡率になっていました。当然タックルを強く受けるスピード選手の方が脳のダメージを頻繁に受けることになるでしょう。
ワールドカップで盛り上がったラグビーですが、自分の子供であれば「やりたい」と言っても躊躇してしまいますね。
脳は髄液という水の中に浮いたような状態です。頭を強く揺さぶることや、頻繁な頭部への負荷は脳が損傷する可能性が高くなるのでしょう。頭部へのダメージはその強度と頻度の両方が重要だと思います。
将来の認知症、ALSなどを恐れていてはスポーツはできませんが、やはり子供たちの頭を守るために策は必要だと思います。でも子供のラグビーでタックル禁止にしてしまっては、ラグビーではなくなってしまいますからね。競技を行う個人の問題なのか、それとも競技全体の問題なのか?スポーツと健康、難しい問題です。
「Mortality Among Professional American-Style Football Players and Professional American Baseball Players」
「プロのアメリカンフットボール選手とプロのアメリカの野球選手の死亡率」(原文はここ)
こんにちは。
30年以上フットボールを見ていますが、確かに脳震盪など頭部へのダメージを受けるシーンは珍しいことではありません。特にNFLの場合、体の大きさやスピードが半端ではないですから、その衝撃は相当なものだと思います。
只、NFLやフットボール関係者も手をこまねいているわけではなく、頭部へのタックルなどには即刻退場などの重いペナルティーを科すようになってきています。また、脳震盪の疑いがあるような場合は再出場できないなどのルール変更をしたりしているので、状況は多少改善しているのではないかと思います。
しかし、ぶつかるのが仕事のラインマンよりその他のポジションの方がリスクが高いというのは意外でした。やはり、スピードがついた状態でぶつかる事が危ないのですね。
あきにゃんさん、コメントありがとうございます。
確かに先日のラグビーワールドカップでも頭部へのタックルや脳震盪は非常に厳しく対処していましたね。
それでも圧倒的に頭部への負荷はかかるでしょう。
清水先生、おはようございます。いつもためになるブログを楽しみに、拝見しております。以下の記事は、たまたまネットニュースで見かけたものですが、ご覧になってどのようにお考えでしょうか?
私、もちろん先生の過去の記事もたくさん拝見しております。専門家の方によって様々な解釈があるのも当然ですし、何を信じ、何を選ぶかも自分の責任であるし自由、だと思っております。
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血管を守るためには、食事内容、つまりエネルギー量や栄養素に気を配ることが最も大切なことの1つだ。血管を守ることは、心筋梗塞などの心臓病を減らし、寿命を延ばすことに直結する。さらには、脳卒中や認知症を予防して、介護されずに生活できる「健康寿命」を延ばすことにつながる。もちろん他の生活習慣病も予防できる。
血管を守るためには、食事のどんなことに気を付ければいいのか。高齢者を除く成人で肥満の人は、まずは体重を減らすことが大切だ。そう話す日本臨床栄養協会の多田紀夫理事長は、かつては長寿ナンバーワンだった沖縄県の例を挙げて説明する。
「1978年以前の沖縄では、成人の本土の日本人に比べて、エネルギー総摂取量が成人では17%、子どもでは36%も少なかった。そして、心血管疾患とがんによる死亡率は 31~41%も低かったのです」
「日本にハンバーガーチェーン店第1号が銀座にできたのが71年ですが、沖縄ではその10年くらい前からアメリカの食文化の影響を受けています。そのため、それまで長寿第1位だった沖縄県の男性の順位が2000年には26位まで下がり、女性も2015年には1位から3位に転落しています」
食事からの総エネルギー摂取量を抑える「節食」は、世界各国で寿命を延ばすという研究結果が報告されている。ヒトでは証明されていないと言われるが、同じ霊長類のサルでは証明されているので、恐らくヒトでも効果はあると考えられている。
エネルギー摂取量を抑えるためには、その供給源となる3大栄養素、つまり炭水化物、タンパク質、脂肪を控えることになる。とくに炭水化物と脂質の内容を考慮することは、血糖や血清コレステロールの量を抑え、血管を守ることに直結するのだ。3大栄養素の理想的な割合は、昨年末に発表された「日本人の食事摂取基準」(2020年版)の改定ポイントによると、炭水化物は50~65%、脂質は飽和脂肪酸(肉の脂など、常温で個体のもの)が7%以下で、その他の脂質が20~30%となっている。タンパク質は年齢によって少し違いがあるが、13~20%だ。
多田理事長は、炭水化物の摂取割合にはアルコールも含むので、それを5%と考えると45~60%くらいが理想だと話す。脂肪については、「血管に問題を起こしやすい飽和脂肪酸を7%以内に抑えれば、いろいろな脂肪をとっていい」という。
ところで、体重を減らすのにより効果的に制限すべき栄養素は、脂肪よりも炭水化物だ。ただしそれは1年以内のことで、それ以上は減った体重を運動を含め、どういった手段で置き換えて維持をするかがとても大切だ。
炭水化物を動物性のタンパクや脂肪に置換した場合、さまざまな疫学データより、死亡率が有意に上昇することがわかっています。それを植物性タンパクや脂肪に置換した場合は、逆に有意に減少します」
節食の断念やリバウンドを防ぐためには、減らした炭水化物を置き換えるという発想が大切だ。(医療ジャーナリスト 石井悦子)
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以上になります。お忙しい中とは思いますが、先生のご意見等、お聞かせいだだければ幸いです。
みみさん、コメントありがとうございます。
お好きな考えを自分の判断で選択すれば良いです。
しかし、最近また糖質制限反対派が変な話を持ち出していますので、記事にして考えを述べたいと思います。明日以降の記事を読んでみてください。
清水先生、コメントありがとうございます!今後の記事、楽しみにしております。私、全くの素人ですので先生の、沢山のご意見等拝見したいと思っております。何を信じ、実践するかは個人の自由、ということで私はもちろん糖質制限を実践しております(^^)v