ネズミと人間では糖代謝も異なる

ネズミさん(マウス)と人間では食性が全く違います。サルと人間でも違いがあります。そうすると、加齢に伴う空腹時血糖の傾向は、ネズミさんとサルおよび人間で異なります。(図は原文より)

上の図はライフサイクルにおける血糖値、体重、脂肪の推移を示しています。左からネズミ、サル、人間です。最も大きな違いは血糖値でしょう。人間やサルは年齢とともに血糖値が少しずつ上昇しますが、ネズミは逆に加齢により血糖値が低下します。体重や脂肪に関してはどの種も同じような曲線を描いています。

上の図は生存曲線と年齢調整死亡率ハザード比です。上から中年期、晩年期、最も年老いた時期のものです。左からネズミ、サル、人間です。オレンジの線は最も血糖値が高い群、紫は最も血糖値が低い群です。

そうすると、血糖値と生存率との関連は、ネズミとサル/人間では逆です。最も血糖値が低い群と比較して最も高い群では、中年期では有意な違いはありませんが、晩年ではサルの死亡リスクは2.46倍、人間の死亡リスクは1.4倍でした。最も年老いた時期では、サルの死亡リスクは2.74倍、人間の死亡リスクは1.32倍でした。しかし、ネズミでは逆に血糖値の高い群の方が死亡リスクが低くなりました。

つまり、ネズミでは人間や霊長​​類の加齢に伴う糖代謝の変化を完全には再現できないのです。

もちろん動物モデルは人間の病気と老化プロセスを研究するためによく使用されます。生物学的メカニズムを分析するために都合がいいことも多いでしょう。人間に近いサルを用いることはなかなか難しいですので、ネズミさんが頻繁に使用されます。

しかし、そもそも人間とネズミは食性があまりにも違います。そうすると代謝や食事に関する研究をネズミさんでやっても人間では当てはまらないことが多々出てくることは否めないでしょう。

専門家でも堂々とネズミさんの研究を人間でも適応できるかのように、しかもネズミの研究であることを言わずに、情報発信する人もいるかもしれません。私も気を付けないとならないと思いますが。

以前の記事「まだネズミと人間の違いがわからないのでしょうか?」でも書いたように、糖質制限の批判をする場合にもネズミの研究が持ち出されたりします。

情報は鵜呑みにせず、元の論文がどのようなものかに注意する必要があるでしょう。

「Fasting blood glucose as a predictor of mortality: Lost in translation」

「死亡率の予測因子としての空腹時血糖:翻訳で失われる」(原文はここ

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コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    ネズミさんも食べ付けない物(それだけならまだしも代謝出来かねるもの)を大量に与えられて大変ですね。
    更にその結果を食性の全く異なる人間に当て嵌められてもね~? という感想です。
    (まともな研究者はそのへんも考慮して研究されているとは思います。)

    実験に使いやすいんでしょうね、かわいそうなネズミさん。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ネズミさんを殺すことの罪悪感は非常に少ないのでしょうね。
      ネズミの研究が全て無駄ではないですが、マスコミなどは都合よく使いすぎです。

  2. クリードン より:

    清水先生、こんにちは。

    オーストラリアにある大学からの報告です。

    * How intermittent fasting changes liver enzymes and helps prevent disease
    https://00m.in/u6tWz

    * Researchers Find Belly Fat Is Resistant to Intermittent Fasting – “The Location Makes a Big Difference”

    * https://00m.in/pCqzo

    要約すると、

    * 「断食すると、内臓脂肪は空腹時に脂肪放出に耐性を持つようになる(脂肪を減らさないよう抵抗しようとする」
    * 「繰り返される絶食に対して、内臓脂肪が体重減少に抵抗しようとする理由となるかもしれない」
    * 「理想的な絶食期間はどれぐらいか、を特定できるようになるかもしれない」

    とのことです。
    これもマウスを使った研究であり、ネズミと人間の食生の違いを考慮する必要はあるでしょう。しかし、断食・絶食時の身体の代謝反応に関しては・・・?

    絶食すると、誰であれ、血糖値とインスリンの濃度が低下しますよね?
    しかし、この研究を主導したマーク・ラランス博士(Mark Larance)の「絶食を繰り返していると、内臓脂肪は空腹時に脂肪放出に耐性を持つようになる」というのは、どういうことでしょうか・・・?

    これを突き詰めると、断食をやってもお腹は引っ込まない、痩せはしない、ということが言えてしまいますが・・・。

    • Dr.Shimizu より:

      クリードンさん、コメントありがとうございます。

      ネズミさんの研究なのでそこまで真剣に読んでいませんが、ネズミの絶食時間は16時間のようです。
      ネズミの16時間は人間の2~3週間ではないでしょうか?(計算が間違っているかもしれませんが)
      あまり意味のない研究にしか思えません。