通常BMI25以上を過体重、30以上を肥満と定義していますが、様々な国、様々な民族が統一した定義で評価するのは、もしかしたら正しくないかもしれません。
今回の研究では、白人集団におけるBMI30での2型糖尿病の年齢調整および性別調整発生率の場合と同等の発生率を様々な国、民族と比較しています。(図は原文より)
上の図は白人のBMI30の2型糖尿病発生率に相当する他の民族のBMIを示しています。黒人では28.1、中国人で26.9、アラブ人で26.6、南アジアで23.9でした。
上の図はもっと細かい民族の違いを示しています。いずれにしても白人と比較すると、黒人やアジア人ではBMI30に相当する数値はもっと小さくなっています。
上の図は白人のBMI25に相当する発生率を示しています。黒人では23.4、中国人で22.2、アラブ人で22.1、南アジア人で19.2でした。南アジア人でBMI19.2というのは凄い数値ですね。恐らくアジア人はインスリン分泌能が白人と比較してかなり低いのでしょうね。
白人の多くはインスリン分泌能が非常に高く、インスリン抵抗性が増加して非常に肥満になりやすく、それにより2型糖尿病が発症することが多いと思われます。一方でアジア人ではインスリン分泌能がもともと低い人が多いので肥満になることはなく、糖尿病を発症することが多いのでしょう。アジア人は糖質過剰摂取に弱い民族とも言えます。しかし、日本人でも最近非常にBMIが高く、白人ほどではなくても肥満の人も多くなってきているように感じます。
それは恐らく果糖の過剰摂取が影響しているように思います。果糖はインスリン分泌をブドウ糖よりは増加させませんが、内臓脂肪蓄積能は非常に高い糖質です。
BMIによる糖尿病発症リスクは日本人をはじめアジア人には適応しにくいでしょう。空腹時血糖値、食後血糖値などを見た方がリスク評価がしやすいと思います。ただ、空腹時血糖が高くなったときには相当進んだ状態なので、食後1時間値を検査するのが良いと思います。
それ以外の疾患に対するリスク評価もBMIは国や民族で異なる可能性があります。逆に考えれば日本人でBMI30以上というのは非常に危険な状態とも言えます。白人のBMI30以上の肥満は日本人では26~27以上、BMI25以上の過体重は日本人では23以上程度と考えるのが妥当な線ではないかと思います。
肥満は糖質過剰症候群です。糖質摂取を制限すれば改善する病気です。
「Ethnicity-specific BMI cutoffs for obesity based on type 2 diabetes risk in England: a population-based cohort study」
「イギリスにおける2型糖尿病リスクに基づく肥満の民族固有のBMIカットオフ:人口ベースのコホート研究」(原文はここ)