糖質制限と血中の脂質の変化

いまだに多くの人が脂質摂取が体脂肪の増加および心血管疾患のリスクの原因だと思っています。しかも医師ですら同様です。中性脂肪を下げるためには脂質摂取を減少させる必要があるのでしょうか?

低脂肪食と糖質制限食を比較すると、これらの様々な原因は糖質過剰摂取であることがよくわかります。

今回の研究では低脂肪食と糖質制限食のメタアナリシスです。糖質制限食でいつも問題になるのが、その制限量の定義です。今回は炭水化物制限食としての定義は、炭水化物からの総エネルギー摂取量の45%以下として定義されています。全然糖質制限ではないのですが、中程度低炭水化物食を総エネルギー摂取量の26~45%または130~225g、低炭水化物食を10%~26%または50~130g(上限は日本のロカボと同等です)、超低炭水化物食を10%未満または50g未満(江部先生のスーパー糖質制限食に近いですね)として、脂質の摂取量は35%以上を自由に摂取することとしています。また、低脂肪食としては脂質の摂取量を総エネルギー摂取量の35%以下、炭水化物は50%以上と定義しています。(図は原文より)

上の図は炭水化物制限食と低脂肪食のLDLコレステロール値の比較です。6か月、12か月、24か月ではどれも有意な差はありませんが、どちらかというと炭水化物食の方がLDLコレステロール値が高くなるようです。

上の図は超低炭水化物食と低脂肪食のLDLコレステロール値の比較です。有意差はないですね。

上の図は中程度低炭水化物食と低脂肪食のLDLコレステロール値の比較です。これも有意差なしです。

上の図はHDLコレステロール値の比較です。これは炭水化物制限食の方が有意にHDLが増加しています。ただ24か月では有意差が無くなっています。24か月もすると恐らく食事制限が緩んでくるのでしょう。

上の図は中性脂肪値の比較です。これは炭水化物制限食の方が有意に中性脂肪が低下しています。ただこれも24か月では有意差が無くなっています。

上の図は超低炭水化物食と低脂肪食のHDLコレステロール値の比較です。炭水化物制限食全体よりも超低炭水化物食の方がさらにHDLが増加しています。

上の図は超低炭水化物食と低脂肪食の中性脂肪の比較です。炭水化物制限食全体よりも超低炭水化物食の方がさらに中性脂肪は低下しています。

上の図は中程度低炭水化物食と低脂肪食のHDLコレステロール値の比較です。6か月とトータルでのHDLは何とか増加を示していますが、その程度は非常に小さく、12か月と24か月では全く変化がないように見えます。

上の図は中程度低炭水化物食と低脂肪食の中性脂肪の比較です。中性脂肪の低下傾向はあるようですが、有意差は無く、やはり中途半端な糖質制限では結果も中途半端ですね。

上の図は炭水化物制限食と低脂肪食の総コレステロール値の比較です。全く有意差はありません。

この研究を全体的に見れば、炭水化物を制限した食事はLDLコレステロールはそれほど変化せず、HDLコレステロールを増加させ、中性脂肪を低下させます。特にHDLや中性脂肪の改善は心血管疾患のリスクを低下させると考えられます。特に炭水化物の制限が大きい、超低炭水化物食、日本で言えばスーパー糖質制限食はその効果が大きく、少し減らしただけの中途半端な糖質制限では結果も中途半端だということがわかります。

ただ、LDLコレステロールに関しては、全体では増加する傾向が少なくなりましたが、個々の人を見れば恐らく私のように大きく増加を示すこともあります。メタアナリシスなどにしてしまうとこの個人の変化の大きさは消えて見えなくなります。しかし、実際には糖質制限により比較的高い割合でLDLコレステロールは上昇し、それをもって糖質制限を批判する人もいます。しかし、その他のほぼすべてのデータは大きく改善すること、LDLコレステロールが高いことが本当にリスクになるかということが非常に疑問であることを考えると、私は糖質制限でLDLコレステロール増加は全く気にしなくて良いのではないかと考えています。

いずれにしても、低脂肪食が大きく中性脂肪を減らすというのはウソとまでは言えないかもしれませんが効果は非常に小さいです。糖質制限がHDLコレステロールを増加させ、中性脂肪を低下させるのです。

糖質過剰症候群

「Effects of carbohydrate-restricted diets on low-density lipoprotein cholesterol levels in overweight and obese adults: a systematic review and meta-analysis」

「太りすぎや肥満の成人のLDLコレステロール値に対する炭水化物制限食の影響:系統的レビューとメタ分析」(原文はここ

5 thoughts on “糖質制限と血中の脂質の変化

  1. スーパー糖質制限の健康効果はそれこそエビデンスがありますし、自身も実感しています。

    否定派の示す根拠や研究などは粗が目立ち、逆に糖質制限の有用性が分かります。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限は現在最もエビデンスがある食事法ですね。

  2. 清水先生、おはようございます。

    糖質制限と血中脂質の変化といえば、私の場合、糖質制限をしておそらく5年以上になりますが、制限前は血中脂質は全て基準範囲内でした。制限後は、これまでに何度かコメントをしましたが、LDL-cholなどが高値になっています。

    6月の検査結果では、TG 52mg/dL、HDL-chol 92 mg/dL、LDL-chol 289 mg/dLでした。
    私自身は、LDLは高値でも、この内容であれば小粒子のものは少ないと思っていて、問題ないと考えています。しかし、人間ドックなどで、こういう結果になると、産業医からは指摘されます。

    そこで、しばらく糖質制限を緩めようと思い、あえて夕食に茶碗に軽く一杯のもち麦を食べることにしました。あとはこれを2-3ヶ月続けてみようと思います。さて、どう変化するのか?

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      実験結果が出たら是非教えて下さい。
      LDLコレステロールは低下するのではないかと予想しますが、どうでしょうか?

  3. 清水先生、ありがとうございます。
    糖質を摂取することは本意ではないのですが、9月に次の検査があるので、その結果はご連絡致します。

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