以前の記事「牛乳はインスリン分泌を大きく増加させる」で書いたように牛乳はインスリン分泌を増加させます。同時にIGF-1(インスリン様成長因子)も増加させます。また乳がんにはこのIGF-1が関連していると考えられています。
今回の研究では、52,795人のアメリカの女性を約8年間追跡しました。閉経前と閉経後の両方の女性が含まれていて、参加者の平均年齢は57歳でした。牛乳の摂取量のデータはもちろん食事アンケートなのでデータの質は低いですが、牛乳の摂取は比較的習慣化している人も多いのではないかとも思いますので、1日何杯牛乳を飲んだかくらいはある程度正確に思い出せるかもしれません。とりあえず、その結果を見てみましょう。(図は原文より)
上の図は牛乳の摂取量と乳がんのリスク比です。1日あたりわずか1/4から1/3カップの牛乳を飲むと、乳がんのリスクが30%増加しました。1日に最大1杯飲むことでリスクは最大50%上昇しました。また、1日に2〜3杯飲む人の場合、リスクはさらに70%〜80%に増加しました。
食事アンケートの研究なので質はあまり高くないですが、メカニズム的には納得できる結果でしょう。
ちなみに乳製品の他のもの、チーズやヨーグルトなどではリスク増加はありませんでした。
さらに、最近の市販の牛乳には大量のエストロゲンとプロゲステロンが含まれています。それらのホルモンも乳がん発症に寄与する可能性もあります。
現在、プロテインが大ブームになり、ボディビルダー以外でもプロテインを飲んでいる人が多くなり、女性でも非常に多くなりました。トレーナー以外に一部の医師もプロテイン摂取を強く勧める人もいるでしょう。熱中症予防にポカリを勧める医師と同様にタンパク質不足に何でもプロテインを勧めるのは疑問に思います。ボディビルダーは自分でリスクを承知でやっていると思うので構いませんが、健康のためとか美容のために若い女性が毎日プロテイン+牛乳を飲んでいるのは非常に気がかりです。食事量が少なく一時的にプロテインでタンパク質摂取量を増やすことは問題ないと思いますが、毎日常用することはお勧めできません。
わざわざがんのリスクを冒してまでも牛乳やプロテインを飲む必要はないでしょう。
「Dairy, soy, and risk of breast cancer: those confounded milks」
「乳製品、大豆、および乳がんのリスク:これらと交絡した牛乳」(原文はここ)
トレーニング=プロテイン必須の風潮ですが、いずれ健康被害も起きそうですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
表向きには健康被害は起こりません。「因果関係不明」で終わりですから。
人体実験も兼ねて牛乳を飲んでいましたが、飲むのを止めました。
ヨーグルトもインスリンの分泌を刺激するはずですが、ヨーグルトの摂取はそこまで危険ではない、ということでしょうか?
清水先生は、牛乳以外の乳製品は召し上がりますか?
バター、チーズ、ヨーグルト、生クリーム…。
クリードンさん、コメントありがとうございます。
ヨーグルトだけでなくタンパク質が含まれていればインスリン分泌はあるでしょう。
一方、牛乳の中のIGF-1は乳製品としての加工の過程でほとんどなくなってしまうと思っています。特に発酵により激減します。
牛乳の加熱殺菌は低温ではIGF-1は減少しませんし、高温でも半分程度にしかなりません。
乾燥では減少しないのでプロテインも注意が必要だと思います。
詳しくはわかりませんが牛乳1リットルからホエイプロテインは6.9gほどしかできないらしいので、20gのプロテイン摂取は牛乳約3リットル飲むのと同等かもしれません。
ここの点はもっと調べないとわかりませんが。
乳製品は加工により体内に吸収されて内因性のIGF-1を分泌させる何らかの成分も活性が低下しているのではないかとも考えています。
もちろん、牛乳に含まれるIGF-1が人間の腸で吸収されるかどうかは何とも言えません。
なので牛乳と乳製品は別に考えています。というわけで、牛乳以外はあまり気にせず摂取しています。